8.41「開会の挨拶」

あらすじ

「平保31年度紫上最強文化祭、結果発表式を今ここで執り行います」砂川さん、テレビデビュー。もうモブだったあの頃の少女はどこにもいない悲しみの8話41節。

砂川を読む

【司会】

「遅れましたが司会進行のこの私、武蔵大学祭実行委員の臼井が担います、どうよよろしくうぅうううううううううううう!!!」

【客】

「「「いえええぇえええええええええええい!!!!」」」

 私が思っていた以上に武蔵大が結構割り込んでる。きっと其処の学生も滅茶苦茶紛れ込んでるんだろう。

 武蔵大にとっても、コレは後夜祭。いや……武蔵大といえどもコレは最早後夜祭じゃないと思うんだ。

 なんて主張は何処にも誰にも届くことなく……

【司会】

「では最初に、武蔵大学学長殿に、お言葉いただきましょう!!」

 あろうことか、武蔵大のドンの登場である。

【深幸】

「こんな祭りに、学長が降臨すんのか!?」

【笑星】

「一体どんな人なんだろー。鞠会長みたいかな?」

 何そのワケ分かんない予想。

【司会】

「武蔵大学学長――汀渚ぁああああああ!!!」

 何十万もの人々が見詰めているであろう、円形のステージに上がったのは、着物姿の女性。

 ……というか……

【鞠】

「(汀渚って――)」

【学長】

「……若いというのは、いいですね。突然思いついたことを、衝動のままに実行し、我々考えすぎる大人が想像しえない程の速度で実現してしまう。此度の3校合同の後夜祭はまさにその具体例。存在すらしなかった構想が数日の間に現実のものとなり、今数多の人々が祭りに興じ、そして見守っている。そう、世界を動かす、能動的に生きるのは貴方たち若者なのです。恐れることなく進みなさい。先代を生きた大人たちの為に、未来を走る子どもたちの為に、世界の為に――貴方たちの喜び楽しみの感情が、今この場この時においても、観る人々と共有・共鳴し、立派な歴史となることを期待します」

【司会】

「ありがとうございましたあぁあああああああああ!!!!」

【笑星】

「おぉおお……まともな人だったね!!」

【深幸】

「まあ学長って本来まともな人がなるポストだからな……」

【学長】

「続きましてぇ、稜泉学園長元須和浪逗ろうず、紫上学園長宮坂和雄、同時にどうぞおぉおおおお!!!」

【W学園長】

「「ふははははははははは」」

 本来まともな人がなるポストの2人がブレイクダンスしながらステージに上がった。

【鞠】

「💢💢💢💢💢」

【笑星】

「どーどー……学園長なりにテレビ意識してるんだって……」

 巫山戯てんのか、って私にまでクレーム来たらどうすんの!!

【元須和】

「マイクを受け取ったが……特に云うことは何も考えておりませんッ!!!!」

【稜泉学園】

「「「いええぇえええええええええええええい!!!」」」

【元須和】

「何故ならば、此処は考える場所ではないから!!! さあ少年少女ッ、最後まで踊り、遊び、狂い尽くしてみろおぉおおおおおお!!!!」

【宮坂】

「その果てに、得るがいい、君だけの焼き付く思い出をッ!!! 我ら紫上学園は、いつだってそうだ、闘争こそが青春の本質ッ、故にさあ、闘うがいい!! 君たちの全身全霊を、この夜にぶつけたまえ!」

【紫上学園】

「ひゃっはあぁああああああ!!!!」

【宮坂】

「少年少女と云わず、我ら大人も、狂い咲くとしようッ!!! 永劫に1つ、無二のこの時はさあ無礼講!!! 来るがいい稜泉と武蔵の若者たちよ、彼らを見守る大人たちよ、1つの画を、塗り尽くすとしようッ!!!」

【元須和】

「稜泉学園の――」

【宮坂】

「紫上学園の――」

【W学園長】

「――新たな歴史を、世界に知らしめるとしよう!!!!」

【W学園】

「おおおおぉおおぉおおおおおおおおおお――!!!!」

 何か最高にそれっぽいお言葉の後、何故か2人のブレイクダンスバトルが数分続いた。

 果たしてあの人達、何歳なんだろう。

【司会】

「場が最高に温まったぜえぇええええええ!!! W学園長に、拍手!!!」

【拍手】

「「「👏👏👏👏👏!!!」」」

【司会】

「……と、此処で紫上学園会長よりお話がございます」

 あの司会巫山戯んな。

【笑星】

「え、鞠会長!?」

【鞠】

「閉会式やんないと……」

【深幸】

「うわ……せめて学園長の前がよかったな……」

 嘆息してても現実は変わらない。

 いつもの処世術をふんだんに活かして、取りあえず足を動かして……段差を昇り、遂に私がステージに上がった。

【観客】

「「「おおぉおおおおおおおおおおおお!!!!」」」

 こんな盛り上がってもらって申し訳ないんだけど……私は別に何かをやるわけじゃない。

【笑星】

「鞠会長ーー!! 頑張れーーー!!」

【深幸】

「堂々といけーーーー!!!」

【信長】

「石山を超えてください会長ッ!!」

 何か応援がステージ梺から聞こえてくる。

 ……どうでもいいけど、書記その応援はどうなの? 私に奴の真似事しろってこと? 嫌だよ目立ちたくない。

 ――なんて、もう無理なことは分かってるけどね。はい、私テレビデビュー。

【ババ様】

「ババ様、テレビデビューじゃ……凄まじい数の視線じゃ……」

 お……ババ様が緊張してるっぽい。まぁ元々人の視線とか慣れてないんだろうけど……ちょっと意外な姿。

 人の緊張を見てると連鎖することもあるけど、私はどちらかというと逆に解消されるらしい。ナイスババ様。ってことで喋り始める。

【鞠】

「祭りの前に、紫上学園の皆さんにお知らせしたいことがあります。番組のタイトルからして、どうやら皆さんはこれから何らかの形で稜泉学園と闘争するそうなので……その前に、紫上学園内の1つの闘争を完全に終わらせましょう」

 すなわち。

【鞠】

「平保31年度紫上最強文化祭、結果発表式を今ここで執り行います」

【紫上学園】

「「「おおおぉおおおおおおおおおおおおおおお――!!!!」」」

 そう騒がれると、流石にこの文脈においてはこちらの精神を維持させる音波だね。

 然り。私は間違っていない。故に続ける。

【鞠】

「何のことだと無論他の皆さんはお思いですから、軽い解説をいたします。我ら紫上学園の伝統行事、紫上最強文化祭は来客数や売上げなど様々なポイントで文化部やクラス出店など団体が争いあい、勝者を目指すイベントなのです。勝つ為に各々の団体が各々の戦略を立て時間をかけ準備し、最後まで諦めることなく闘い抜きました。その結果――勝者は、確定しました。」

 書記が職員室で印刷してきた紙。

 私が正確に打ち出した、結果しか書いてないシンプルな表をポケットから取り出し拡げる。

【鞠】

「では――上位5団体を紹介させていただきます」

 その表の中で……ラインマーカーで引かれた5行を見詰める。

 絶対、間違えないように。

【鞠】

「第5位――」

 パーカッション音がアドリブで鳴り出した。振り返ると、武蔵大の、恐らく吹奏楽部の人がステージ梺で準備完了していた。凄っ。

 と……私も合わせないといけないか。

【鞠】

「3B――リズミングカフェ」

【六角】

「え、マジかよ!?!?」

 嬉しいとかじゃなくただただ悲鳴が聞こえる。

 あと驚きの声とか……だって一番の危険人物の所属する団体がこの時点で呼ばれたもんね。私は寧ろ何でこんな上位なのって意味で驚き。

【鞠】

「文化祭帰りのお客様にアンケートで戴いたコメントから抜粋させていただきます。「最高にロックでソウルなカフェだった」とのことです。あと「六角、来年もよろしく」という留年をお願いするコメントも多々ありましたが、留年はしないでください」

 同学年になるとか絶対嫌だもんね。

【六角】

「マジかよーーーーーーー……!!!」

 しかし本人はコメントそっちのけで呻いてる。……武道館なのにマイクなしであの人の声聞こえてくるんだけど……肺活量半端ないのか、それともそれだけショックだったのか。

 ……次行こ

【鞠】

「第4位」

 パーカッションさんが鳴り止むのを待って……。

【鞠】

「鉄道研究部――鉄道カフェ」

【鉄道研究部】

「っっしゃあぁあああああああああああああ!!!!」

 お、あの人達は喜んでるっぽいな。

 ていうか思わぬ刺客過ぎる。皆も驚いてるみたいだ。だって六角超えだもん。

【鞠】

「鉄道研究部が日々蓄積してきた知識やエピソードを、解説とドリンク付きで楽しむことができる。常設のコーナーとしてこれからも続けてほしいとマニアから絶賛の言葉がありました。加えて男コンやマチョコンといったコンテストポイントの乱獲が、リズミングカフェを上回る結果を叩き出した要因。文化部の意地を見せつけた、という形ですね」

 いや、彼処は確か運動部なんだっけか? まあいいや。

【鞠】

「ここから恩恵が跳ね上がるそうです。第3位」

 あ……パーカッションだけじゃない、普通に演奏入れてきた吹奏楽部。

 紫上学園以外そんな盛り上がる時間じゃないと思うんだけどなぁ。

【鞠】

「1A――休憩バー「AngelH」」

【邊見】

「あ……は、入っちゃった……」

 おめでとう雑務の親友。

【鞠】

「紫上学園は集客の為に工夫に熱が入り、その本気の競り合いに巻き込まれるお客様がたは体力消耗を余儀なくされたかもしれません。しかしそんなお客様がたを、彼らは静かな椅子と温かいドリンクを用意するのみに留めたのです。この2日間の決闘場に唯一置かれたオアシス、確実な需要のキャッチとバーテンダーの人格で第3位です。VIP票も幾つか入ってますね」

【邊見】

「……会長先輩が入れたんじゃないですか。ふふっ」

【鞠】

「第2位」

 音楽が盛り上がる盛り上がる。ここで噛んだら恥ずかしいね私。

 と適度にどうでもいいことを頭に浮かべて溜息で緊張ごと外に出して、

【鞠】

「2D――お化け屋敷「ふつうのおばけやしき」」

【2D】

「「「いえええええええええええええええっっす!!!!!」」」

 アイツら許さない。

【信長】

「び、VIP票入れておいてなんだが……まさか2位になるとはな」

【鞠】

「今年度最も巨大な設営、お化け屋敷という定石の選択により幅広い客層が足を運び、そしてその研ぎ澄まされたホラーパフォーマンスで「怖すぎる」という涙のクレームが山積み。ですのでこの場を借りて会長である私が謝罪させていただきます。トラウマになったお客様、大変申し訳ありませんでした。この点に関するクレームはいつでも紫上学園、来年度以降の万人が安全健康に過ごすことのできる文化祭の為、受け付けますので遠慮無くお電話ください」

【深幸】

「生放送で頭下げたぞ……2D凄えな……」

【笑星】

「何で会長が謝んなきゃいけないんだよー……」

【信長】

「覇者の定め……畏れ入ります!!!」

【四粹】

「本格的にお化け屋敷、来年禁止しそうですね……」

 もう二度とお化け屋敷には入らないぞ。

 と被害者でもある私自身もしっかり決意を固めたところで、切り替えよう。

【鞠】

「さて、お待ちかね、でしょうか。紫上最強文化祭、覇者の発表です」

 一層、豪華なオーケストラが場を盛り上げる。

 ……何で一般客まで盛り上がってるんだろ。本番始まってすらないのに熱高すぎ。

 そして、1位はというと……ここ、なんだよなぁ……。

【鞠】

「漫画部――漫画部出品展!!!」

【紫上会】

「「「!?!?!?」」」

【紫上学園】

「「「!?!?!?!?」」」

【漫画部】

「「「きゃーーーーーーーーー!!!!」」」

 一般客はしっかり盛り上がってるけど、オイ、1位の発表なんだからもっと盛り上がれ。

【鞠】

「客数はリズミングカフェやお化け屋敷に遠く及びませんでしたが、武蔵大学や稜泉学園への出張販売が成功しています。同人誌やオリジナル雑貨のクオリティが大変高いとコメント多々戴いております」

【夏鳴】

「プレミアムBOX、買っちゃいました~」

【金嶺】

「……因みにだけど、夏鳴、ソレ幾ら……?」

【夏鳴】

「2万5千円ぐらいでした~」

【金嶺】

「文化祭の出し物1つで使う費用じゃない……ッ」

【鞠】

「また、VIPポイントも多く稼いでおり、ミスコンや男コン、各美術系コンクールにて殆ど受賞者を出してコンテストポイントを荒稼ぎしまくってます。はっきり云って2位とのポイント差は2倍近くあります。圧勝でした」

【菅原】

「思わぬ伏兵がいたものね……流石文化部」

【六角】

「がーーーーーー悔しいーーーーーー!!!!」

【鞠】

「……といったところです。例年通り、覇者である漫画部には学園長のポケットマネーより度肝を抜くらしい絶大なプレゼントが贈与される予定です。どうぞお楽しみに」

【宮坂】

「勿論ッ、今年も落胆はさせないよ!! 君たちに相応しい、最高の一品を届けると約束しよう!!!」

 マイクなしに喋らないで。しかも凄い声量。

【観客】

「「「おめでとおおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」

 ほらー盛り上がっちゃうじゃん……貴方たち漫画の内容知っても燥げるんだろうな。ていうか書記と会計がまた落ち込んだじゃん……私からすれば、ほんと酷い結果だよ。

【鞠】

「以上、結果発表を終わります。お時間戴き、まことにありがとうございました。それでは来場の皆様、ご視聴の皆様、どうぞご自由にこの後夜祭に携わりください」

 拍手を戴きながら、特等席へと戻る。

【司会】

「紫上会会長、砂川さんでしたーー!!!」

【観客】

「「「すーなかわッ!!! すーなかわッッ!!!」」」

 ――いや自由にとは云ったけどソレは止めて!?

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