8.44「カメが泣く」

あらすじ

「泣い…てる……」藍澤さん、押して参る。今のうちに白状しておきますが元ネタはアレです8話44節。

砂川を読む

【藍澤】

「後攻――参ります」

【深幸】

「ッ……」

 勢いで押し切らんとした会計の一発を前にして……

 揺るがぬ稜泉書記の、開始宣言。こちら側の悪寒を煽るには充分な態度。

 会計同様に初心者である筈の淑女は一体、どんなモノマネを――

【司会】

「藍澤さんのターン!! さあ、お題は!!」

【藍澤】

「――ウミガメの出産」

【司会】

「………………はい?」

【藍澤】

「ウミガメの出産を、やります」

 ……………………。

【みんな】

「「「はい??」」」

 我々が思考追い付いてない一方で、彼女はおもむろに姿勢を低くし……いや。

 審査員側に足を向ける形で四つん這いどころか、完全に寝込んでしまった。……軈て足を、何かゆっくりジタバタさせていく。

 静まり返る会場。

カメが泣く

【井伊】

「……え!? ま、マジで、マジでウミガメのモノマネでいくの藍澤先輩!!?」

【石山】

「ちげえよココア、藍澤がやるのはウミガメじゃなくてウミガメの出産だから」

【英】

「ちょ、ちょおぉお!? あ、あああ藍澤先輩――」

【汐】

「ッ……!! こ、これはッ!! この足の動きはッ!!?」

【ノウェル】

「このウミガメ……既に卵を産んでる!! 今は砂浜の穴に、周りの砂を落としてるんだ!!」

【帯刀】

「おお……見える、見えるよ僕にはッ、浜に打ち上がったウミガメが、作った穴に卵を落とし、そして後ろ足で砂を少しずつ、少しずつかけている一部始終が――!!!」

 しかし一転、湧き上がっていく……!

 これはウミガメの産卵のモノマネ――それを頭が完全に落ち着かせた我々は、思い知る。彼女が一体何をやっているのかを、スクリーン越しで!

【深幸】

「な……何てクオリティだ……!!」

 会場の騒然っぷりは恐らく会計の書記モノマネに負けていない。

 抑も何でこの緊張の舞台でソレを選んだのかは分からないけど、勝負の行方が分からなくなっている、一体どちらが上と審査員たちは判断するのか――

【司会】

「ッ……こ、この司会めは、たった今大変なことに気付いてしまった!! カメラッ!! カメラもっと寄って!!」

【深幸】

「ッ……?」

 急に慌ただしくなる司会。そして巻き込まれるカメラさん。

 そのカメラが映したものが即行で会場中の、全國中のテレビスクリーンに映し出されて――

【視聴者】

「「「!?!?!?!?!?!?!?」」」

 ――気付く。

カメが泣く (2)

【藍澤】

「――――――――」

 ソレは……涙、だった――。

【ノウェル】

「泣い…てる……」

【帯刀】

「う……ううう、ウミガメがッ、泣いてるぞおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

【司会】

「ウミガメがッ、泣いているぅううううううううう生命の神秘が、後夜祭に炸裂するうぅううううううううう!!!!」

 会場の盛り上がりがMAXに至った。

 そんな状況で、判決が下る。これは流石に、云うまでもなく――

【司会】

「判決!! 5対0!! 勝者――稜泉学園生徒会、書記藍澤結晶姫――!!!」

【稜泉学園】

「「「うおおおおおおぉおおおおおおおおおおおおおお――!!!!!」」」

 完敗であった。

【藍澤】

「……ふぅ……何とか、勝てましたか……(←起き上がる)」

【石山&琴竪】

「「wwwwwwwww」」

【英&井伊】

「「……………………」」

【司会】

「先鋒から熾烈な対決! それを制した藍澤さん、コメントよろしく!!」

【藍澤】

「流石に淑女として、卵を産み落とすシーンはカットさせていただきました……スカートをまくるのは恥ずかしいですからね。スパッツも穿いてなかったので。不完全燃焼な形があったのは申し訳ありませんでした」

【深幸】

「いやッ、そのチョイスの時点でアンタは淑女じゃないよ!!!?」

 同意だった。会計はただただ相手が悪かったって感じである。あんなプライド捨てた業出されちゃ、こっちの誰が出ても勝てないと思う。

【深幸】

「クソッ……イメージとだいぶ違った……! あの人とんだ変人だった……!! 菅原先輩タイプだった……!!」

【信長】

「ナイスファイトだったぞ深幸! 今度は、俺が会場を唸らせる番だ」

【笑星】

「頑張って松井先輩!! あとちゃんとお茶の間にアピールしてね! 現状紫上学園といったら松井先輩なんだからお茶の間的に」

 雑務はたまに超絶参謀なことを口走る。

 確かに……次は恐らく全國の学生野球ファンが楽しみにしてるであろう対決カード。

 他残り3カードが気まずくなるぐらいにはこの生放送のピークになるであろう時間の到来だ。

【司会】

「さあ、流れを作るか、それとも塞き止めるか! お待ちかねのぉぉぉ――次鋒戦だあぁあああああああ!!!」

【稜泉学園】

「「「石山ああぁあああああああああああああああああ――!!!」」」

【紫上学園】

「「「松井いいぃいいいいいいいいいいいいいいいいい――!!!」」」

【司会】

「紫上側からは、書記・松井信長あぁああああ!!! 対する稜泉側からは、会長・石山博樹いぃいいいい――!!!」

 2人がステージに上がる。

 予想していた、凄まじい熱気が彼方此方から放出される。

 私が認める、この生放送唯一のメリットといっていい時間だが……果たしてその対決内容は――

【鞠】

「普通に野球やらせた方がいいんじゃ――」

【司会】

「じゃあ決めますね~(←クジ引きタイム)」

 あ、やっぱ今無作為に決めちゃうんだ……。

【司会】

「対決内容は――これだあぁあああああああああああああ!!!」

 司会の人が、箱から1枚を取り出し、それを拡げて天井へと掲げる。

 カメラが映した、その題目とは――

【司会】

「愛情料理対決だあぁああああああああああああ――!!」

【石山】

「ほー」

【信長】

「え……」

【紫上会】

「「「――――」」」

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