8.39「いざ、後夜祭へ」

あらすじ

「……あれ、ストレスのあまり画伯の幻覚が……」砂川さん、バスに乗り込みます。残念なお知らせですが、作者的にはこっからが本番な8話39節。

砂川を読む

Time

17:00

Stage

紫上学園 正門

 16時半より、閉園処理が開始された。

 我ら紫上会は、正門にて帰路へ着くお客たちを見送っていく。

【深幸&信長】

「「ありがとうございました……」」

【笑星】

「……どったの2人とも? 何かめちゃ消耗してるけど」

【鞠】

「気にしてはいけない」

 無茶せず休んでいればいいものを。

 ……一方お客さん達は元気に帰っていく。

【子ども】

「うええぇえええええええんゾンビぃいいいいいいい~~~!!!!」

 大泣きしてる子ども(や大人)もいれば、

【おっさん】

「松本さん、このまま二次会と行きませんか? 今度は……正真正銘のアルコールで!」

【おっさん】

「いいっすねえ阿部さん~!! 居酒屋とは何たるか、その哲学を追究する夜といたしましょうや!!」

 ほろ酔い上機嫌で帰っていくおじさんも居て……

【鞠】

「カオス」

【ババ様】

「不均一に混ざり荒れる! これぞ祭りよの! ミマも都会も変わらぬ本質じゃ!」

 であるならば、私が祭りというものを好きになることはこの先も無いだろう。

【四粹】

「……会長。職員室より連絡が。お客様は全員、出られたとの総合確認の報告です」

【鞠】

「分かりました」

 全員出たといっても……一部、アーチから出て、正門前で佇んでいる人達なら結構居るんだけどね。

【夏鳴】

「はうぅぅぅぅ……こんな刺激的な……流石に、眼を開けられません~~(←ノブユキ)」

【金嶺】

「親友は貴方の読書に目を向けられない」

 彼女らもまだ居るし……。

【鞠】

「えっと……其処ら辺、あとでいっぱいバスが停まる予定なので気を付けてくださいよ。できれば周りにもお知らせください」

【夏鳴】

「あ、す、すみません……!」

【金嶺】

「……そのバスに、私達が乗車することは?」

【鞠】

「……紫上学園学生を優先させていただきますが、余りがあればどうぞという形です。余りが無い恐れもあるってことをご承知おきください」

【金嶺】

「どうも」

 ……会話してしまった。怖い怖い。

 と、もうすっかり時間過ぎてるよ。ピンマイクのスイッチ入れる。正門出た程度なら、接続範囲内らしいので。

【鞠】

「マイクテスト」

 ……正門先から私の声が響く。正常に動いてる。

【夏鳴】

「おおお、マイクパフォーマンスです~~!!」

 そして客さんの声も響いちゃった。

【金嶺】

「静かにッ、静かにしてなさいって迷惑料取られるッ――!!!」

【夏鳴】

「むぐ~~~~!!」

 背後で親友の手早い処置が炸裂していた。いや、そんなのどうでもいいので……

【鞠】

「それでは、閉会式を行います。閉会式放送は、紫上会会長砂川が担当します。ひとまず、2日間の営業お疲れ様でした。といっても……祭りはここからが本番、みたいなところはありますが」

 お客様がた、雄叫びコール。

 全部放送に入っちゃう。そして学園内からも気のせいか雄叫びが山びこしてきたような。

 どいつもこいつも元気だな。

【鞠】

「不本意ではありますが後夜祭については紫上会は殆ど情報を持たないままです。このイベントは、紫上学園文化祭実行委員、稜泉学園生徒会及び文化祭実行委員、また武蔵大の学祭実行委員の連携でもって構築されました。よって、既に幾らか各団体に指示は回っていると思われますが、彼らに従い後夜祭への出発準備を済ませてください。私から指示するのは、入票箱とレジ機を、昨日よりも遙かに速やかに職員室に提出すること。総ての団体が早々に提出できたなら……武道館にて此度の文化祭の「勝者」を発表することも不可能ではありません」

 また雄叫び。

 ……これ、別に難しいことじゃないから。計算するの私だし。貴方たちはただ持ってくるだけなんだから。ほんと頼むよ。

【鞠】

「後夜祭参加者は18時正門前に、稜泉学園が手配してくださる団体バスに次々乗ってください。可能な限り団体ごとに行動すること。また、完全下校とするので、その際学園に忘れ物をしないこと。不参加の方は18時半を完全下校時刻とします。片付けはできるだけ進めておき、キリの良いところで巡回する教員に確認と指示を貰ってから帰路に着くこと。以上です――時間厳守、作業に戻ってください」

 スイッチオフ。

 いやぁ便利だな、このピンマイク。こんな動き回るイベントでなきゃ使わないけどね。にしても……

【鞠】

「緊張した……」

【金嶺】

「どこが??」

 遂にお客からも疑われた。

 今回については、伝えるべき情報がなさ過ぎて薄っぺらい閉会式になるんじゃないかっていう心配からの緊張だったんだけど、お客さんがたの反応を見るに大丈夫だったようだ。

【笑星】

「会長またナチュラルに放送決め込んじゃった。完璧だよー」

【信長】

「…………」

【深幸】

「…………」

【四粹】

「……お客様がた整理の為に我々や先生の一部が此処に居るべきですね」

【信長】

「あ、じゃあ俺が――」

【深幸】

「俺もやるっす――」

【夏鳴】

「あ、ノブユキです~!!!」

【ノブユキ】

「「グサッ」」

 ああ、癒やしにかかってた傷がまた抉られた……。

【金嶺】

「はいはいガムテープ使うね~」

【夏鳴】

「ぐむ~~~~……!?!?」

【四粹】

「のぶ……?」

【鞠】

「……それをやるなら副会長と雑務でやればいいかと。私は、結果発表の準備しますんで」

【笑星】

「あ、はーい!」

 項垂れる書記と会計を押しながら学園へと引っ込んだ。

Stage

7号館 職員室

【秭按】

「お疲れ様、砂川さん」

【鞠】

「……集まってる」

 昨日は最終下校時刻ギリギリになってたのに、その反省を活かせたのか、殆どのレジ機や入票箱が揃っているようだった。

【深幸】

「集計作業は上でやんのか?」

【鞠】

「無論です。……運ぶの手伝ってください」

【信長】

「……! お任せください!」

【深幸】

「うおっと激レアだぞオイ、仕事来たッ!」

 ……そこまで元気無いとコッチまで色々萎えそうだから喜ばせてやろうってだけ。

【鞠】

「云っときますけど、集計作業は私がやりますから」

【深幸】

「俺らは見直し算な!」

 私が間違えるものか。

 よりにもよって、敵の前で、さ。

Time

18:00

Stage

紫上会室

 ……タイムアップ。

【鞠】

「ギリギリセーフ、か」

 遅いところはやっぱり遅かった。提出ギリギリなら私の作業完了もギリギリになる。

 と、固定電話が鳴る。

【鞠】

「はい紫上会室」

【笑星】

「― 会長、バスいっぱい来たよ! もう幾つか団体正門に集まってきてるけど、どうする? ―」

 いや、だからソレは全部文化祭実行委員が――

【笑星】

「― 実行委員さん、パニックになってるんだけど ―」

 実行委員!?

【鞠】

「実行委員長に速やかに確認を取って、その人も悩むようなら稜泉側の実行委員会に電話して、もう向かって大丈夫かを訊くよう実行委員を煽ってください」

【笑星】

「― あいあーい! ―」

 ……やる能力が無いなら最初から私へのサプライズを諦めて。

【鞠】

「紫上会放送。18時となりましたので、後夜祭参加者は完全下校の準備に入ってください」

 放送を入れて……私も、その準備。泊まり道具は……あんまり持って帰るものがないかも。これからもどうせ頻繁に泊まるだろうし。

【鞠】

「コレは……必要無いよね」

 楽器ケースを忘れないよう、自分の鞄の隣に置いておく。

 ……固定電話が鳴った。

【鞠】

「はい紫上会室」

【笑星】

「― 皆バスに乗り始めた! 武道館で稜泉側がウェルカムしてるってさ!! ……でも何か、もう一般客と混同になっちゃってる ―」

 実行委員ッ!!!

【鞠】

「できるだけ詰めて乗車してもらうように実行委員や運転手に周知してください。副会長は?」

【笑星】

「― さりげなく一般客さん達を抑えに行った! ―」

 ……なら私が早々に出る必要はないか。

【笑星】

「― お……続々と皆来た……ッ! あとどれだけ来るんだろう ―」

【鞠】

「確か実行委員が、参加者リストを団体ごとに配り提出するよう云っていた筈です。それのチェック作業を入れていれば、人員点呼は容易ですが」

【笑星】

「― えっと、ちょっと待ってて…………今聴いてきたけど、無理だって ―」

 あーもう!!!

【鞠】

「紫上会放送。現在18時3分ですが、18時10分に出発します。まだ学内に残っている参加希望者はできるだけ団体ごとに正門に集まりバスにまとまって乗車してください。繰り返します、18時10分に出発します。コレは厳守します」

 放送切って、電話に戻る。

【鞠】

「雑務、副会長帰ってきて荷物の準備を」

【笑星】

「あいあい!」

 切って今度は内線。

【秭按】

「― はい職員室、堊隹塚が承ります ―」

【鞠】

「紫上会室です。巡回教員に、団体ごと参加者が既に出発したかどうかの確認をさせてください」

【秭按】

「― 承知です。……彼方に赴く教員は殆ど出発したけど、もう紫上会も出発かしら ―」

【鞠】

「はい。もう電話には出れませんので。もし間に合わなかった参加者がいた場合はタクシーを呼んでください」

 電話を切り……

【信長】

「会長、印刷してきました。結果用紙です」

【鞠】

「受け取りました」

 ……一息、つく。

【深幸】

「ほぼほぼ情報が無い中でよくやったって感じだわな……」

【信長】

「バスは10分一斉出発ですか?」

【鞠】

「満員になったやつはもう既に出発してます。紫上会はラストに乗り込む予定です。8分になったらもう出ます」

【深幸】

「あと2分じゃねえか……えっと、カバンカバン……」

【笑星】

「ただいまー!! 疲れたぁ~……」

【四粹】

「お疲れ様です、会長」

【ババ様】

「慌ただしいの~」

 こんな筈ではなかったんだけど……ああもう、実行委員あとで説教してやろうかな。

 ……余計なヘイトになるかな。やめとこ。

Stage

紫上学園 正門

 10分厳守とか云っちゃったので小走り。

 すると最後のバスが待ってくれていた。

【夏鳴】

「笑星さ~ん……! 鞠さ~ん! ノブユ――」

【金嶺】

「はいはい」

【夏鳴】

「むぐ~~(泣)」

 何であの人たちが受付っぽいことやってるの……! 実行委員ッ!!

 もう選択の余地無いので、彼女らの招きのままにバスに乗り込んだ。

 ……満員ってほどではない。見事学園前で待機していた一般客も全員収容してバス達は祭りの舞台へ移動したらしい。

【鞠】

「はぁ……はぁ……」

 何だよ。結局私、仕事してるじゃないか。

 イライラするぅぅぅ……。

【和佳】

「鞠様ー!」

【鞠】

「……あれ、ストレスのあまり画伯の幻覚が……」

 癒やされたいのかな私は。だとしても何で画伯?

【四粹】

「会長、その……ご本人です……」

【鞠】

「え……?」

【冴華】

「勝手に幻覚扱いしないでください……どんだけ疲れてるんですか……」

【和佳】

「やっと鞠様に会えた……文化祭終わっちゃった……」

【冴華】

「仕方無いです。この人はどう足掻いても常に忙しい方ですから。そう、去年の私のように……」

 この人も文化祭被害者か。どうにも私は去年の彼女を引き継いでる感があって嫌だ。

【笑星】

「あ、また会えたね和佳ちゃん。こんばんはー」

【深幸】

「ん、笑星その子と知り合いなのか?」

【笑星】

「この子、村田先輩の妹さんだよ」

【信長】

「……え?」

【深幸】

「……妹?」

【冴華】

「な、何ですかその、信じられない、ていう眼は……失礼ですよ茅園、松井」

【和佳】

「???」

 ていうか、この状況軽くヤバくない……?

 文脈の暴走によっては、現在の私の家族事情とか一気にバレるやもしれない。

【金嶺】

「……村田……姉妹……」

 そしてあの連れ、何か怪訝な目でこっち見てる……ッ!

 多分だけど、ニュース思い出してる……

【鞠】

「(何で車内でも忙しいの私の頭……!)」

【冴華】

「…………」

【四粹】

「……どうか、されましたか?」

【冴華】

「え……? あ、いえ……この人は、本当無駄に優しい人なんだなと。自分の将来に厳しいようで、不要なことにも奔走している」

【四粹】

「冴華お嬢様……?」

【冴華】

「……心配をお掛けするのは、我々の本望ではありませんね」

 ……恐れは色々あったんだけど、結果だけ云うと、心配損。

 ただ私が疲れたというだけの約40分だった……。

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