9.34「急げ!」

あらすじ

「感謝されてもッ、時間がッ!」砂川さん、取り乱します。そしておめでとう深幸くん仕事だよ! な9話34節。

砂川を読む

Time

13:15

Stage

Gate2 ポートエリア

【鞠】

「もうこんな時間ッッ!!!」

 ……目覚めて、降りて、第一声はソレだった。

 便は予定通りに到着してくれたので予想通りなんだけど、それでも叫ばずにはいられなかった。

【汐】

「こんなに慌ててる鞠を見れるのは滅多に無いですよー在欄くん」

【在欄】

「汐くん、君がそう云うならば実際にそうなのだろう。いずれにしても「忘却の真空旋律姫」としての姿しか知らなかった岐部在欄は大変有意義な時間を過ごすことができた。感謝を示そう、鞠くん」

【鞠】

「感謝されてもッ、時間がッ!」

 しかも、タクシーが全滅してるってどういうこと!?

【汐】

「これは予想外でしたね鞠。まあ予想しようと思えば予想できたので、我々のミスっていうのもアリでしょうけど」

【在欄】

「どうやら、大輪との便が復活したことで、大輪から用事のある者がここ数日一気に中央大陸へと雪崩れ込む現象が起きていたようだ。その影響で、総てのタクシーが使われているとか。予約が正解だったな」

 予約するよりもタクシー広場のタクシー無作為に捕まえる方が遙かに早いって考えが痛手に……!

【汐】

「今から誰か車で呼ぶっていうのも手ですけど、時間が掛かりますねぇ。車をハイジャックするわけにもいきませんし」

【在欄】

「ポートエリアにはレンタカーのサービスもあるが、同様に時間が掛かる。タクシーが戻ってくるのを待つのが現状最も現実的か」

【鞠】

「ぐぬぬぬぬぬ……っ」

 頑張って機体を出すわけにもいかないし……ッ。

 あーもう、最終相談会、多分始まっちゃってるしッ……!

【鞠】

「こうなったら――走る……」

【汐】

「鞠ー、落ち着きましょー」

 いきなりマラソンチャレンジするべきか遂に悩み始めていたところで――

【バイク】

「きゅいいぃいいいいいいいいん――!!!」

【鞠】

「……!」

 いきなり、目の前にバイクが止まった。

 ……あれ、ヒッチハイク的な!? ヒッチハイクしてもない筈なんだけど成功した!?

【汐】

「え、誰ですか?」

【在欄】

「……その制服は」

【鞠】

「……え――?」

 云われて気付く。

 そのバイクの人は、見返り姿ではあるけど、紛れもなく――

【鞠】

「紫上学園生――」

【???】

「何してんだ、乗れ!!」

【鞠】

「ッ……!」

 その、声はッ――

【鞠】

「会計――!!」

 そう思わず叫ぶと同時。

 私は投げてきたヘルメットを受け取り被り、彼の後ろに並び、乗ったこともないバイクに跨がった。

【深幸】

「しっかり掴まってろよ!!」

【汐】

「ちょ、しっかり掴まるって、それ絵面的に――」

【在欄】

「あと一仕事、辛抱するといい鞠くん」

【鞠】

「臥子、メイドに連れて帰ってもらって自宅待機!!」

【臥子】

「オーダー・アクセプト。ふーは、先に帰っています」

【鞠】

「会計――紫上学園へ!!」

 発進する!!

 何と云うファインプレー……これで、タクシー根絶問題は乗り越えた。だけど、相談会はもう始まっているだろう。

 でも、こうして迎えに来たってことは……まだ間に合う採算のあるということ。

【鞠】

「(上手くやってるだろうか……雑務)」

【深幸】

「会長ォ!! 今回もまた勝ッッッッ手にやってくれたなあぁああ!!」

【鞠】

「言伝はしっかりした筈ですけどッ」

【深幸】

「みたいだが、もっと前もって云ってもらいたいもんだッ、すんげえ慌てたんだからなぁ!!!」

【鞠】

「…………」

【深幸】

「皆待ってるぜ、お前の帰還をッ!! けど、先に云わせてもらうぜ!!」

【鞠】

「……何ですかッ」

【深幸】

「おかえり!!」

【鞠】

「……ただいまッ」

 しっかり、彼の腰に掴まる。でないと振り落とされてしまう。

 当然、それだけでは私の“機能”は発動しない。自動ではないから。

 けど、そんなことをしなくとも……私は既に、ある程度彼のことを知ってしまっているわけで。

 そしてこれから向かうところだって……。

【鞠】

「(何が、おかえり、だ……何が、ただいま、だ……)」

 ほら、気を引き締めないと。緩む時間はお終いだ。今からまた、私は覇者の顔で立つのだ。さあ、そして。

 私の勝利を、受け入れろ――

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