9.21「臥子」

あらすじ

「――アップデート・オーダー。プリーズ・コネクト――」砂川さん、姉様になります。また増えました9話21節。

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Time

7:00

Stage

砂川家 ダイニングエリア

 ……ダイニングルームにて、一服。

 といっても時刻的にガチでそんな暇無いんだけど。

 いや……時刻以前に……。

【家族の方々】

「「「…………」」」

【人形】

「…………」

【鞠】

「…………」

 このとんでもなく困惑の空気を何とかしないとッ。

【冴華】

「え……えっと……ど、どちら様……?」

【汐】

「鞠の隠し子です……」

【冴華】

「は、はあ、そうでしたか――」

【四粹】

「――――」

【冴華&四粹】

「「――隠し子ぉ!?!?」」

【和佳】

「……って、何……?」

【鞠】

「気にしなくていいですッあと隠し子違いますからッ」

【人形】

「……母」

【鞠】

「母云わないでッ」

【ババ様】

「でも実際間違ってない気もするの!」

【鞠】

「眼帯しましょうかババ様……」

【ババ様】

ごめんちゃい

 あぁ、寝不足きっつい……過去最高かもこの頭痛……。

 えっと……隠し子じゃないことは絶対納得させるにしても……この存在をどう説明してやればいいのか、分からない。

 ぶっちゃけ造っておいてなんだけど、私もこれが何なのか分かってないと思うし。

【鞠】

「えっと……自己紹介しろって云って……できますか?」

【人形】

「名前はまだ設定されていません。現在搭載されている機能は、母への絶対被支配、母同様の統制操作、母抹殺の自動プログラム――」

 名前以外が大変充実した自己紹介だった。

【冴華】

「ちょ……今、母抹殺とか云ってなかった……? ていうか未だ嘗て無い理解不能な自己紹介!!」

【四粹】

「……お嬢様、全く把握が出来ておりませんが、お嬢様に危害が及ぶ可能性があるなら、手前はその排除の意思を有します」

【行】

「四粹に同意です。お嬢に露骨な危険を近付かせるわけにはいきません」

 うーんやっぱり自己紹介ってろくな文脈生まないのね。

 溜息……ができないッ、溜息の為の養分すら足りてない、ピンチな私。

【和佳】

「和佳、全然、分からない……でも、名前無いのは不思議。本当にないの?」

【人形】

「……………………」

【和佳】

「……あれ?」

【鞠】

「……人間に話し掛けられたら、誰が相手でも対応を許可します。極力無視は控えなさい」

【人形】

「――アップデート・オーダー。プリーズ・コネクト――」

 ……すっっげええぇえええやりにくいいぃいいいいい……。

【ババ様】

「何云っとるんじゃ此奴は。鞠はこういう性格の女の子が好みなのかの?」

【鞠】

「んなわけないでしょ……えっと――」

 一応、産みの親――って表現は嫌だな。

 そうじゃなくて……設計主、だから。

 何となく、何を求めてるのかは分かってくる。これも私の知らない直感に依る。

【鞠】

「(名前は、確か――)」

* * * * * *

【秭按】

「…………お父さん? 何を、紹介してるんですか……?」

【父】

「秭按、見ての通りさ! お父さんの新作――臥子ふせこちゃんだッ!! 何か修繕と笑星の世話諸々の御礼を渡したいが、現状価値あるものとして自信を以て渡せそうなのは、コレぐらいなんだ……! 私の生涯26番目の傑作、どうか受け取ってください会長!!」

* * * * * *

【鞠】

「……許可します。あとついでに私を母ではなく……そうですね、見た目的に……」

 ――致し方ない。

 取りあえず母って呼ばれるのを回避するためだ。

【鞠】

「お姉ちゃんとでも呼んでください。貴方の名前も登録します――臥子」

 そっと抱きしめた。

 うわ、冷た――じゃなくて、集中。

【人形】

「――――――――」

【和佳】

「あ、あれ……? どうしたの……?」

【四粹】

「お嬢様?」

 数秒ぐらい、だったと思うけど。

【人形】

「――アップデート・コンプリート」

 そう“アナウンス”が聞こえたので、彼女から離れた。

【鞠】

「……自己紹介、してみてください」

【人形】

「私は、臥子です。お姉ちゃん様の、従順な妹」

【鞠】

「お姉ちゃん様の部分、もっと統一してください」

【臥子】

「――アップデート・オーダー。プリーズ・コネクト――」

 めんどくせえぇえええええええ……ッ!!!

【鞠】

「お姉ちゃん様じゃなくて、お姉ちゃんか、えっと……姉様? のどっちかで(←ハグ)」

【臥子】

「――アップデート・コンプリート」

 3度目の正直。

【鞠】

「自己紹介」

【臥子】

「私は、臥子です。姉様の、従順な妹」

 ……従順な妹の方忘れてた。まあいいや、取りあえず及第点としとこう。

【鞠】

「ってことで、急遽できちゃった妹みたいなアレです。よろしくどうぞ」

【冴華】

「……何を、云ってるんですか――?」

 至極当然のコメントを戴いた。

【汐】

「か……隠し、妹……」

【行】

「汐。そろそろパニックから帰ってきなさい。彼女は……間違いなく普通の人間じゃない。私の受けた印象では、生命であるかも疑わしい」

 流石というか、対象の観察が鋭い。

【和佳】

「臥子ちゃん、っていうんだ……鞠様に、妹さんいたんだね」

【臥子】

「然りです。臥子は、姉様の、従順な妹」

【和佳】

「あ、今度は会話になった! やったよお姉ちゃん!」

【冴華】

「和佳、ちょっとは警戒しなさい……? 今まで、鞠さんに妹が居るって……兵蕪様から話聴いたことありますか?」

【和佳】

「え? …………ない」

【鞠】

「まあ、妹っていうのは便宜的に設けた立場ですし。……ていうかいい加減朝食にしていいですか執事。時間が」

 こうして露見してしまった以上、勿論それなりの説明は責任として果たすつもりだけど……それをやるにはこの朝では時間が足りなさすぎる。

 ああ……やっぱり、計画を軽んじると後々痛い目見るなぁ……。

【四粹】

「……お嬢様。1つだけ」

【鞠】

「何ですか」

【四粹】

「お嬢様は、彼女を……臥子様を、客観的にみても貴方の脅威でないと、評価するのですね……?」

 でも、後悔はさほどしていない。

 勿論完璧に成功していたら、の話ではあるけど、もしそうなら客観的かは兎も角、私にとっては……。

【鞠】

「そうです」

【四粹】

「…………」

【冴華】

「…………」

 画伯以外、最高に警戒しているこの状況で私がそんな頓狂なことを云って、文脈が動くとはあんまり思えなかった、けど。

【四粹】

「……分かりました……改めまして、朝食の準備に取り掛かります」

 執事は厨房の方へと歩いて行った。

【汐】

「……いや、朝食とか、こんな状況じゃ無理なんですけど。鞠――」

【鞠】

「何云ってるんですか。朝ご飯は1番大事でしょう」

【汐】

「いやそういう話ではなく」

【冴華】

「……汐さんがツッコミに回るなんて、珍しい光景ね……」

【汐】

「冴華ちゃんも傍観してないで追及しましょうよ!! 突如、私達に、新しいI☆MO☆U☆TOができたんですよッ!!!?」

【冴華】

「ああ、やっぱりこの人もボケてるわね……」

 この場で1番取り乱してるのがメイドなのは確かに珍しい光景だった。

【冴華】

「まあ、私も相当に驚いていますが……事情はよく分からなくても鞠さんが大丈夫と云っている以上、私がとやかく云えることではないですし……」

【和佳】

「臥子ちゃん、朝ご飯一緒に食べるの?」

【臥子】

「臥子は、一般生物の食物摂取の必要性を持ちません。したがって、同様の朝餉を共に行うことはありません」

【和佳】

「????」

【行】

「つまり、矢張り生物と認識するのも疑問を持つべき存在、ということですか……お嬢、これまたとんでもないものを拾われたのですね」

【鞠】

「まあ、そんなところです。警戒を解くなとは云いませんが、セカンドクライアントは彼女を擁護していることを憶えておいてください」

【行】

「困ったお嬢です。クライアントに危害があるなら、如何なる場合でも朧はその払拭を躊躇いません。お嬢もそれを憶えておくといいでしょう」

【汐】

「ていうか、いや、鞠はずっと倉庫に……え? いやホント、どうなってるんですか??」

【鞠】

「私、着替えてきます」

【臥子】

「…………(←同行)」

 寝落ちさえしてなければこんなややこしいタイムロスはしなくて済んだかもしれないなぁ……。

【汐】

「え、私の疑問はスルー!? 鞠がお姉ちゃんにだけ厳しいー!!」

【行】

「いつも通りではありませんか。さて……では私は、汐の宝物でも粉砕しにいきましょうか……」

【汐】

いやああぁああああああああああ私の苦労の結晶おぉおおおおおお……!!??

 ……ということで。

 あろうことか、私に妹ができてしまった。

【臥子】

「…………(←同行)」

 ……妹、でいいのかな。どうしよ……。

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