8.30「再開式」

あらすじ

「閉会式ができるかどうかも暗雲立ち込めてるのかー……」紫上学園、文化祭2日目スタート! 砂川さんにとって心配だらけな2日目のスケジュールを確認する8話30節。

砂川を読む

 ……ゆったりした時間はここまで。

 8時になったところで、愈々2日目が目に見えて動き始める。

【深幸】

「取りあえずグルッと学園の様子を回って見るかー」

【笑星】

「はーい。会長は?」

【鞠】

「職員室にレジ諸々を運んでそのまま会議」

【笑星】

「あ、じゃあ俺、手伝うよ。会議も一応出とく」

【鞠】

「……いいでしょう」

【深幸】

「え、いいのかよ!? 俺らは!?」

【鞠】

「学園の様子を回って見てればいいじゃないですか」

【深幸】

「……いつの間にか、何かに差が……?」

 各々制服に着替え、身を整え、目的を持つ。

 それは紫上会だけでなく、一般学生だって同じだろう。いつもより早めに来て、何か抜けていることはないか、埃は溜まってないか等、朝の短い時間も有効に使っている筈。

 一般学生が抱く心配事は各々の出し物程度に留まる。一方、職員や紫上会は学園全体のことを考える。昨日の振り返りや課題、今日の予定、職員各々の動き等を会議で共有。

 ……まあ規模は違えど、昨日より気を引き締めるというのは皆同じだろう。そう、今日は土曜日。カレンダーを見れば、金曜日は黒字なのに対して土曜日は青。半分休日みたいなものだ。すなわち、昨日よりもお客さんが来やすい。

 昨日の時点でドン引きするほど客が来てたのに、今日は更にソレを上回ることが予想される……そして私にはもう一つ、巨大な憂いがあったりする……。

Time

9:00

【鞠】

「……おはようございます。これより放送で以て平保31年度紫上最強文化祭再開式を始めます。放送務めるは紫上会会長砂川です」

 紫上会室にも一応放送機と繋がったスピーカーは設置されている。

 そこから私の声が出ているのを確認して、続ける。

【鞠】

「これは予測でしかありませんが、本日文化祭2日目は前日よりも多くのお客様が来店されるでしょう。前日あまり振るわなかったと自覚しているところも、上手くいったと喜んでいるところも、弛むことなく全力で過ごしきることを勧めます」

【笑星】

「おー!」

 雑務シーッ。

【鞠】

「因みに現在トップの団体は3Bです。恐らく皆さんコレは予想の範囲内でしょう。しかし紫上会は、他にも強力なことをしている団体を幾つも見ています。はっきり云って、僅差です。本日の頑張り次第で幾らでも逆転は起こるかと思いますので、出し物は当然のこと、コンテストやVIPアピールも精を出してください。紫上学園全体の熱はそのまま紫上学園の校風、文化であると社会からは評価されるでしょう。今日という一日が、良き文化として学園の糧に、各々の思い出になっていくことを、各々望むといいでしょう」

 私としてはどうでもいいというか、あんまり暑苦しいのもなって感じだけど、今更なので勿論黙っておく。

【鞠】

「本日の閉園時間は16時半。お客様を全員誘導し終えて、17時に閉会式の放送を予定しています。例年であれば閉会式の放送はもっと遅くの時間帯に設定し、その放送の中で結果発表を行いますが、今年度は後夜祭の関係でそこでの発表は最初から控えることを決定しています。そして19時に新崎の武道館にて合同後夜祭を開始します。後夜祭については稜泉学園が殆ど取り仕切っておりこちらの文化祭実行委員にも情報があまり出回っていない現状ゆえ、後夜祭やそれに影響する結果発表のタイミングなどは改めて閉会式の放送にて言及することとします。……以上、10時一斉開店を目指し最後の準備を完成させてください」

 ……スイッチオフ。

 何て云うか、自分でもどうなんだろう、って内容の放送だったのでやりきった感皆無。

【笑星】

「何も決まってないの後夜祭……?」

【鞠】

「それを、昼に確認しに行きます」

 私の本日最大の憂い、それは……。

 未だ全くといっていいほど情報が寄越されない、稜泉合同の後夜祭だ――

Time

10:00

Stage

紫上学園 正門

 10時になったところでアーチの門を開放――

【一般客】

「「「ひゃっはああぁああああ待ってろ六角ぅううううううう!!!!」」」

【鞠】

「…………」

 昨日以上の勢いでお客が雪崩れ込んできた。

【笑星】

「あんま走らないでねーー!! いっぱい時間あるから、ゆっくり移動して、眺めながら楽しんでねー!!」

【深幸】

「流石、六角先輩だな……熱狂的なファンの数……」

【信長】

「僅差とはいえ、矢張りあの人が祭りにおいて最強であるのは間違いない。さあ、他団体はどうこのカリスマを打ち崩していくのか……」

 勝負が懸かっている各団体。しかし紫上会はその熱に背中を押される必要はない。昨日同様に、学園の最低限の秩序を保つことを使命とするのだ。

 そんな本日のスケジュールを改めて確認。

【信長】

「今からまた紫上会巡回ですね。……そろそろ自分のVIP票を何処に投じるかを決めておかないと」

 そういえば私もソレ決めなきゃダメじゃん。

 巡回とかせずどっかで休んでたいものだ……。まあそんなゆったりした時間端から諦めてるけど。

【鞠】

「11時半には稜泉に出発します。帰還は……14時半頃と予定はしてますが、これは思いっ切りブレる可能性があります」

 稜泉の後夜祭の出来具合によっては私はアッチで仕事に追われる恐れすらある。怖いにも程がある。

【鞠】

「最悪16時には戻ってこようとは思いますが……更に最悪な状況になりそうなら、電話を入れます」

【笑星】

「閉会式ができるかどうかも暗雲立ち込めてるのかー……」

【深幸】

「石山の奴、ちゃんとやってんだろうなぁ……」

【信長】

「本当にヤバそうなら、あちらの副会長がこっちに連絡を寄越してるだろう。最悪な状況というのは、そこまで心配しなきゃならないほど現実味を帯びてはいないはず」

 そこは私も同感。だから閉会式は普通に17時に行うつもりでいる。そこからはほぼ未定。コレを決めるには、稜泉に行ってあちらから現状を聞き出す必要がある。本日の山場はきっと此処だろう。

 ……まあ武道館で後夜祭やるっていうのも何か規模おかしくて想像ついてないんだけど。此処が山場の可能性も勿論ある。

【鞠】

「……あと、職員室で共有したことですが、今日はこのように昨日を上回る多客が想定されます。故に……イき過ぎた客というのも現れる恐れもある。そのような者を発見した時は無理せず職員室に報告すること。時間稼ぎとかもやらない方向で」

【四粹】

「承知しました」

 ……まあ、この人は普通に一瞬で鎮圧しちゃいそうだけど。

 怪我されたら、ソレ全部私の責任。始末書も書かないといけないし……だーもう、考えること多過ぎー……!

【笑星】

「ん~~今日もすっごい疲れそう! 頑張ろう!!」

【鞠】

「……だから貴方は頑張るなと何度云えば」

【笑星】

「分かってるよー身体面は頑張らない、でも精神面はファイト一発! これセーフでしょ」

【鞠】

「心身は連関性を持つのでアウトです。ファイト一発はやめて適度に数発分けして」

【笑星】

「……何か数発分けって発想面白いね会長」

【鞠】

「虐めですか」

【笑星】

「虐めてないよー」

 はぁ……何か雑務と相対していると適度な緊張すら莫迦みたいに思えてくる……。

 なるようになる、か。

 基本何の成果も得られない雑務との会話も、たまには役立つ――

【鞠】

「って何で私はまたこんなに会話してるんだ……」

【笑星】

「え? 俺たち割と会話しまくってるよね最近」

【鞠】

「……ちょっと話し掛けないでください、心の整理をしないと……」

【笑星】

「何で!?」

【深幸】

「…………」

 ともあれ、文化祭、本番の本番がスタートした。

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