9.39「死の町」

あらすじ

「コレが……鞠会長の育った世界……」紫上会、優海町上陸。そして砂川さんが育った空気というのを笑星くん達は思い知る9話39節。

砂川を読む

vseboshi

 ――優海町。

 真理学園の独裁者たちによって造られた平和を謳歌し、世界に疎まれながらも隆盛してきた孤独で医療な町。

 緑が豊かで、海も綺麗で。風が心地良い……

 鞠会長の育った地。

 俺たちは夕方になって、遂に其処に、辿り着いた。

 ――焼け枯れた緑。

 壊れ崩れた町並み。

 哀愁を乗せる風。

 そして――

Time

18:00

Stage

優海町

【大人】

「野球するなら~(←全裸)」

【大人】

「こういう具合にしやさんせ~(←全裸)」

【大人】

「アウトッ」

【大人】

「アウトッ」

【大人達】

「「よよいの――」」

【人々】

「「「よおおぉおおおおおおおおおおおおおいいい――!!!」」」

【大人】

「勝ったッ!(←全裸)」

【大人】

「負けたァ!(←全裸)」

【人々】

「「「いええぇえええええええええええええいいいい(←全裸)」」」

 全裸で盛り上がる町民たち。

 ……………………。

【4人】

「「「んんんんんんんんんんんんんんんんん――!?!?」」」

 あれ!?

 何か、予想してた光景と微妙に違う!? 背景は最高に哀愁漂ってるのにその世界観を大人たちが一瞬でぶち壊してるんだけど!!

【笑星】

「な、何これ……?」

【大人】

「おや、見慣れない奴がいる(←全裸)」

【深幸】

「おい見つかったぞ……! 何だ、やっぱり優海町ってヤバいところなのか!! アイツの忠告もっと真剣に受け止めておくべきだったんじゃないのか!?」

【信長】

「えっと……すみません、余所者なんですが……一体何を、されてるんですか……? 此処、どう見ても外ですが」

【大人】

「そうなんだよなぁ。外なんだよなぁ。確かに今の季節、外で一糸纏わないのは恒温動物といえども辛いものがある」

【深幸】

「季節関わらず外で一糸纏わないのはアウトだろッ!」

【大人】

「まあ見てみろって、ホラ。この変わり果てた町並みを」

 ……再度、見渡す。

 鞠会長から聞いて、抱いた優海町という人々に優しい町のイメージとはかけ離れた、非情な現実が広がる。

 多少は戦後の大輪の町並みというのをテレビを通じて見たことはあるけど、実際を見て感じるのはやっぱり違う。渇いた苦しみが肌に刺さるようだ。

 自分の住んでる環境も、たった1ヶ月程度でこうなり得るんだって――

【大人】

「こういうことなんだよ(←全裸)」

【4人】

「「「…………」」」

 ――でも何でこんなに全裸な人たちが罷り通ってるのかがどうしても分からない!!

【四粹】

「えっと……つまり?」

【大人】

「こうも建物っていうのが殆ど壊れちまうとなぁ、もう室内も室外もねえんだわ。つまりだ、今まで室内でやってたことを今やろうものなら、それはもう室外でやってるのと同じって状況なわけよ!!」

【大人】

「じゃあもう開き直ろうってことで、ここ数日ずっと溜まってた鬱憤を晴らしてる最中なのさぁ!! 丁度ノリの良すぎる歌舞伎者も来たわけだしなぁ!!」

【人々】

「「「いええぇええええええええええいいい!!!」」」

 果たして俺たちは戦後の町としてこの光景を例に学んでいいのかなって心配になってきた。

【笑星】

「でも、だからって何でこんなに大勢全裸なの……? 何してたの?」

【大人】

「何ってそりゃ全裸拳だわな」

【大人】

「酒飲むなら全裸拳しかねえわ」

【深幸】

「全裸拳……え、それって、もしかして野球拳か……?」

【大人】

「野球拳違う。全裸拳」

【四粹】

「初めて聞きましたね……」

【人々】

「「「えっ、知らないの!?!?」」」

 大人の方々に一斉に驚かれてしまった。

 こうしている間も、どんどん俺の想像していたモノが悲鳴をあげて崩れていっている。

【大人】

「全裸野球拳、略して全裸拳だよ。まさか、外には無いのか……?」

【大人】

「まず全裸になってからジャンケンして、勝った方が清々しい気持ちで全裸になり、負けた方は悔しさをバネに全裸になり、観客も2人を讃えて全裸になるっていうやつだけど……まさか、優海専用の宴会ゲーム……?」

【信長】

「全裸の順番と回数、おかしくないか……?」

【笑星】

「そ、そんなに此処ってユニークな文明築き上げてるの……? 鎖国的なの……?」

【大人】

「いやぁ、普通に外行ったりもするけど宴会とかしねえからな。1回彼園で皆で盛り上がったら店の女の子泣いちゃったから、割と自重するようにした」

【四粹】

「これは、自重できてるんでしょうか……?」

【笑星】

「コレが……鞠会長の育った世界……」

【深幸】

「笑星、まだ早いッ、ここで理解しちゃダメだ!!」

【大人】

「それで……お前さん達は何しに来たんだ、此処に? よりにもよってこんな最高に嫌われてる町に、このタイミングで若い子たちが入ってくるなんてなぁ」

【笑星】

「えっと、修学旅行で来てみたんだけど」

【大人】

「優海町に修学旅行に来た!?!? 頭とち狂ってんじゃねえのか!?!?」

【深幸】

「いや、大丈夫、少なくともあんたらよりはマトモな思考してる筈だから……」

【四粹】

「戦後状態の中、修学旅行として訪れること、無礼は承知です。ですが、どうしても此処でなければいけない理由があったのです。どうか許可いただければ」

【大人】

「堅苦しいこと云うなぁ。まあ確かに大輪自体、今は疲弊してるだろうし、そんな中を旅行目的で訪れるってのはあんまり褒められたもんじゃねえかもだが」

【笑星】

「優海町のこと、知りたくて。えっと、ほら、別のところは全然優海町のこと、知ることできないから」

【大人】

「物好きだねぇ。そして強運というか。よく辿り着けたもんだ」

【信長】

「……それは、どういうことですか?」

【大人】

「MSBから最高に嫌われてるからなぁ俺たちは。これだけ疲弊しちまった優海町を見て上機嫌だろうよ。そんな中、活気のもとな外客を赦すはずがねえ」

 ……会長が云ってた通りだ。

 今の優海町は、南湘エリアは入ることすら難しいんだ……。

【笑星】

「ね、ねえ。一体大輪で、いや此処で何があったの……? 何か、あったんだよね? 中央大陸の俺たちは真っ暗闇ぐらいしか体験してないんだけど」

【大人】

「へえ、中央から来たのか、わざわざ遠いところから……なら、それなりに知ってるんじゃねえか?」

【笑星】

「全然。都会では沢山の人が凶徒化して暴れ回ってたとか、そんなのしか」

【大人】

「ウチも大概そんな感じだったよ。いや、人っていうか化け物だったが」

【大人】

「特変が居なきゃ5分で終わってたろうなぁ」

【大人】

「ていうか、あん時のことは今思い出したくねえわ」

【笑星】

「あ、ごめんなさい……今は吹っ切ってる最中だもんね。でも風邪引くから、ホント服は着た方がいいよっ」

 注意事項、空気を読むこと。俺たちこそしっかり気をつけていかないと。

【大人】

「俺ら個人は歓迎するが、危ないって思ったらすぐ逃げろよ。少なくとも今此処は、すっごい危険なんだから」

【信長】

「……? 危険、というのは? 鉄骨などが剥き出しになっていて確かに危険ですが」

【大人】

「俺らは空元気で乗り越えてるが、えっと……電磁波って云ってたっけ亜弥ちゃんは。それが今この町に蔓延しててな、大半の連中が体調を崩してる」

【大人】

「あんまり浴びすぎるとお前さん達も身体壊すかもしれねえ。今の優海町はどっちかというと死の町だ。過去形じゃねえからな、進行形だからな、無理すんなよ」

【笑星】

「……死の町……」

【四粹】

「ご忠告、痛み入ります」

【大人】

「ああ、そうそう。俺たちは兎も角として、役人ポストは今だいぶ外敵に対して過敏になってるだろうから、堂々と歩き回りたいならまずは役所……は崩れてんな、真理学園に話通しに行っといた方がいいぜ。場所、分かるか?」

【四粹】

「それは……はい」

 見れば分かる。

 だいぶ遠くにある建物が。だけどそれは都会の尺度でみれば凄く大きいってわけじゃなくて……それでも今この場所から確認できるのは、他の建物が崩れまくっていて視線を妨げるものがないからだろう。

 ……これだけ建物が全滅してるなか、真理学園は倒壊していないんだ。不思議だ。

【大人】

「良いところなんて、空気が良いってぐらいだったのになぁ。悪いな!」

【笑星】

「ううん、色々教えてくれてありがとう! その……頑張って、ね。あと服は着てね!」

【大人】

「おうよ」

 やっぱり服を着る気のない裸の人達と別れて、定まった目的地へ向かう。

 色々思うところはあるけど……まずはいざ、真理学園へ。

【笑星】

「凄い、明るい人達だったね鞠会長――」

 ……………………。

【笑星】

「あっれ、鞠会長は!?」

【深幸】

「え、お前気付いてなかったの? 結構前にアイツ姿消したぞ……ふーちゃんも居ねえし」

【信長】

「トラックから降りた時には確かに居た筈なんだがな……」

【笑星】

「流石、無断のプロ……まだアルスも使えないのにどうやって落ち合うんだよー……」

 鞠会長が既に別行動に入ってた。

 此処が別の地域だったら問題無いんだけど、今優海町で電波機器を取り出すのは厳禁って鞠会長から釘刺されている。理由は簡単、壊れちゃうからだ。

 でも、通信が取れないだけじゃなく、体調まで崩すなんて……電磁波って怖いんだな……俺も気を付けないと。

【信長】

「……連絡が取り合えないなら、ひとまず共通の目印となる場所へ向かうのが自然だろう。今この町で、ソレに値するのは……」

【深幸】

「真理学園しかねえだろうな。会長もそんぐらいなら簡単に想像するだろうし」

【四粹】

「故に……まずは、行きましょう」

【笑星】

「……うん」

 鞠会長を心配しつつも……俺たちはそのまま真理学園へ足を向けることにしたのだった。

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