8.32「巡回その4」

あらすじ

「――ただのピザだッ!!!」砂川さん、魔窟に潜入。作者は校長先生にも媚びを売るのが得意な8話32節。

砂川を読む

【深幸】

「問題」

 4Fに上がったところで会計がクエスチョンを出してきた。

【深幸】

「特級にヤバそうなのは何処のクラスでしょう」

 何でクイズ形式? と問いたくもなるが、急であっても私は回答を用意できた。だって、4Fだもの。

 すなわち……

【鞠】

「3B」

【深幸】

「正解」

 あの男のクラスの在るフロアだ。

Stage

3B教室

【六角】

「はあぁああああああいお待ちかねーオムライスのお客、召・し・上・が・れッ――!!!」

【お客様】

「「「いええぇえええええええええい!!!!」」」

【鞠&深幸】

「「…………」」

 まだ始まったばっかなのに店内は既に彼方此方がびしょ濡れだった。

【六角】

「おっ、会長じゃーん!! いらっしゃあぁぁあああああああい!!!」

【お客様】

「「「うええぇええええええい↗↗↗!!!」」」

 焼き払いたい。

【鞠】

「いや、入りませんから。視察です。適切な営業をしてるかどうか……」

【六角】

「見ての通りッ!!!」

 彼方此方が飲食物で塗れてて店員も客も粗相なことになってるこの光景を見せられてだ、果たして適切な営業をしてると判断する人が現代社会に居るんだろうか?

【男子】

「企画書の通りだろ? つまり、適切だ!!」

 抑も何より不適当なのはこんな店を許可してしまった文化祭実行委員の人選かもしれない。ヘイト回避の為に触れるのは止したけど、もっと私自ら抗議をしておけばよかったかもしれない……これは酷い……。

【六角】

「リズミングカフェ。店員がBGMに合わせて常に踊り続ける、たとえオーダーが入っても、サーブ中でも、リズムに乗りビートを刻むことが最優先!! どうだ、新感覚だろ!!!」

【お客様】

「六角の出し物は今年もとち狂ってるぜーーー!!!」

【お客様】

「このご時世こんな激しく汚い店は滅多にないぜーーー!!!」

 なんだ、客の皆さん分かってらっしゃるじゃん。なら何故入った。

 この店、あろうことか1日目で入客数トップなんだけど一体どうして皆此処に入れるの? 何もかもが怖すぎる……。

【???】

「お、やってるねー」

【鞠&深幸】

「「ッ……!」」

 と――入口でドン引きしてたら後ろから新たな客が!

 思わず端に寄って通してしまう……粗相をかまされる前に引き留めておくべきか――

【深幸】

「って学園長!?」

【宮坂】

「昨日は多忙だったが、今日は私も愉しませてもらおうか!!」

 ああ――うん、引き留めなくていいや。

【六角】

「お前らッ、学園長のお出ましだあぁあああああ!!!」

【お客様】

「「「いええぇえええええええいいい!!!」」」

 学園長を迎える歓声じゃない。

 しかしこの異様な店内の景観に構わず席に着いた学園のトップ、普通にオーダーし出す。

【宮坂】

「……赤ワイン風ピザジュースをいただこう!!!」

【男子】

「赤ピザ1つぅううう↗↗↗!!!」

【深幸】

「何だソレ……」

【女子】

「オーダー承りぃいいいいいいいッッハアアァアアアアアアア↗↗↗!!!」

【女子】

「いひゃいひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ――!!!」

 ……あの仕切りの先がキッチンってことでいいんだろうか。まあジュース作るぐらいなら教室の端っこでも出来そうだもんね。

 だけど果たしてその効果音と奇声、料理を作ってるサウンドとして相応しいのだろうか。シェフに聴いてもらいたいぐらいだ。

【女子】

「お待たせ、しましたァ!!」

 キッチン担当の人が腰を振りながら前会長に赤色のジュースの入ったコップを手に渡す。

 その途端――

【ババ様】

「お……?」

 BGMが、切り替わった。

【六角】

「いええぇええええええええええいロックンロォオオオオオオッッル――!!!」

【お客様】

「「「ふうぅうううううううううううううう!!!!」」」

【鞠&深幸】

「「!?!?!?」」

 そして何かブレイクダンスし始めた!! 私全然詳しくないけど、コレはきっとブレイクダンスでいいんだよねッ? まあ何でもいいけど――ってうわっ、肩と背中で回り始めた。うわっ、頭で回ってる。どうやってるんだろう、頭灼けないのかな。

 ……そして遠心力以前の様々なエネルギーが働いたことで折角のジュースがどんどん飛び散っていく――って私に掛かったんだけどッ!!

【六角】

「どう、ぞぉ学園長ォォォォォ――!!!!」

 突然のソロパート終了後、軽快なステップを踏んで、その程度じゃもう零れないくらい零れ済み謎ジュースを私同様軽くジュースに染まった学園長に手渡す。

【宮坂】

「……いただこう」

 ツッコミ無しで学園長、ワインを飲む感じで液体をクルクル揺らし、香りを嗅ぎ、そしてゆっくりと雫レベルの流速で口へと流し……

【宮坂】

「……………………」

 味を、確かめる……。

【お客様】

「「「……………………」」」

【店員】

「「「……………………」」」

【六角】

「……………………」

 謎い沈黙が続き……それを唯一破ることを許された客が――

【宮坂】

「……――ふ――ふふ」

 笑い声を、漏らす。

【六角】

「お味は、如何ですかな、我らが学園長?」

【宮坂】

「これは……ふふっ、六角くん。赤ワインじゃないよ――」

【みんな】

「「「!!!!!」」」

【宮坂】

「――ただのピザだッ!!!」

 ただのピザなら抑もピザだよねっていうコメントを考える間もなく学園長、立ち上がる。

 途端に――BGMが切り替わる。

【六角】

「ッ――!!! 来るかよ、ソウルメイトぉおおおおおお!!!」

【宮坂】

「ふははははは、刮目せよッ、コレが本当のぉ……ロックンロオォオオオオオオオル――!!!」

【店内】

「「「うおおぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」

【鞠&深幸】

「「…………」」

 学園長が頭で回り始めたのを見届けてから、静かに私たちは立ち去った……。

Stage

4F廊下

【深幸】

「……どうだったよ」

【鞠】

「抑も苦手な客は近付こうともしないのでまあ大丈夫じゃないでしょうか」

 あの人から職を継いでるという形式がこれほど腹立たしく思ったのは今までなかった。

 取りあえず金輪際あの人とは話さないようにしよう、とどうせ無駄な気もする決意を固めた時間だった。

【深幸】

「因みに……すぐそこの3Eも、結構ヤバかったりするんだな」

【鞠】

「いや、アレ以上は無いでしょ」

 強力なまだマシ感を手に入れた私は、堂々と封鎖候補その2を訪問した。

Stage

3E教室

【菅原】

「いらっしゃい。居酒屋カフェ『飲んでも飲まれるな』にようこそ」

【お客様】

「「「いええぇえええええええええええい!!!!(酔)」」」

【鞠】

「いや抑も飲むなよ」

 居酒屋カフェって何!?

 これ内装と客層からして明らかに居酒屋そのものじゃんッ。

【鞠】

「さ、酒……酒売ってるんじゃないですよね、学園ですよ此処――」

【菅原】

「会長、この私が居ながらそんな愚行を犯すとお思いかな?」

 いや貴方が一番ヤバそうだからホント戦慄してるんだけど。

 食材とかの仕入れリストは私も総て眼を通して企業さんに提出してるから云えるけど、当然お酒は仕入れてない。

 では……この客たちから漂う酒気は一体……?

【菅原】

「居酒屋をやろうってなったときにお酒が売れないのは痛いからね。せめて、お酒に近いものをアルコールなしで作ってみようと企業さんと直接打ち合わせしたのさ」

 それ私知らないんだけどぉおおおおお!?!?

【菅原】

「で、色々アドバイス戴いてね。アルコールが無くても雰囲気を徹底的に作り込めばある程度酔ってる気分になるんじゃないってことで、居酒屋のイメージカラーから立ちこめる匂いまで全部作り込んでみた。勿論メニューもお酒のお供が揃ってる」

 何がこの人をここまで駆るんだろうか……。

【菅原】

「抑も昼間っから本当にアルコールで酔うのは健康的じゃないからね。居酒屋の雰囲気を楽しめる格安空間、というのがウチのコンセプトさ」

【深幸】

「もう何云ってんのか全然分かんねえっす……」

【鞠】

「……しかし雰囲気云々だけではこの酒気は説明できないでしょう」

 どう見てもこのお客さんたち、実際に酔ってるじゃんコレ。ただ雰囲気に呑まれるってだけでこうなるだろうか……?

【菅原】

「それは私の私物を使ったのよ。ほら彼処」

 指差されたのは、お店の天井。

 ……そこには何か、壺みたいのが逆さまに設置されていた。ん……アレちょっと煙出てる……?

【菅原】

「電子お香。高かったんだよねぇ」

【深幸】

「お香……?」

【菅原】

「まあ一言で云えば、ほろ酔いするぐらいに脳を麻痺させるお香だね」

【お客様】

「「「うえぇええええええい(酔)」」」

【鞠】

「そんなの絶対居酒屋にないッ!!!」

 コンセプトがブレてる!! もう完全に「お酒」じゃん!!

 ていうかそれつまり、此処に立ってるだけで私たちまで――

【鞠】

「ッ出ます!!」

【深幸】

「!!」

 会計の手を引き、この場から脱出した――

Stage

4F廊下

【鞠】

「な……なんて3年だ……」

【深幸】

「あ、ああ……菅原先輩は、基本ボケ側の人間だからな……」

 一瞬親の顔が見てみたいって思った。

 でも目の前で酔われたら嫌なので当然見たくなかった。

 会計の手を離した。

【深幸】

「……さ、サンキュー」

【鞠】

「……学生の代表が昼間から酔ってはダメです……ああもう、頭がクラクラしてるような……」

【深幸】

「だ、大丈夫か……? 少し酔っちまったのかもな……外出て休憩しよう」

 ……そうしよう。

Stage

紫上学園 外

 ……で、外に出てみると。

【盛況】

「「「qあwせdrftgyふじこlp;@――!?!?!?」」」

 何やら結構な量の悲鳴と涙声が。

【鞠&深幸】

「「…………」」

 アクシデント、だろうか。

 集中して聞こえてくる、グラウンドの方へと向かった。

Stage

紫上学園 グラウンド

【子ども】

「「「(泣)(泣)(泣)(泣)(泣)(泣)」」」

 グラウンドには、泣きじゃくる子どもで溢れてた。

【大人】

「「「(泣)(泣)(泣)(泣)(泣)(泣)」」」

 大人も結構泣いてた。

【深幸】

「……そういやヤバいところ、もう1つあったな」

【鞠】

「…………」

【男性客】

「おい、凄えお化け屋敷あるんだってよ! 此処か! よし、行ってみようぜ!!」

【男性客】

「お化け屋敷ってあんまり盛り上がらねえんだよなぁ。何出るかある程度分かるからなぁ」

 ……………………。

【男性客】

「「ぎいぃいいああぁあああああああ――!?!?」」

【深幸】

「アレは確か、お前のクラスだよな……」

【鞠】

「…………」

 来年は私、文化祭休もう。

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