8.06「気まずい朝」

あらすじ

「退院できて、元気そうで、良かった!!」砂川ファミリー、登校。そしてあの2人組とバッタリしちゃいます8話6節。

砂川を読む

Day

9/12

Time

8:00

Stage

霧草区

【汐】

「……鞠……御達者で……」

 今日も安全運転だった。

 というか多少遅かった。今日のドライバーは朝から随分消沈してたけど、あえて理由は考えない。

【和佳】

「大丈夫かな、汐さん……あんまり眠れなかったのかな」

【冴華】

「あんまり考えないでおきましょう……」

【四粹】

「……お嬢様、宿泊の道具は万全ですか」

 隣を歩く執事が私の片手のバッグに眼を遣る。

 体育祭の前に比べたら随分軽い。本番前日まで宿泊してやろうかな、とか思ったりもしたけどそれやるとパパが禁断症状を起こすことが判明してからはちょくちょく顔を出すように工夫している。というか今回は稜泉云々の微調整ってだけだから今まで経験してきた一から構築ってやつよりは遙かに楽な作業。普通に2泊3日ぐらいじゃないかと予想しての装備。主に着替えと食材。

【冴華】

「私は一度も宿泊なんてしたことないけれど、寝心地良いんですか? 普通に寒そう」

【四粹】

「冷暖房はしっかりしていますから。布団も収納されていますし」

【鞠】

「私はマイ寝袋使いますけど」

【冴華】

「すっかり紫上会室のプロですね……」

Time

8:15

Stage

紫上学園 外

 いつもよりは少し遅く、校門を越えた。

【笑星】

「あ」

【邊見】

「あ」

 ……時間がずれたからか、最近はエンカウントしてなかったコンビに会ってしまった。

【冴華】

「ッ……」

【四粹】

「おはようございます、笑星さん。邊見さん」

【笑星】

「おはよー玖珂先輩」

【邊見】

「おはようございます~」

【笑星】

「会長も、おはよ! 村田先輩も――って村田先輩と会ったの4月ぶりじゃん!」

【邊見】

「お久し振りです~~」

【冴華】

「ひ……久し振り……」

 おっとぉおお……これは……。

 これは、気まずい……。

【和佳】

「……? お姉ちゃん?」

【笑星】

「君は……お姉ちゃんってことは、村田先輩の妹さん?」

【和佳】

「あ、は、はい……! 和佳って、云います!」

【笑星】

「和佳ちゃんか、よろしくー! 俺笑星!! 会長の部下なんだー」

【邊見】

「僕は邊見~。……HRまで近いし、いこっか~」

【鞠】

「そうですね。遅刻します」

 相変わらず空気を読むのが上手らしい雑務の親友。

 私も合わせて、この気まずい状態を何とか突き動かす。

【冴華】

「…………」

【和佳】

「……??」

【笑星】

「ねーねー、村田先輩!」

 しかしコイツは構わずコミュニケーションに挑む! 何考えてるの! せめて私の居ないところで――

【笑星】

「何で会長と一緒に登校してるの? 仲悪くなかったっけ?」

 ――いや私が処理できる距離のうちに処理しておかねばっ。

【鞠】

「……通学時間が結構一緒ってだけです」

【四粹】

「そうですね。よく通学路で遭います」

【和佳】

「???」

 あとで軽く画伯に説明しておかねば。

【邊見】

「えっちゃん、行こ~」

【笑星】

「え? ああ、うん」

 親友の手を引き駆け出す。強引な手を使ってくれて助かる。

【笑星】

「……村田先輩!」

【冴華】

「――!」

【笑星】

「退院できて、元気そうで、良かった!! 今度紫上会で仕事するコツ、教えてねー!」

 ……脅威は去った、だろうか。

【鞠】

「はぁ~……」

【和佳】

「????」

【鞠】

「……取りあえず彼らのことは忘れてください。どうしても気になるようなら後で執事に教えてもらってください。私は当分会えないかもしれないので」

【四粹】

「……承知しました、その時はお話します。今は、我々も遅刻しないようしましょう」

【和佳】

「はい、分かりました……」

【冴華】

「…………」

 紫上学園の日常は戻って来た、私はそう認識していたけど。

 どうやら彼女に関しては、そう完全に云いきれるわけじゃないらしい。

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