8.43「智略の牙を研げ」

あらすじ

「プロの芸人でもないのにこんな大観衆と生放送カメラの前で素人が一発芸しろと!?」深幸くん、出陣。紫上学園vs稜泉学園、先行き不安ながら先鋒戦が始まっちゃいます8話43節。

砂川を読む

【司会】

「いざ開幕――5番勝負ぅううううううううう――!!!」

【観客】

「「「ういぇええぇえええええええいいい!!!」」」

 因縁生まれた紫上学園と稜泉学園が、マジでぶつかり合う。

 しかも代表して……生徒会vs生徒会の形式。

【司会】

「ではまずは、お互いの対戦相手を確認するとしましょう。各生徒会、ステージに立ち、私側から先鋒次鋒と並んでください」

 突然丁寧にならないで。この司会もワケ分からん。

 取りあえず云われた通り5人で並んで……正面の相手を確認する。

【司会】

「なるほど……承知しました――では対戦カードをご紹介ぃいいいいいいいいい!!!」

 テンション戻った司会。頭おかしいの確定かな。

 あともう今更かもだけど、モロ映像に自分の姿映っちゃってる。全國放送だ。人生はまったく予測不能である。

【司会】

「先鋒戦ッ!! 紫上側・会計茅園深幸!! 稜泉側・書記藍澤結晶姫!!」

【深幸】

「あーヤベ……緊張が膨らむ膨らむ……やるなら早く動きてえわ……」

【藍澤】

「取り乱すなよ私、映ってるからな……淑女なんだぞ私は淑女――」

【司会】

「次鋒戦ッ、紫上側・書記松井信長!! 稜泉側・会長石山博樹!! 打ち合わせ無しでガチでぶつかったーーー!!!」

【信長】

「次鋒って柄じゃないだろうに……しかしお陰で、またお前とやり合える――」

【石山】

「コレで野球だったらもう最高に盛り上がるんだがなぁ。まあ、今回も俺が勝つし」

【司会】

「中堅戦ッ、紫上側・副会長玖珂四粹!! 稜泉側・雑務井伊恋々空!!」

【四粹】

「……お腹が、痛い……僕なんかがテレビに映って、いいんだろうか……」

【井伊】

「あ、あたってしまった……四粹様と……どうすればいいの私ッ!」

【司会】

「副将戦ッ! 紫上側・雑務堊隹塚笑星!! 稜泉側・会計琴竪はこ!!」

【笑星】

「大丈夫、玖珂先輩……? 今のうちに休んどこ? まあかく云う俺もちょっとお腹グルグルしてるけどねー……自律神経がパニクってるー……」

【琴竪】

「ココア雑務は残念な結果に終わると想定して、バカヒロ会長とユラ書記と私で3勝していきましょう。ふふ……勝ってこの将来の海賊王イオリッシュ=コンデンエイネン=シザイノホウの名を轟かせて仲間を掻き集めるのです」

【司会】

「そして大将戦はッ、紫上側・会長砂川鞠!! 稜泉側・副会長英環!!」

【鞠】

「大将嫌だ……」

【英】

「何で会長が大将固定じゃないんですかー……」

【司会】

「この組み合わせで勝負を繰り広げていくぜーーーー!!! では早速、先鋒戦だあああぁああああああああああああああああああああ!!!!」

【稜泉学園】

「「「ツララッツララッツララッツララ――!!!!」」」

 先鋒選手以外は元の席に戻る。

 ……会計は書記と違って、すっかり緊張にやられてるっぽいけど大丈夫かな。つまんない失敗して恥かく姿とか私も見たくないんだけど。

 一方、あちらの書記はカメラ映像から見る限り、随分落ち着いているように見える。正直会長と副会長以外全員うろ覚えの顔なので、一体どんな性能を持ってるのかとか全部謎。

 ……あちらにとっても、同じような状況の筈だが。

【藍澤】

「やれやれ……第一を見倣って、品位の欠けた声援はできればやめていただきたいものです。淑女の嗜みは基本的に静かなんですから(あとツララはやめろツララは普段はいいけど今はやめろホント)」

【深幸】

「……アンタ、凄えな。えっと、藍澤さんだっけ? 緊張しねえのか」

【藍澤】

「淑女はどんな時にも静かで、流麗な立ち振る舞いであるべきです。稜泉の生徒会ともなれば、その程度は言及するまでもないことでしょう」

【深幸】

「へぇ、強敵だねぇ……その辺を意識すると、何だかなぁ、俺も気合いが入るってもんだ。負けたくはねえからな」

【藍澤】

「私としてはそのままパニックのまま下手をこいて醜態エンドでいてくれてもいいんですが」

【深幸】

「淑女がそんなの望むなよ。悪いが、弟も妹も見てるんでな」

【司会】

「藍澤さんを留まり無き流水とするなら、茅園くんは激しく燃え盛る焔! 異質の闘志が、ぶつかり合うーーーー!!!」

 会計、淑女相手にガンを飛ばす。

 またヤンキーと勘違いされちゃうんじゃないかな。中身は寧ろ真面目な人なんだけど。

【信長】

「頼んだぞ深幸……お前のオールマイティーな適応力を見せてやれ!!」

【司会】

「それでは遂に――対戦内容を、発表しまあぁあああす!!!」

【鞠】

「……ん?」

 対戦内容を発表するとか云ってた司会、何かいつの間にか持ってた箱に片手突っ込んでグルグルしだした。アナログなクジ引きとかあんな感じだよね。あとクラス席替えとか、阿弥陀やらないならアレだよね。

 ……え? もしかして今決めるの?

【司会】

「じゃんッ!!!」

 箱の中から取り出された1枚の紙切れにカメラが急接近。

 そこに書かれていたのは――

【司会】

「モノマネ対決だあぁああああああああああ!!!!」

【観客】

「「「いええええぇええええええええええええええええええいいいいい!!!!」」」

 え!? そういう感じなの、対戦って!?

 私もっと、個人スポーツとか知識比べとか、そういう学校カリキュラムと繋がったものを想像してたんだけど……ッ!

【深幸】

「も――モノマネ、対決!? プロの芸人でもないのにこんな大観衆と生放送カメラの前で素人が一発芸しろと!?」

【汐】

「今やモノマネというのは、対人の円滑化の常套手段みたいなもの。社会人ならば1つは習得してしかるべきものですよ少年。噂ですが、就職面接でも特技としてモノマネ披露が有効とも――」

【深幸】

「ソレ絶対デマ!!」

 会計、早速絶体絶命。

【藍澤】

「…………(汗汗汗汗汗)」

【石山】

「これは見物だぞ! アイツが淑女をとるか勝負をとるか、藍澤の芸人精神が問われてる!」

【英】

「藍澤先輩は芸人じゃないんですが……」

【琴竪】

「否、ユラ書記は骨の髄まで芸人顔負けの破天荒。タマ副会長の顔に敗北なんて泥を塗る行為は、絶対とらない。刮目するべし、奴の骨を」

【英】

「わ、私のことは考えなくていいよー……む、無理しないでくださーい藍澤先輩ー……!」

【藍澤】

「…………(脂汗汗脂汗脂脂汗汗脂)」

 しかし、あちらも同様に危機に立たされているに違いない。

 だってモノマネだもん。慣れ親しんでなきゃまずテレビ受けはしない。

 この5番勝負、早速泥仕合に突入か――

【笑星】

「茅園先輩、大丈夫ー!?」

【深幸】

「…………まあ、やるっきゃねえよな」

 ――が、会計はそこまで絶望していなかった。

【深幸】

「見せてやるぜ会長。俺の勇姿しっかりそのジト目に焼き付けな」

【鞠】

「できれば目を逸らしてたいんですけど」

【四粹】

「何か手があるのですか?」

【深幸】

「これでも体育祭では参謀を務めたんでね。確定ではないが……勝ち方っていうのがある。ついでに先手打って、プレッシャー立ててやるよ!」

【信長】

「それでこそ深幸!!! ふふ……ふははははははは……!!!」

【深幸】

「はっはっはぁ、もぎ取りに行くぜえぇええええ……!!」

【鞠】

「…………」

 テレビの魔力かな、2人がおかしい。

 ……いや、元々勝負事における2人は大体こんな感じなのかな。兎も角完全燃焼する気満々だ。

 頭脳派(らしい)会計の先手が、発動する――

【司会】

「おっと最初に準備ができたのは茅園くんだぁ!! カメラ寄って。あとはいマイク」

【深幸】

「紫上会書記・松井信長のじゃんけん敗北シリーズやります」

 ――何ソレ!?

 ちょ……身内ネタじゃん!!

【信長】

「俺か? 俺、そんなネタになるようなじゃんけんの仕方してないぞ……」

【四粹】

「……そのチョイスに、果たして何の思惑が」

【笑星】

「大丈夫、万能型の茅園先輩だから過不足なくスベってくれるよ!!」

【鞠】

「いやスベったらアウトなんで」

 お願いだからスベっていたたまれない空気にするのだけはやめてッ……!!!

【司会】

「なるほど……では、茅園くんによる……紫上会書記・松井信長のじゃんけん敗北シリーズです!! どうぞ――!!」

【深幸】

「まずは、先攻後攻を決めるじゃんけんに敗北した松井信長」

【鞠】

「……………………」

【深幸】

「……俺の負けだな。そっちが先行な」

【信長】

「まあ、そんな感じだよなきっと」

【深幸】

「つづきまして、3本勝負じゃんけん、2本先取された松井信長」

【鞠】

「……………………」

【深幸】

「ッあぁあクソ――!! 負けたッ!!! 負けたァ!!!!(←仰け反る)」

【信長】

「え、そんなことやってるか俺!?」

【笑星】

「やってるね」

【四粹】

「似てますね……」

【深幸】

「つづきまして、ドッジボール引き分けからの勝敗分かつじゃんけんに敗北した松井信長」

【鞠】

「……………………」

【深幸】

「ックソオオォオオオオオ!!! 何故チョキを出した松井!! 何故、たゆみを赦した信長ァああああああああ!!!!」

【紫上学園】

「「「似てるぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううう――!!!!?!?」」」

 ――大☆盛☆況ッ……!?

【鞠】

「いや、確かに何か、多分似てるとは思っちゃったけど……」

【信長】

「いや、俺、そんなことしてるか……!? ホントに!?」

【笑星】

「やってるね」

【四粹】

「極めて似てますね……」

【信長】

「してるのか……」

 松井信長を知る紫上学園、動揺。彼の性格を知ってる私も割と震撼。

 甲子園で有名になったとはいえ、書記のじゃんけん姿なんて一般が知るわけないので超絶マニアック……だけどこの騒然が、「あ、これは似てるんだな」「細かくて分かんないけど似てるんだな」と周囲を巻き込み納得させる……。騒ぎは、全体に拡がっていく。

 そうか、会計はコレを狙った……。

【深幸】

「実際似てるし、観客たちが皆そう思ってしまったんなら、それを審査員も評価しなきゃだろ……?」

【帯刀】

「おお、策士だねぇ……☆ 紫上学園生が放つモノマネ、という点でも妙にグッドだ。あとイイ筋肉をしているッ」

【ノウェル】

「桃ちゃん何処見てんの~👅」

 総じて、好評と云えるだろう。

 モノマネほぼ未経験、テレビの前で披露するに堪えない実力の会計としては、最大限の足掻きをしてくれたと云えよう。

 ……ただやっぱり居たたまれない感が辛すぎるッ。やっぱり目を逸らしてればよかった……。

【司会】

「茅園くん、見事モノマネをやりきりましたーー!! さあ、追い詰められた稜泉側藍澤さん、一体何を披露するのか……!!」

【深幸】

「或いは、サレンダーするとかな」

【藍澤】

「……やりますね、茅園くん。この緊張の舞台で、己の最も得意としているものを最大限に引き出した、といったところでしょうか」

【深幸】

「他人の分析なんてしてる余裕、淑女さんにはあんのか?」

 やりきった会計、相手を煽る煽る。

 ……カメラに映る稜泉書記、そこから最初にあった余裕の笑みは消えているものの。

 緊張に呑まれている様子ではなく……寧ろ、

【藍澤】

「……無論棄権などいたしませんよ。白けてしまいます。稜泉生徒会を担う淑女として……何より英副会長の見ている手前、可能な限り総ての期待には応えねばなりません」

【稜泉学園】

「「「ツララッツララッツララッ――!!」」」

 敵に攻撃、いや反撃を仕掛ける、本気の闘気だ――

【藍澤】

「後攻――参ります」

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