9.26「和佳は頑張る」

あらすじ

「鞠様の“機能”って、どんなのですか!」砂川さん、問い詰められます。作者はストーリーに全く関係無いえっらい強いボスが沢山用意されてるようなRPG或いはアクションゲーが好きです9話26節。でも即死スパイクは赦さない。

砂川を読む

Stage

砂川家 鞠の寝室

【和佳】

「あ、あれ!? また駅前ビルのお客さんからクレームが!? どうして、配管工事でクロスコネクションは直したのに!?」

【行】

「その配管工事で新たな事件が起きたようですね。バックフロー現象、ですか」

【臥子】

「給水側の栓を閉めたまま吐水し負圧を上げたこと、吐水口空間が充分にとられていなかったことで、雑排水の逆流が起きました(←本を読みながら)」

【和佳】

「ば、バックフロー現象……? また工事のやり直しだー……(泣)」

【行】

「この専門知識が求められ過ぎるゲームは果たして全年齢対象と云えるのでしょうか。解せませんね」

【鞠】

「私は何で自分の寝室で貴方たちがゲームをやっているのかが解せません」

 普通にびっくりしたんだけど。

【和佳】

「あ、鞠様、お帰りなさい……!」

【鞠】

「ただいま帰りました。それで、何がどうなってこんなことに……?」

【和佳】

「ごめんなさい……ふーちゃんと、遊びたくて。でもふーちゃん、基本待機は鞠様の寝室だって云うから」

【鞠】

「……ふーちゃん?」

【行】

「臥子のことです。ちょっと云いづらいじゃないですか、臥子。和佳嬢の案です」

【鞠】

「…………」

【臥子】

「お帰りなさいませ、姉様。オーダーに従い、ふーは砂川家書庫の本の、インプット作業の実行中。26%、達成」

 いや、ゲームしてるじゃん……。一緒に遊んでるじゃん……。

 ていうかふーがいきなり馴染んでる……? あれ、一応コミュニケーションはしろとは云ったけど、私じゃない誰かに簡単に色々カスタマイズされちゃってない……?

【和佳】

「鞠様、結構ふーちゃんと仲良くなれた気がする……!」

【鞠】

「…………」

 画伯が末恐ろしい。

【鞠】

「えっと……で、ゲームに至ったのは?」

【和佳】

「学校で、クラスの友達にこのゲームを勧められて……」

 私はあまり詳しくないけど……今時のゲームといってもやっぱりアルスとなる。一応ゲーム専用のハイスペックデバイスというのもあるにはあるが、いつでもどこでもできるっていう簡易性でどうしてもアルスのアプリゲームの数が多くなる。それはいわゆるスマホ時代から変わらない傾向だ。

 でも、今画伯がやってるゲームはどう見てもプレフィフのソフトだ。すなわち、手頃とは云いがたい、ゲームのために造り出された超ハイスペックデバイス。テレビに繋いで画面を映すと、その映像美はやっぱりアルスのアプリを遙かに凌ぐ。

 我が家にはプロの廃人が1人いらっしゃるので、最新のゲーム環境は結局揃っちゃっている。どうやらそれをお借りしたらしい。

【和佳】

「町作りのシミュレーションゲームなんです。難しい……」

【鞠】

「町作り……」

 それならアルス型でよくね? と思う。

 ていうか、何かめっちゃ飛んでるんだけど。お外。

【行】

「ドラキュラ一族が人類にひれ伏し、被害をもたらした分町の再建を手伝えという世界観ですね。しかし、これが難しいんです。何故なら建物1つ建てるだけでも、膨大な専門知識が必要不可欠ですから。建築は勿論のこと、空調設備、給排水設備、電気設備、消防設備、それに環境衛生の汚染にも意識を向けねばなりません。コレを勧めてきた和佳嬢のご友人はとち狂ってます」

【臥子】

「ふーもそう推測します」

 そんな超絶リアル指向ならドラキュラ云々の世界観要らなくない?

【和佳】

「コウモリさん達を飛ばしていっぱい働かせて、復興させていくんだけど……どれだけの数に、何を指示するかとか、さじ加減が分かんないんですー……」

【行】

「それ以前に工事の為の専門知識が必要ですので、尚更臥子が不可欠だったわけです。聞けば臥子は、一発で書物などの知識を記憶できるとのことじゃないですか。どうなってるんですかこの存在は」

【鞠】

「ああ……えっと、インプット機能を取り入れたというか……」

 私が独立機体を造り出すにあたって、1番大事にした……というかほぼほぼコレしかイメージしてないって機能がある。

 それが、“アップデート”。

【鞠】

「臥子は、何でもできるようになります。私のオーダーによって、この子は何度もアップデートを繰り返し、新しい機能を覚えていくんです。無論消すことも可能です」

【行】

「何が、無論、ですか。お嬢、我々に理解させること、もしや諦めていませんか?」

【鞠】

「諦めてくれると嬉しいな、とは思ってます」

 これさえあれば、臥子は何にでもなれる。

 私が存在する限り……。

【和佳】

「鞠様ー、手伝ってください、ふーちゃんの読書、邪魔し過ぎちゃってるから……」

【鞠】

「いや、私じゃ建築知識とか太刀打ちできないんですけど」

【行】

「え?」

【鞠】

「……できるとか思ってたんですか?」

 私とて一般学生なんですけど。

【和佳】

「……あー! 疲れた、1回休憩~……」

 画伯が画面から離れて、こっちに寄ってきた。

【和佳】

「……ふんぬぬぬぬ……」

【鞠】

「……ん?」

 すると何か、私の目の前で唸り始めた。休憩の効果音ではないけど、どうしたんだろう。

【和佳】

「ふんぬぬぬぬ……!」

【行】

「……お」

【鞠】

「何してるんですか」

【行】

「お嬢は鈍感ですね、汐に聞いていた通り」

 いきなり酷評戴いた。

【鞠】

「……鈍感とか思ってたのか……暫く口聞かないあのメイド……」

【行】

「万気相ですよ。和佳嬢は……どの系統か、まだ判別はできませんね」

【和佳】

「……ふはー……!! うーん、全然ダメー……」

 ……万気相?

【鞠】

「何でこのタイミングで」

【和佳】

「今日、授業があって……和佳はあんまり、成績良くなくてー……」

 で、戦闘のプロの前で披露してみたと。

【行】

「マナの扱いというのは、そう意識しなくても遅かれ早かれ身に付きます。お嬢のような例外もあるにはありますが」

 ああ、その意味での鈍感か……。

 だって私自ら護身しなきゃいけない現場って滅多に無いもん。お嬢様だし。

 …………………………。

【鞠】

「あれ……私、そういえばそこまでボディーガードされてない……?」

【行】

「ボディーガードは汐が担当していると兵蕪殿から聞きましたが」

 ソレ初めて聞いたー……。

 確かにあの人、運動能力凄いっぽいけど基本遊んでるよパパ……。

【和佳】

「どうですか、鞠様……?」

【鞠】

「私はこんななので何もアドバイスできません。こっちの傭兵に従えばいいです」

【行】

「焦る必要は無いと思いますが。それは学園も理解してるでしょう」

【和佳】

「でも和佳、自分で自分の身、護れるようになりたいんです。できるだけ早く……お姉ちゃんに護られる和佳は、やめたくて……」

【行】

「……なるほど。その意気は良し。しかし焦りは良い結果を生みません。今は……学校に通い、多くを学ぶことです。護真術は生きていれば身に付くもの、しかし公的な場所で学ぶことができるのは、限られた者の権利です。近い将来、私の得ることのなかった力を、和佳嬢は手に入れられるでしょう」

【和佳】

「う、うん……行さんが、そう云うなら。和佳、学校でもっと頑張る。“機能”も、絶対習得するんだ……!」

 分かってるのか微妙なところだった。

 ていうか思った以上に2大画伯、仲良くなってる。

【和佳】

「……そういえば、鞠様って」

【鞠】

「はい?」

【和佳】

「“機能”って、やっぱり持ってるんですか――?」

 ……………………。

【鞠】

「まあ……人間ならば誰でも、あるでしょう。把握できているかは別として」

【行】

「和佳嬢、護真術に関してはお嬢は信用できませんよ。成績、へっぽこだと汐から聞いています」

 あんのメイドおぉおおお事実だけどおぉおおお……!

【和佳】

「でも、気になって。こんな凄い鞠様の、“機能”もきっと、凄いんだろうなって……」

【鞠】

「はあ……」

 つまり、聞きたいのか。

 私の“機能”を。

 ……………………。

【鞠】

「…………」

【行】

「ん……変ですね」

【和佳】

「え?」

【行】

「お嬢は万気相含めた護真術の成績はへっぽこで、“機能”も開発できていない――そう汐は云ってました……がッ」

【和佳】

「が?」

【行】

「この若干の赤面および目逸らし、違和感です。何か隠してる顔です」

 うっわあやっぱりプロだこの人……!

【鞠】

「ベツニナニモ、ワタシキノウツカエナイ」

【和佳】

「あ、動揺してる……」

 プロじゃなくても見破れるぐらい私グダグダ。

 心構えの時間が足りなかった……。

【和佳】

「鞠様の“機能”って、どんなのですか!(←ワクワク)」

【鞠】

「……護真術は濫りに人に教えないものです。秘密です……」

【行】

「汐の把握している情報が古いとするなら……護衛の任務の関係上、情報の更新が必要ですね。お嬢、汐に隠していたのがバレるのと、私にバラすの、どちらか選んでください」

【鞠】

「…………(←膝を着く)」

 プロには勝てないって思った……。

【鞠】

「知る必要無いと思うんですけど……私の護真術が貧弱なことには変わりないので……」

【行】

「だとしても、“機能”が使えるか使えないかは非常に大きい違いです。そうでしょう、和佳嬢」

【和佳】

「先生云ってた。“機能”=護真術、だって。“機能”が使えないなら、力を悪用する人達とは闘えない、自分の身は守れないって」

【行】

「一般人の尺度はまさにその通りです。故に、お嬢の“機能”を知ることはとても価値あることです。ものによっては私が鍛えますよ」

【鞠】

「いや、遠慮しときます……」

 暗殺特化とかしちゃったらどうするんだ。

 てかそういうのでもないし。

【鞠】

「……なにも、戦闘向きじゃないんですよ」

【和佳】

「戦闘向きじゃない……?」

【鞠】

「“機能”というのはあくまで個人が持つ拡張能力。戦闘能力、とは限らないんです。戦闘にはまっっっったく貢献しないであろう能力に目覚めちゃう人も居るんですよ」

【行】

「つまりそれがお嬢、ですか」

【鞠】

「はぁ……」

 ほんと……戦闘とか全く関係なしに、あらゆる場面において。

 私はコレを、使いたくない……。

PAGE TOP