9.37「忘れてた!!」

あらすじ

「貴方たちが充実することを優先するのはある意味当然の流れ」砂川さん、お仕事終了。と思いきやここにきてなかなかな失敗に気付く珍しい会長な9話37節。

砂川を読む

Time

18:00

Stage

紫上会室

【笑星】

「お疲れ様ーーー!! かんぱーーーい!!!」

【深幸】

「元気だなぁ」

【信長】

「良いことじゃないか! うん、美味い!」

【四粹】

「ははは……」

 終わった。

 修学旅行の舞台を整えてしまえば、もう実質紫上会の仕事は無いといっていい。教員の方々が後は何とかしてくれる筈である。

 なので、終わりだ。

 終わったのだ。

【鞠】

「……終わったぁぁぁ~~……」

【深幸】

「こんなに緩みきった会長を見れる機会はそう無いわなぁ。お疲れさん、本当化け物だな」

 会計が何か攻撃を仕掛けてきてるけど、今色々と麻痺ってるからノーダメージってことでいいや。

 ソファに全身を預けてだらけきっちゃう私。敵の前でソレはどうなのって思うところもあるけど、今回は誰が見ても頑張りすぎてるので文句は云わせない。

【笑星】

「会長ダメだよ寝ちゃ。今日はお泊まりしてかないんでしょ? 俺も帰るし」

 寝そう。

 でも枕が無いのが寂しい。

【信長】

「今年度は間違いなく、歴代最強の紫上会だな。あまり俺は役に立ててる気がしないが」

【深幸】

「俺たちは兎も角として、コイツが歴代最強の会長なのは確定だわなぁ。ほら起きろー、乾杯の席だぞー」

【鞠】

「んん~~……(←嫌がる)」

【深幸】

「(可愛い)」

【四粹】

「渡航後すぐに此方に来て、相談会を全うされたのです。疲労は当然のことです」

【笑星】

「いざという時は俺が担いで家まで持っていかないとね」

【鞠】

「……起きないと……」

【笑星】

「あ、起きちゃった……」

【信長】

「燥ぎたい気持ちもあるが、会長は勿論のこと俺たちも疲労が蓄積している。もうお開きにした方がよさそうだ。打ち上げは修学旅行後でも出来ることだし」

 いや参加しないけどねそんなの私。

 取りあえず、お開きってことだし帰ろう。メイドを呼ぼう。

 この弛んだ頭で徒歩で行こうものなら、自ら車道に突っ込みそうだし。普通歩いてるのに寝るか、とか思うけど本気で眠い時は歩いててもチャリに乗っていても寝るものらしい。

 早く寝よう。明日はずっと寝ていよう。臥子を抱いて。

 ……そして、きっとまだ寝足りないだろうから、明後日も――

【笑星】

「あ、そうだ。ね、鞠会長そういえばなんだけど――」

 ……明後日、も?

 明後日は……あれ、明後日って……。

【笑星】

「結局、俺たち・・・の修学旅行先ってどうなってるの?」

【鞠】

「……………………」

 ……………………。

 ……………………。

 ……………………。

【鞠】

「…………あ……」

 ……やっば。

 うわ、やっっば……。

 ……普通に忘れてた……。

【笑星】

「……お? こ、れ、は……」

【鞠】

「……………………(←汗)」

 ヌメヌメ覆っていた眠気を巻き込んで、血の気が引いていく気配。

 ここにきて現実が私を虐める――いや私の落ち度なんだけど!

【信長】

「おお……」

【深幸】

「凄え、珍しい会長のミス姿だぞ……! この先見れるか分かんねえぞ……!」

【四粹】

「あまり喜べる場面ではない気もしますが……」

 部下たちが私の凡ミスに燥ぎ始める。いや笑ってる場合じゃないでしょ、これ貴方たち修学旅行できないってことになるから!

 特に会計! 貴方このままだとA等部の間1度も修学旅行を経験できないんだから!

【鞠】

「ッ……」

 何とかしないと、今からでも間に合うルートは、えーっと……。

【笑星】

「会長」

 ……急発進していた私の思考を、肩を叩いて雑務が制止する。

【笑星】

「心配無いよ」

【鞠】

「……はい……?」

【笑星】

「今から会長が、悩む必要は無いよ。俺たちの行き先は……とっくに決まってたでしょ?」

【鞠】

「決まってた? え、いつ……」

 一般学生たちのルート確保に奔走していたのだから、そんな自分たちの行き先なんて会議した憶えはあるわけが――

* * * * * *

【笑星】

「会長がルート全部決めそうだよね。だからそうなっちゃう前に俺、優海町行きたいって打診してたんだ」

【四粹】

「手前も、その……優海町に興味があります」

【深幸】

「まあソレは第一候補だわな」

【信長】

「同じく。正直云い辛かったが、笑星が先んじてたようで助かった」

* * * * * *

【鞠】

「――まさか……」

【笑星】

「へへっ、まさかじゃないよ、決まってるでしょー! 修学旅行で、俺たちが行くのは――」

Day

11/25

Time

9:30

Stage

海原

【鞠】

「…………」

 その翌々日、私は再び船に揺られていた。

【笑星】

「うぇー……綺麗だなー……」

【信長】

「無理するな笑星……乗り物弱いんだから……」

【四粹】

「室内で寝ていましょう。手前が付き添いますから」

【深幸】

「……ところで、お前さんは……?」

【臥子】

「ふーは、臥子です。姉様の、妹」

【深幸】

「お前、妹居たの……?」

【鞠】

「臥子のことはお願いですから気にしないでください」

【深幸】

「抑もどうして、妹連れて来てんだ? 学校行事だろコレ」

【鞠】

「念のためです」

 どうせ、彼処は復興とか出来てないんだろうから。

【信長】

「……すみません会長」

【鞠】

「いきなり何の謝罪ですか」

【信長】

「勝手にルートを作っていたことです。会長に無許可どころか、知らせてもいなかったのですから」

 確かにそこはギルティー。

 しかしあんなミスを犯した私がディスれるわけもなく。

【深幸】

「お前、ほんとは嫌なんだろ? 彼処に行くのって」

【鞠】

「……他に準備のできていたルートが無かった以上、致し方ないという判断です。私自身はこの行事にさして興味もありませんから、貴方たちが充実することを優先するのはある意味当然の流れ」

【深幸】

「何だかんだいっても、優しいよなぁ」

 嫌味やめて。暫くあのミスで弄られること確定かな私。

【鞠】

「はぁ……」

 いやそれよりも今は、今から直面するであろう面倒に思いを馳せているべきだろうか。

 今日も私は溜息がやまない。

 そんな私の、原点。

 優海町――

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