9.22「寝不足登校」

あらすじ

「お嬢様は……何処まで行ってしまわれるのでしょう」砂川ファミリー、張り切って登校。作者は4時間寝不足で登校が基本な9話22節。

砂川を読む

Time

8:00

Stage

新崎区

【汐】

ぎゅいいいいいいいいいいん((泣))!!!

【和佳】

「ふわーーー、今日は何だかハードな運転……!!」

 遅刻気味の朝、メイドが本気を出していた。画伯がいるのに関わらず。

【冴華】

「ち、ちょっと汐さんッ、和佳が気持ち悪くなったらどうするんですか……ッ!!」

【汐】

(泣)(泣)(泣)(泣)

【冴華】

「……何で号泣してるんですか……え、前見えてます? 大丈夫ですか!?」

 きっと今朝私達の知らないところで悲しい何かがあったに違いない。

 そんな悲しみをブーストに変え、朝のタイムロスを取り返さんとするレースゲーム並みのドリフトを決め込むメイドだった。

 いつもだったらこれぐらいの暴走運転はもう慣れっこなんだけど、寝不足が祟って少しヤバいかもしれなかった。エチケット袋、セット。

【和佳】

「鞠様、大丈夫ですか……?」

【鞠】

「……貴方は平気そうですね」

【和佳】

「何かいつもより激しくて、楽しい!」

 強い子だった。

【和佳】

「……鞠様、臥子ちゃんは……?」

【鞠】

「自宅待機です。学園生ではありませんから」

【和佳】

「何歳、なんですか?」

【鞠】

「…………」

 設定すればするほど嘘を重ねるってことなんだよね。

 ここはテキトウに誤魔化しておこう。

【鞠】

「貴方と同じくらいだと思います。色々あって私も彼女についてはまだ、詳しくないんです」

【和佳】

「そうなん、ですね」

【鞠】

「あの子が、気になるんですか?」

【和佳】

「はい……! 臥子ちゃん、とっても可愛いです……仲良くなれたら、いいなぁって」

【鞠】

「…………」

 仲良くなれるかどうか。

 これは寝不足のまま突き詰めていい話じゃない。

 故にまた、テキトウにするしかない。

【鞠】

「……まあ、変わった子なのは違いないので、思い通りの反応は期待しない方がいいです」

【和佳】

「帰ったら、臥子ちゃんと遊んでみよ……!」

 登校中だというのに、もう帰った時のことを考えている。実際私もだが。

 あの子をどう“改造”していくか、いや抑もちゃんと私の需要を満たす存在であるのか、それが気になってぶっちゃけ学校どころではない私だった。

Stage

霧草区

【汐】

(泣)(泣)(泣)(泣)

 結局終始号泣していたメイドを乗り捨てて、霧草の道を4人で歩く

【和佳】

「臥子ちゃんと友達、なれるかなー……♪ 可愛いなー♪」

【冴華】

「……和佳が一目惚れしている……心ここにあらず……」

【和佳】

「……あれ? でも、臥子ちゃんは鞠様の妹、だから……友達以前に、もう家族だったりする……? じゃあ、臥子ちゃんは和佳の……妹? それかお姉ちゃん??」

【冴華】

グサッ

【和佳】

「またお姉ちゃんが増えちゃったかな~。そろそろ、和佳もお姉ちゃんやってみたいな~。お姉ちゃんは、どっちが――」

【冴華】

「……和佳ぁ~~(泣)」

【和佳】

「お姉ちゃん!? ど、どうしたの、お腹痛いの!?」

 今日も仲の良い姉妹が手を繋いで歩く姿を後ろから眺める。

【鞠】

「…………」

 そういえば……手を繋いで一緒に歩いたことなんか、なかったな。

 結局私とあの人は、全然姉妹なんかじゃなかったということだ。

 ……考えるのを止めよう。このパターンは嫌な予感がする。

【四粹】

「……機体、ですか」

【鞠】

「…………」

 隣を歩いていた副会長が、呟いた。いや、私に話し掛けたのだろう。

 序の口としては意味不明過ぎるが……何を云いたいのかは分かる。

【鞠】

「根拠はありますか」

【四粹】

「鳥肌が立ちました。その感触、かつて何処かで経験した憶えがあります」

 ……あの研究所で恐ろしい体験をしたから、すぐに分かったんだろう。

 あの魔女が、壁に貼り付けられていた機体たちが漂わせていた、赤黒い香りが彼女からも漂っていることに。

【四粹】

「手前には……ある程度説明戴けるのでしょうか」

【鞠】

「望むなら、いつか。逆に……貴方以外でうちの家族に話す気はありません」

【四粹】

「…………」

 私に、理解者はいない。

 私はもはや普通の人間ですらなくなっているのだから。

 便宜が見込めないなら、話すことに何の価値も無いだろう。

【鞠】

「分かってるとは思いますが、貴方も口を割らないでください」

【四粹】

「……お嬢様は、「魔女」の道を選ぶおつもりですか」

【鞠】

「……は?」

【四粹】

「だとすれば……手前はどう足掻いても、お嬢様と離れてしまいます。お嬢様は……何処まで行ってしまわれるのでしょう」

 ……それは……。

 見当違いだ、執事。

【鞠】

「何処にも、行きません」

【四粹】

「え――?」

【鞠】

「私は、平穏の道を行く。だから……貴方が貴方なりに知る、私は変わらない……筈でしょ」

 私の道は、変わらない。大切なものも、変わらない。

 「魔女」とかそんなの、どうでもいい。

【四粹】

「お嬢様……」

【鞠】

「……現状貴方を、過度に落ち込ませてファンの人達を掻き乱す予定もありませんので」

 邪魔なら壊し。壊せないなら支配し。

 そうして、私は手に入れるのだ。私は守りきるのだ。

 その為に私はここまで非人道的なことをやったのだ。この責任は何が何でも果たす。といっても、完成したならやることはそんな無いと思うんだけど。

【四粹】

「ふふ……」

【鞠】

「? 何ですか」

【四粹】

「いえ……茅園さんの云う、煌めきという概念が、手前にも落とし込まれたやもしれないと」

【鞠】

「はぁ……?」

【四粹】

「唯一無二の輝き。己が太陽。矢張り貴方のもとに、今の手前の世界は彩られるのだと」

 またワケの分かんないこと云ってる……。

【四粹】

「故に……そのお言葉、違わぬようお願いします。お嬢様」

【鞠】

「貴方の為に、ですか」

【四粹】

「全人類の為に、です」

 スケールでかすぎ。

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