8.08「楽しみ」

あらすじ

「私がすべきは書類作成です」砂川さん、スーパー独り言タイム。端から見たら怖すぎる光景な8話8節。

砂川を読む

Time

15:45

Stage

紫上会室

 退屈な時間を終えて、愈々本番。

 紫上会室にて仕事合宿開始である。その前に食べ損ねた昼食をお腹に入れたけど。

【ババ様】

「笑星たちは見回りに行ったの。鞠は行かんのか?」

【鞠】

「何で私がそんなことしなきゃいけないんですか」

 第一意義が無いでしょう。

 各団体の準備の様子を確認するというのは一見仕事してるようにも見えるかもだけどそれは文化祭実行委員の仕事。紫上会の仕事の本質は要請に対処するという受動的なもの。

 まあどうせ此処に居てもやることなんて何も無いのだから、私の邪魔をされるよりはそうしてて構わない。ってことで。

【鞠】

「私がすべきは書類作成です」

【ババ様】

「えーーーーまたーー?」

 左眼が文句を云う。

【鞠】

「我慢してくださいよ」

【ババ様】

「変わり映えしない風景ーー……ババ様も出し物見たい~」

【鞠】

「それは本番をお待ちください」

 今見れるのは制作背景という地味な絵柄のみだ。

【ババ様】

「何か、笑星たちは随分楽しみにしてるではないか。文化祭って楽しいものなんじゃろ? グッドな祭りなんじゃろ?」

【鞠】

「私に訊かれても」

【ババ様】

「? 知ってるんじゃろ、文化祭」

【鞠】

「知識として知ってはいますが、携わったことは今まで一度もありませんよ」

【ババ様】

「は?」

 ……ああ、そうか。その辺は全然話してなかったっけ。

【鞠】

「私、この学園に来てまだ最初の年ですから此処の文化祭を知らないのは当然。以前居た場所では私なんて空気に等しかったので、出し物作りに参加したことは一度も無いというわけです」

【ババ様】

「つまり、鞠は文化祭の楽しさを知らないとな」

【鞠】

「まあそうですね。世間的なイメージというのは一応知ってはいますけど。私が説明できるとしたら其処だけです」

【ババ様】

「ほー……何となくもう予想はついてるが、鞠自身は全然楽しみにしてない感じじゃの」

【鞠】

「その通りではありますね」

 今まで文化祭に参加しようという気にすらならなかったし。ずっと本読んでたし。

【鞠】

「私友達とか居ませんから。ああいう祭りって、一緒に回る人とか出し物してる知り合いとか1人も居ないんだったらまず楽しむ要素無いと思うんです」

【ババ様】

「祭りならミマにも幾らかあるが、皆燥いでたのー」

【鞠】

「その皆で燥ぐという欲求が私にはありません。だから、私は祭りというのと甚だ相性が悪いんじゃないかと」

 体育祭も随分酷い目に遭ったし。

 文化祭は体育祭と違って紫上会も結構動き回る。それ以前に準備量が半端ない。

 出し物を考え、出し物を作る表の過程を楽しんでいる連中の一方で、その膨大な準備に追われる裏の過程を駆け抜ける私。笑っている暇などあるわけがない。

 いつも通り、しかしながら難易度は高め、それでも気合いで完璧に文化祭の下地を準備しきる。それが私の義務。それが果たせなければ、私の道は穢される。

 いつも通り、私は敵を近付けさせない覇者であり続ける。

 私の平穏の為に、この文化祭だって、意地でも成功させてやる。

【ババ様】

「(…………本心は本心でも――といったところなのかの)」

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