8.48「ココアカラーの告白」

あらすじ

「あの時の私を、そう評価するアンタは、やっぱり紛れもなくドの付くおバカだ」ココア雑務、モブらしからぬ大活躍。「あれ、この子口調どうなってるの?」って思った方ご心配無く、もっと凄い人がいます8話49節。

砂川を読む

【司会】

「会長への告白対決だあぁあああああああああああああああああ――!!!!」

【井伊&冴華】

「「はい?」」

 対決内容が、確定した。けど。

 何ソレ……??

【井伊】

「えと……え……告、白?」

【司会】

「これはですねー、えっと、もう何でもいいので会長に何か告白してください。審査員の心にグッときた方が勝利です!!」

【井伊】

「何かめっちゃアバウトォ!!?」

【汐】

「きゃーーー告白ですってーーノウェルちゃん、胃もたれの準備ですよー♥」

【ノウェル】

「他人の告白見せられてもねーノウェルの方が可愛いしー👅」

【帯刀】

「実に単刀直入、しかし底知れない闘いが予想されるね、在欄くん☆!!」

【在欄】

「次鋒戦が長引いた分、尺を調整するには丁度良い。故にさっさと始めるがいい、双方」

【冴華】

「い、いやいやいやいや――!? いきなり、そんなこと云われても!!」

【井伊】

「告白って!! あのバ会長にッ!? タマ先輩に許可も取らずに!? 生きて帰れないよ私ッ!!」

【司会】

「ではスタートおぉおおおおおおお!!!」

【井伊&冴華】

「「聴けや!!」」

 な、何たること……。

 告白って何……? 異性であるなら本当に、一番一般的な意味で以てぶっちゃけるのもアリかもしれないけど、私と会長は同性だ。

 やるつもりは毛頭無いけど、嘘でもついて彼女にその意味で告白なんてしようものなら、審査員にインパクトは与えられるかもしれないけど私も生きて帰れない気がする。

 これ以上、迷惑は掛けたくない。ただでさえ――

* * * * * *

【笑星】

「あ、また会えたね和佳ちゃん。こんばんはー」

【深幸】

「ん、笑星その子と知り合いなのか?」

【笑星】

「この子、村田先輩の妹さんだよ」

【信長】

「……え?」

【深幸】

「……妹?」

【和佳】

「???」

【金嶺】

「……村田……姉妹……」

【鞠】

「(何で車内でも忙しいの私の頭……!)」

【冴華】

「…………」

* * * * * *

【冴華】

「………………」

【井伊】

「――仕事は、待ってくれない。故に積極迅速、此方から当たって掴み取る。ですよね……タマ先輩」

【司会】

「おっと、ハンズアップ――!! すなわち、先手を取るは、井伊さんだあぁああああああああああ!!!」

【稜泉学園】

「「「おおぉおおおおおおおおおおおおお――!!! ココア!! ココア!! ココア!! ココア――」」」

【井伊】

「う……うううぅぅぅぅぅ……だ、ダメ、頑張らないと……お姉ちゃんの方が凄い場所に立ってたんだから……私だって――」

 ……井伊さんが、ステージの中央に立たされた。

 その様子を見守る一方で。

 私は……。

【井伊】

「コホンッ……か、観客ども、あとお茶の間の皆さん……最初に云っとくけどなっ! 私の中のアイドルは、別の人だ! あの人を前に、私の視界に映る男どもは皆その辺の……ざ、雑草だっ! つまり、甘酸っぱいお話は最初から期待してくれんな! それだけは、よろしくっ!」

【石山】

「ヤンキーぶってるの既にバレバレだけど、よっしゃあかましたれーココアー!!」

【井伊】

「うっさい! そしてかます相手はアンタだバ会長ッ!!! アンタ……ほんっっっっっとバカだよな!!」

【石山】

「おっと、俺もしかして喧嘩売られてる?」

【琴竪】

「バカヒロ、貴方が莫迦なのは客観的事実です。取りあえず試合の邪魔をしないように黙っておくべし」

【井伊】

「野球は、確かに凄えよ? でも、それ以外は全然ダメ……授業を率先してサボるわけじゃないけど、その辺のバカとかヤンキーよりも、ポンコツ。調理室は5分で出禁。理科実験室は2分で出禁。怪我して保健室に行ったその10分後保健室の先生が病院送り」

【信長】

「それは、凄いな……俺はそこまでじゃないぞ……」

【深幸】

「アイツはマルチ莫迦なんだな」

【井伊】

「四粹様と横に並べて比べることすら嘆かわしいっつーか、そんなの想像しちゃった私の頭を叩き割りたいってぐらいにッ! アンタは、ダメ人間だッ!!!」

【石山】

「やっぱり喧嘩売ってるだろ?」

【藍澤】

「会長、客観的事実です」

【井伊】

「……ただ、更に嘆かわしいことに……私にとって、一番重大な出会いはきっと、そんな大バ会長、アンタだったんだろうな、とも……思う」

【石山】

「……ん?」

【井伊】

「まあ、見ての通りというか、私はがさつでヤンキー寄りで」

【笑星】

「見た目で判断するなら全然ヤンキーっぽくないよね」

【深幸】

「すっごい無理してヤンキーやってる感じは物凄く伝わってくるよな」

【井伊】

「アンタほどじゃないけど頭悪いし、器用でもないし、いっぱい睨むし……だから、当然だけど……孤立してた。好きでやってたんだ、だからそれでもいいって思ってた……でもやっぱり、何も無かったのも、本当で。この姿を選んでる私の居場所なんて……逞しくも清らかな稜泉学園に、あるわけがなかったんだ」

【藍澤&琴竪】

「「…………」」

【井伊】

「そんな……どうしようもなくなってたあの時に、まぁいっかって諦めてた私に、いきなりアンタは云ったよ。「大丈夫大丈夫、俺の方がもっと莫迦だから」って」

【石山】

「……んなこと云ったっけ」

【藍澤】

「いや、私に訊かれても分かりませんよ……貴方の奇行をいちいち分析してたらキリがありませんし」

【井伊】

「それで、いつの間にか何故かアンタと交流ができてて、アンタの毎日を知って……正直、驚いた。いや呆れただけかな……確かにその通りだった。惜しげも無くバカを晒して無能っぷりを発揮してる筈のアンタは、すっごく友達持ってて。いつも囲まれてて、先生たちとも普通に駄弁ってて、人気者で。そして何より……アンタは、すっごく楽しそうだった」

【石山】

「まあ楽しいし」

【井伊】

「ソレを見せられてたら、何か悩んでた自分がどうでもよくなった……というか、アンタが充実してるのにいっそ腹が立った!」

【琴竪】

「何を今更。人生不平等が原則の世なり」

【藍澤】

「会長本人は、野球というウルトラ天職を引き換えに他全部が欠けてる、ある意味プラマイゼロなクオリティですけどね」

【石山】

「おっと、これは流石に凹むかもしれない俺」

【井伊】

「凹むかよーアンタがー! 反省なんてしてくれないくせに! そうやって人気を集めまくった結果、あろうことかアンタは会長就任して、いきなり波乱を作ったじゃんか! アンタが編成した今年度の生徒会に……私がいる!!」

【信長】

「……合宿で、少し話を聴いた。稜泉生徒会は第一と第二いずれかのキャンパスで全学生による推薦選挙で会長が決められて、その会長があと4人を召集し任命すると」

【笑星】

「へえ……俺たちと全然違う」

【石山】

「いや、英断だろ? 俺はお前が絶対生徒会やれるって確信してたから任命したわけだし。責任感もあるし」

【井伊】

「は、はあ……!? なっちゃったものは仕方ないし、私とアンタの喧嘩でタマ先輩に迷惑かけるのもどうかと思っただけだしッ!」

【石山】

「ほら、合ってるじゃん俺」

【井伊】

「…………」

【石山】

「お前はおもくそ真面目だし、周りを慮れるし、その為に行動できる、誰が見てもヤンキー要素要らねえだろって思う奴。1年の中から雑務選ぼうかなってなって、真っ先に浮かんだ後輩がお前だった。これ、何もおかしくないだろ?」

【井伊】

「……ふふ、おかしいよ……あの時の私を、そう評価するアンタは、やっぱり紛れもなくドの付くおバカだ」

【石山】

「カメラ止めろー」

【藍澤】

「会長、莫迦なのはどう足掻いても事実です」

【井伊】

「……まあ、その、そういうことだから……さ。会長」

【石山】

「何だよ可愛くねー後輩め……」

告白ここあ

【井伊】

「ありがとう、ございます」

【石山】

「……………………」

【井伊】

「会長が、私を生徒会に招いてくれて……今は本当に、それで良かったって思ってます。そしてタマ先輩に出会えた。居場所を作ってくれた。総じて私は、幸運な後輩だったって、思います。……尊敬はしてないですけど、ありがとうございます、石山先輩。私はそんなバカな会長……えっと、まあ、結構好きだと、思います……」

【石山】

「…………おう」

【井伊】

「……ッ~~……お、終わり、ます――!!」

 ……最後は素が出ていた井伊さんが、頭を下げた。

 終了の合図だろう。司会さんが汲み取る。

【司会】

「フィニイィイイイイイイイッッッッシュ――!!!! 何だこの生き物はあぁあああああああああドチャクソ可愛いなおおぉおおおおおおおおいいいい!!!」

【観客】

「「「おおおぉおおおおおおおおおおおおおおいいいい――!!!!」」」

【稜泉学園】

「「「ココアッ!! ココアッ!! ココアッ――!!」」」

【井伊】

「ぅ……ぅぅぅぅ~~恥ずかしい、何云っちゃってるの私~~……!!」

【藍澤】

「勝負としては悪くないパフォーマンスでしたよ。お疲れ様ですココア雑務」

【井伊】

「あ、ありがとうございます……あはは、でも、タマ先輩いなくて本当に良かった……あんなの聴かれてたら……」

【琴竪】

「家で自動録画やっておいたので、後日タマ副会長にココア雑務の勇姿を見て戴きましょう」

【井伊】

「殺されるッ!! 洒落にならないからやめてーーー!!?」

 強い盛り上がり。

 とても良い話だった。少々ベタかもしれないけど、事実を語る口というのはどうにも本人の意図に関わらずリアリティが附き纏う。ソレが、静かな迫力を作り出す……。

【汐】

「良い話ですねノウェルちゃん~~(泣)」

【ノウェル】

「人の服で目汁拭かないでよ👅 何かそこそこ甘酸っぱかったよね桃ちん」

【帯刀】

「実に青春……そして石山くんッ、イイ筋肉をしているぅぅぅ――☆!!! 高評価だよ!!」

【ノウェル】

「桃ちん、評価ポイント見間違えないでー👅」

 審査員にも、多少なり届いている。

 つまり高評価と捉えるべきで……私の目には、井伊さんが大きな壁のように見えてくる。

【冴華】

「…………」

 でも、井伊さんの話を聴いていて、そして私は矢張り1つ、思うことがあった。

【和佳】

「……お姉ちゃんの、番だ」

【笑星】

「うん。……和佳ちゃん、今、どんな気持ち?」

【和佳】

「…………」

【笑星】

「和佳ちゃんは、あんまり知らなかったんだよね。学校でのあの人がどんなことをやってきたか、とか」

【深幸】

「え……マジか。それは、ちょっと流石に悪いことしたな……姉妹関係に罅とか入らないか心配になってきぞオイ……」

【和佳】

「ううん、お姉ちゃん大好きだもん。和佳は、これからもずっと……お姉ちゃんと、居たい。でも……」

【笑星】

「でも?」

【和佳】

「和佳、お姉ちゃんのこと、知らなきゃって、思うの……和佳の知らない、お姉ちゃんを……知りたいの」

【信長】

「……和佳ちゃん……」

【和佳】

「お姉ちゃん、苦しんでるの。これまでも……鞠様に助けてもらった、今も。お姉ちゃんはいつもみたいに、和佳に隠れてこっそり、辛そうにしてるの……」

【信長】

「それは……」

【深幸】

「なら、聴かせてもらおうぜ。そんなお姉ちゃんの、声を」

【笑星】

「だね。俺も、何か気になってきたよ! 頑張れー、村田先輩ーーー!! 3連敗だけは阻止しよーー!!」

【信長】

「村田ーーー、お前の力を、俺たちに見せてくれーーーー!!!」

【和佳】

「……! うん……!! ――お姉ちゃん、頑張ってえぇえええええええ!!!」

【冴華】

「…………」

 ……私へ向けた歓声が、強くなってきた。

 それが文脈の流れを否が応でも認識させる。

【司会】

「さあ、続いてはッ!! 元紫上会雑務・村田さんの救護室でぶっ倒れてる砂川会長へ向けた告白、参りましょおぉおおおおおおおおおおお――!!!」

【汐】

「冴華ちゃん、鞠にどんなメッセージを送るんでしょう……ふっふっふ、お姉ちゃんとして最高に楽しみ~後で弄り散らかしてやるぅ」

【ノウェル】

「相当インパクト無いと勝ち目無さそうだけど👅」

【在欄】

「…………」

 私の番。

 さあ、喋れ。始めろ。放送時間は有限なのだから。

 そう私の内外が急かす……そんな中で。

【冴華】

「…………」

 不思議にも――私の心は穏やか、かもしれなかった。ドキドキは凄くしている。恐怖感も凄い筈なのに。

 でも……。それよりも。

【和佳】

「お姉ちゃあぁああああん!!!」

 この不透明な願望が、私の行動をもはや完璧に、定めるようだ。

【冴華】

「…………」

【和佳】

「ッ……!」

 後ろから、私を支えてくれる――ずっと支えてきてくれた、最愛の妹をちょっとだけ、振り返って。緊張で出来てなかったかもだが、笑いかけてみて。

 それから、ステージ中央に移動し……止まる。静寂していく、全國に繋がった空間の中。

 「進むために」。

【冴華】

「……私は」

 本人不在、伝わるはずもない、自分の総てを。

【冴華】

「私は、ずっと親から虐待を受けてきました」

 告白する――

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