8.55「映え」

あらすじ

「なんつーか、もう格が違うよな! ドンマイ英!!」英さん、滅茶苦茶頑張ります。作者はカラオケに入ってない曲ばっかり好きなので矢張りカラオケが楽しみづらい8話55節。

砂川を読む

【英】

「ドラブダークブラウン~の装束をつけた~ッカマキリたちがぁ~、泳いでて~! ディスコに合わせて、ニョニョリ出す~~♪!!」

【稜泉学園】

「「「Yeaaaaaaaaaaaahhh!!!!」」」

【深幸】

「俺は一体今何を見てるんだろう」

【笑星】

「人間ヤケクソになると何でもできるんだね」

【信長】

「時々笑星は恐ろしく冷徹なコメントをするよな。だが、素人ながら悪くないメロディだと思うんだ。深幸はどう思う?」

【深幸】

「俺も素人なんだがなー……ハピサウンドって正直、得点基準分かんねえんだよ……勿論音程が合えば合うほどスコアは伸びるけど、他歌唱技法を取り込んでもカウントはしてくれるけど寧ろマイナスにしてきたりな」

【笑星】

「何かクラスメイトの友達も云ってた。もっと行くと思ってたのにスコアそんなじゃなかったり、逆にダメだったと思うやつが実は高得点だったり」

【冴華】

「今回の対決は、どんなにバックが盛り上がっていても、採点するのは審査員ではなくカラオケ機器。マイクに入力された音声情報が基準の総てでしょう」

【和佳】

「歌が上手な方が、勝つ?」

【冴華】

「単純に考えればそうなるわ。でも、歌が上手というのは非常に曖昧で信用のならないコメントなの。だって、何を以て歌を上手とするか、その基準は色々あるから」

【深幸】

「メロディを合わせるのが得意ってだけで歌上手ってのは俺が評価者なら認めねえだろうな。俺が大事にするのは、煌めき……こういうでっかい舞台で客全員を湧かせられる力のある歌声やら演奏やらだ。どっかのテレビ番組で見たことあるけど、逆にプロのミュージシャンがカラオケやったら素人以下だった、なんてことは余裕であり得る」

【信長】

「カラオケが上手なら誰でもミュージシャンとしてやっていける……わけではないからな」

【和佳】

「む、難しい……」

【冴華】

「でも、今回は素人同士の対決。この大きな舞台で、メロディをどれだけ正しく歌唱できるかが一番大事になってくるでしょうね。……勝負だけなら」

【笑星】

「だけ?」

【四粹】

「……これは生放送。全國放送です。ただ点数を重視しカラオケ機器が得点を認めるような正確な歌唱を行った場合、テレビ映えは難しいでしょう。勿論対決であることを重視し勝負に集中することは間違いではないと思います。しかし……英さんは、そうは考えていない筈」

【冴華】

「やらなくてもいい、ぶっつけ本番の振り付け。客に手を振ったり近付いてきたカメラにウインクしたり、黒歴史に黒歴史を重ねる蛮行です。しかし、ソレを無理にやってるのバレバレな赤面含めて、普通に棒立ちで歌唱しているよりもずっとテレビ映えするでしょう? お茶の間に興醒めされない努力もまた、学園の社会的ポジションを守るための配慮からの決断でしょう」

【英】

「ッッドラブダークブラウン~の装束をつけた~ッ! カマキリたちがぁ~、泳いでて~ッ! ディスコーに合わせてッ、ニョニョリ出ッす~~♪!!!」

【稜泉学園】

「「「TA・MA!! TA・MA――!!!」」」

【藍澤&琴竪】

「「wwwwwwwww(←●REC)」」

【深幸】

「……ほんと大変だな、アイツ……」

【信長】

「実質的に稜泉学園、そして石山を支えてきた彼女だからこそ捨てることをしない、勝負への執着と並ぶ全員への配慮か。なるほど、大将を務めるに相応しい……石山とはベクトルの異なる、最強と呼ぶに値する」

【深幸】

「考慮すればするほど、素人である以上、得点が落ちる可能性大。逆に考慮を捨てて歌唱に集中するほど、テレビ的にアウト。勝負と生放送が天秤状態になってるってわけか……。だが英さんは生放送ってのを大いに気にして、且つ凄く分かり易いメロディ構成の曲をチョイスしてきた。どっちも全力で獲りにきてる。アイツはどうするんだろうな……」

【司会】

「英さん、歌唱終了ぉおおおおおおお!!!! ありがとうございましたーーー!!! テレビまで気にしてやりきってくれた英さんに、お茶の間の皆さんもどうか拍手をーーー!!!」

【観客】

「「「おおぉおおおおおおおおお!!!!」」」

【司会】

「さあ点数が出るぞーーー!!! 英さんのスコアはーーー……」

84点

【司会】

「84点!! ぶっちゃけ微妙だが、テレビ的には高得点ーーー!!!」

【井伊】

「ぶっちゃけ微妙とか云うなぁゴラー!! 凄くよかったしー!!」

【藍澤】

「うちの英副会長の歌声に90点も出さねえとか、会社にクレームだな」

【琴竪】

「まあ棒立ちで歌っていればもう少し伸びたかもしれませんが。流石、仕事をさぼることを知らない英副会長、あえて私の口で遖と申し上げてやりましょう」

【司会】

「では、頑張ってくれた英さんに、石山会長一言お願いします」

【石山】

「いやー盛り上がったすねー。流石英。そういや、今のって確か新婚ソングっすよねー。英は一体誰と結婚するんだろーなー。何か想像できん」

【英】

「……………………(泣)」

【全國の反応】

「「「コイツっっっ!!!」」」

【司会】

「何か、会場どころか世界が今シンクロを起こした気配がしましたが、英さんお疲れ様でしたーー!!!」

【英】

「はははは……私、明日からお外歩けない……(泣)」

【司会】

「では、後攻、紫上会会長砂川さん――って、あれ? 砂川会長は?」

【笑星】

「やっばい!! 何か誤魔化さないと!!」

【四粹】

「……普通に、控え室に戻っていると伝えればよいのでは?」

【信長】

「……! いや、その必要は無い……!」

【司会】

「……!! いた、いました!! 砂川会長、どうやら一度会場から出ていたようです。今入場口から――おや、何かを持っている!」

【鞠】

「はぁ……はぁ……」

 間に合った感じか……えっと、86点か。

 なら勝機の方も望める感じかな……お疲れ様稜泉の副会長、貴方の頑張りを私は評価する。

【笑星】

「会長!! 何してたの――って――」

【深幸】

「ソレ、何だよ……?」

【鞠】

「見ての通り楽器ですけど」

【冴華】

「バイオリン――ま、まさか!?」

【和佳】

「鞠様、バイオリン弾くんだ!! 盛り上がりそう!!」

【鞠】

「盛り上がりはしないと思いますが」

 まあ、この私が最もテレビ映えするとしたら……それはこの姿だろう。

【在欄】

「ッ……なるほど、この岐部在欄が審査員としてこの場に座したのには、どうやら価値があったらしい」

【汐】

「鞠、どうしてバイオリンなんか……ああそっか、武蔵大で用事があったんでしたね……」

【ノウェル】

「抑もあの子、バイオリン弾けるの?👅」

【学長】

「砂川鞠さんといえば、「忘却の真空旋律姫」の異名で知られる学生バイオリニスト。その実力は人類國宝ゴールドクラス認定という偉業が証明しています」

【帯刀】

「ほお!! 音楽の耳はさほど鍛えていない僕だが、ソレは楽しみだね☆!! ……ん、抑もコレはカラオケ対決では?」

【司会】

「ここで新事実、発覚!! いやこの臼井めがただ無知だっただけな気もするけど、一応ご紹介をッ、なんとこの砂川会長、國宝認定されたバイオリニスト!! その二つ名は「忘却の真空旋律姫」だ――!!」

 ってちょっとおぉおおおおおおおおお!!!

 別にソレは知らしめなくてもいいのではッ!?!?

【深幸】

「はあぁああああ!?!?」

【信長】

「こ、國宝!?」

【四粹】

「……………………」

【冴華】

「あ、そういえば四粹さん、まだ知らなかったのね……」

【和佳】

「鞠様、たっくさん表彰状持ってたよー!」

【四粹】

「そ……そう、だったのですか……底知れない御方だ……」

【深幸】

「ホントだよ! お前どんだけ引き出し持ってんの!?」

【英】

「ええぇえええええええ……!?!? ど、どんだけですかあの人はあぁああ!?!?」

【石山】

「なんつーか、もう格が違うよな! ドンマイ英!!」

【井伊】

「まだ勝負決まってねえだろ!! 抑も、何でバイオリン!? カラオケ対決だろー!!」

【司会】

「そのことですが、今対決に全く関係の無い岐部くんより釈明があります。マイクどうぞ」

【在欄】

「問題無い。ハピサウンドには楽器を用いたメロディ演奏を得点審査するシステムと詳細設定が搭載されている。そしてこのカラオケ対決では、ボーカル曲でなければならないという言及はされていない。よって砂川くんがバイオリンにてクラシックなどの演奏専用の選曲することは可能だ」

【司会】

「とのことです!! では砂川会長、バイオリンにて対決に挑む……ということで、確定ですね!」

【鞠】

「はい。しかしクラシックは弾かないので。ボーカル曲やるので、その辺の設定を弄る必要はないです。楽器で入力するってところだけ、お願いします」

【司会】

「して、歌う……いや、弾く曲は――!」

 ……あの時と、同じ。

 それに抵抗が無いわけじゃないけど――私の中では、もうそれしかなかったのだ。

【鞠】

「白宮駆遠さんの『Sublimation Soul→Sweet Me』で、お願いします」

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