8.40「後夜祭、開幕」

あらすじ

「この合同後夜祭、仲良くは仲良くでも……仲良く火花散らそうや――!!!」紫上学園、前代未聞の後夜祭! 若気の至りの生放送、どうぞ片目流し目でご覧下さい8話40節。

砂川を読む

Time

19:00

Stage

新崎武道館

 新崎区は、25区中最大の、音楽の町。

 ストリートライブが端から公認されて、数多の音楽教室や楽器店が並び、矢張り数多なスタジオは毎日繁盛しており、ロックを極めんとするなら必ずこの町に来なければならないとすら伝えられるぐらいに、全國規模で定着している世界。

 だけど、音楽以外に脳の無い町ではない。大御所のライブに使われるようなアリーナやスタジアム施設は、普通に音楽以外でもよく活用される。空塔の使用許可は滅多に降りないので、特大番組やスポーツの全國大会とかで舞台を選びたい時にまず白羽の矢なのが新崎の巨大施設なのである。

 そんな、イベント大好き新崎区において、最高峰とされるステージこそ、「新崎武道館」。

 私は建築に全然詳しくないのでどう説明したらいいのか分かんないんだけど……例えば例年後夜祭で使われるウチの体育館のステージは前方なわけだけど、此処のメイン会場は中央にステージ、それを観客席が壮大に囲む。アリーナ型だ。

 メイン会場に観客席は1万近く、中継システムを使って他の会場を含めれば1.5万ぐらいの観客を収容可能とのことだ。間違いなく、たった2校の後夜祭で使うにはキャパを持て余す。

 そう、持て余す、筈なんだけどね……。

【司会】

「さあぁああああ、お待たせしましたあぁああああああ、未来を担う少年少女の暇を持て余す全力の遊びッ、前代未聞ッ、紫上学園vs稜泉学園、with武蔵大学、合同後夜祭ッ!!! 略して第1回SRM感謝祭を始めまあぁああああああああああああす!!!!!」

【客】

「「「だああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁ――!!!!!」」」

 何だこの満員状態はあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?

【石山】

「感謝祭ってそれじゃ略してないよなぁ」

【井伊】

「んなどうでもいいところ目向けてないでもっと自分のやらかしたこと反省しろおぉおおおおおお!!!!? 何この満員御礼!! もう後夜祭じゃないでしょーーーー!?」

【藍澤】

「武蔵大が関わると、テレビ局も頷かなければいけないところもあるんだろうな……」

【琴竪】

「しかし中央放送局も本気を出しましたね。たった数日でここまで周知するのは容易にできることではない」

【石山】

「ってか英は?」

【藍澤】

「紫上会様に事情説明しに行きましたこのバカ」

 これまでの文化祭の時間で見てきた総てが霞む、熱気。

 何てことを、してるんだ連中は。これじゃまるで……今までの文化祭こそが前座ではないか。

 こんなの幾ら何でも、紫上学園の皆も――

【紫上学園の皆】

「「「ひゃっっはあああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――!!!!」」」

 って1階固定席の皆様、最高に盛り上がってるッ!!! それでいいのか貴方たちは!!

【笑星&深幸&信長】

「「「(ぽかーーーん)」」」

【英】

「あの……お疲れ様です、砂川会長……」

 お……良識担当が来た。

【鞠】

「……明らかにカメラ、回ってますね。CHKですか」

【英】

「あ……もう色々分かってるんですね……」

 すっごい疲れてるね、副会長。

 因みに1階観客スペースには優先席ってことで学園陣が、2階より上は一般客さん達となっている。そして実行委員や生徒会レベルの人は、特等席というか、1階に特別スペースが各々配置されている。何故か控え室とかまで裏で用意されてるし。

 ははは、何もかもが持て余す。

【深幸】

「ちょ、ちょちょちょ待て、CHKって……テレビ!? これ番組化するのか!?」

【英】

「というか生放送です……やったー、テレビデビュー……」

【笑星】

「しっかり、英先輩!! 正気を保って、情報の足りてない俺たちには先輩だけが頼りだから!!」

【信長】

「マジか……生放送とか、俺は2回目になるかな」

【四粹】

「松井さんは甲子園の時に映ってますね」

【深幸】

「でもソレはスターだからなッ! 俺とか超平凡なんだけど!! それがこんなVIP席に座らされて――」

【司会】

「では各学校の意気込みを、代表である生徒会に聴いてみましょおぉおおおおおおおうまずは紫上学園側リポーターの阿部さんよろしく!!」

【リポーター】

「今どんなお気持ちですか?」

【深幸】

「――それでこんなインタビューとかされちゃってさッ!?!? 抗いようのない緊張に現実感がありませんッ!! コレもしかして夢かな!?」

【リポーター】

「紫上学園生徒会、紫上会よりお言葉戴きました。ありがとうございました~」

 よかったね会計、テレビデビューだ。

【深幸】

「……今の叫び、放送されちまうのか……早速しくじった……」

【信長】

「生放送だからもう放送されてるな、ドンマイ」

 というか抑も、どうしてこんな規模になったんだろうか。

【鞠】

「もうネタばらししてもいいんじゃないでしょうか」

【英】

「……ウチの会長が、「紫上学園と稜泉学園のコラボだったら全國皆さん興味あるんじゃないかな」って武蔵大の人に零したら、「じゃあ甲子園みたいに生放送やってみるか」とCHKに打診したら「丁度その時間帯何も放送するものなくて休止しとこうと思ってたから、やってみる価値あるね」と」

 おっとCHKまで頭とち狂ってるのかな? もう誰も信じられないね。

【リポーター】

「稜泉学園生徒会にお伺いします……今、どんなお気持ちですか?」

 遠くの観客の為であろう天井から伸ばされた4面巨大ビジュアルボード、そして上空のソレを見れない私達向けであろう、4面壁に設置された同じく巨大なビジュアルボードに、今頃全國のお茶の間CHKチャンネルに映っているのであろう映像が映し出されている。

 稜泉の会長が、ピースサインしてた。

【石山】

「それなりに有名人のつもりな石山っす。知ってる人は知ってると思うけどー……紫上学園は俺らにとっちゃライバル校なんでね。この合同後夜祭、仲良くは仲良くでも……仲良く火花散らそうや――!!!」

【客】

「「「おおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――!!!!」」」

 うわ、すっご。あんな恥ずかしいことよく云えるな。

【英】

「…………////」

 そしてこの人の反応。チョロいとでも云うべきかな。

 コレだから毎回苦労させられるんだと思う。そして今回は私に飛び火してくるぐらいに彼はやり過ぎた。

【信長】

「ふふ……ふふふふ……」

【深幸】

「信長?」

【信長】

「云ってくれるじゃないか……ここまで堂々と宣戦布告をされてしまっては、逃げられないなお互い……!!!」

【深幸】

「あ……スイッチ入った……」

【鞠】

「もう知らなーい……」

【笑星】

「会長も何か変なスイッチ入った! 会長~~!!!」

 ていうか、後夜祭でパフォーマンスする人達って、やっぱり文化部とかでしょ? だったら私達の出番はまず無い。

 全く無い……とは思ってない、多分仕事として1回はマイクを持たなきゃいけないが、それぐらいだろう。

 この熱気と喧騒、ゆったりなんてできるわけもないけど……座ってよう。いつテレビに映っても大丈夫な程度には、姿勢を正して、予定の2時間を乗り切るのだ――

PAGE TOP