8.29「朝」

あらすじ

「ああもう……あの人は敵なのに……」砂川さん、悶々とします。2日目ってことで8話も折り返したかなって感じの29節。

砂川を読む

Day

9/28

Time

6:00

【鞠】

「……んん」

 …………覚醒。

【鞠】

「むくっ」

 起床。枕元のアルスにて時刻確認。

 6時……ほぼほぼいつも通りか。

【鞠】

「ん――」

 と、起きて気配に気付く。

【笑星】

「……あ。鞠会長、おはよー」

 雑務が、昨夜も座っていた場所で昨夜と同じ事をやっているようだった。

 ……誰かこのエリアに入ってきたんなら、私なら気付きそうなものだけど。よほど疲れてたんだろうか。祭りってどうしても疲れるし。

 だけど、普通に疲れてそうな彼もまたいつも通りだった。

【鞠】

「……おはようございます。疲れ、残ってませんか」

【笑星】

「分かんない。でも目は醒めちゃったから」

 お互い、日常の強さというべきものを確認し合う。

【笑星】

「皆はまだ、起きてないよ。洗面所行くならひっそりねー」

 分かってる。

 正直、彼らと迎える朝というのはトラウマしかないのだから……。

【鞠】

「雑務、寝惚けてなくてよかった……」

【ババ様】

「他3人はどうかの~ニヤニヤ」

【鞠】

「……何か仕掛けたら今日一日眼帯しますから」

【ババ様】

「何も無いといいのッ!!」

Time

6:30

 顔を洗い。

 髪を整え。

 服を着替え。

 で、台所の前に立つ。

【鞠】

「……まあ、書記に何かされるぐらいなら」

 というかもう炊飯器回ってるし。

 書記、それから会計も結構食べそうなので2.5合ぐらい炊飯器にぶち込んでタイマーセットしておいた。

 他の下ごしらえは何もやってないので、簡易なやつで済ませよう。

【ババ様】

「完全にお母さんじゃな」

【鞠】

「うっさい」

 と、会話してたら……誰か歩いてくる気配。

 口を閉じて振り返る。

【信長】

「会長……早いですね。おはようございます……」

 汗が香ってる。服装からしても、何処か運動に出掛けていたんだろう。私より遙かに早いじゃん。

【鞠】

「朝食は7時ぐらいにできますので」

【信長】

「……何から何まで、すみません……」

 といってもお米さえ完成すればあとは10分程度で普通に揃うので、私もちょっとやることなし。

【信長】

「……会長は、家事ができるんですね」

【鞠】

「家庭的なつもりはありませんが」

【信長】

「ここには俺レベルが居ますから、会長はできる側です」

 それは納得。

【鞠】

「……てか何処行ってたんですか。野球部は練習してないでしょう」

【信長】

「はい。ただ、習慣で4時ぐらいに起きてしまって。霧草区を1周してました」

 朝から何やってんだこの人。それ日常にしてるのか……。

 自制力のある人はもっぱら強者だ。勉強のできる人というのも、天才は今省いて考えるけど、沢山勉強しているわけであって、そこで重要になってくるのがこの自制力だったりする。書記には、ソレが可成りあると評価すべきなんだろう。その正体は勝負への執着心だけど。

 ……でも何故か私の前だと間抜けな姿ばっかり晒して、天然的な嫌がらせに定評のある書記だ。

【信長】

「何してようか……朝食を手伝ったらそろそろ玖珂先輩にまで怒られそうだし」

【鞠】

「その前に私がしばき上げます。走ってきたなら、シャワー入ればいいじゃないですか。普通に時間ありますし」

【信長】

「なるほど、ではそうさせてもらいます」

 書記を追い払った。キッチンには立たせん。

【鞠】

「ふう……って」

 普通に会話しちゃったじゃんか。

【鞠】

「ああもう……あの人は敵なのに……」

【ババ様】

「ソレ、ちょくちょく云っとるの」

 再びババ様が口出ししてきた。

【ババ様】

「何でそんなに、信長を敵視しとるんじゃ?」

【鞠】

「……だって敵ですし……」

 彼は信用に足らない人物。気を許してはならない相手。

 それは……会計にも、副会長にも、雑務にも云えることだ。

【ババ様】

「でも、一緒に居るんじゃな」

【鞠】

「怖い事云わないでください。……百害あって一利なくとも、関わらなければならないことだってあるでしょう。そういう相手、私はそう認識します」

 忘れてはいけない。今までの苦しみを。

 私は学習し、歩みを改善し、そして辿り着くのだから。

【ババ様】

「何と云うか。鞠は器用なのか不器用なのか、分からんのー」

【鞠】

「念には念を入れるタイプと理解ください。楽観的というのは性に合わないみたいで」

 だから……私は、慣れ慣れしくなど、しないからな――

Time

7:15

【紫上会】

「「「いただきます」」」

 朝食、開始。

【深幸】

「……お前の作る朝ご飯ってよ」

 ・雑穀米ミックスライスwith梅干し ・しじみ豆腐味噌汁 ・卵サラダ(ゆで卵、スクランブルエッグ、ベーコン、キャベツ、トマトなど) ・フルーツヨーグルト(皮入り)

【深幸】

「細かく栄養豊富だよな……」

【鞠】

「朝餉はこんなもんでしょ」

【深幸】

「うちはあんまり朝とらないからなぁ」

【鞠】

「朝とらないとか狂ってますね」

【深幸】

「朝あんまり摂らない人間は割とこの世にわんさか居るんだが……」

 朝食は一番大切でしょうに、何で皆それを分かってないんだろう。

【深幸】

「信長んとこは?」

【信長】

「俺は、野球があるからな。量は多くしてくれる。が、父さんたちはあまり食べないな」

【笑星】

「俺の家も、朝はあんまりかなー。姉ちゃんとか朝食抜きで出ることあるし」

【鞠】

「ちょうしょくぬき」

 信じられない。

 非日常だったら兎も角、何気ない日常の中で朝食抜きとか。

【四粹】

「手前の家も、あまり摂りませんね……生活バランスが抑も一定ではない」

【鞠】

「……………………」

【笑星】

「ヤバい、会長の眼が何かを睨んでる。俺ん家かな」

【信長】

「俺かもしれんぞ……」

【深幸】

「俺たちの家全部かもな……」

【四粹】

「ははは……」

 他人の家は未知的。

 それを確認する朝食の時間となった。

 ……………………。

【笑星】

「ごちそうさまー。鞠会長、俺が皿洗うねー」

【鞠】

「皿割られると嫌なので私がやります」

【笑星】

「ふふーん俺は実は、皿洗いの達人だったりするんだよねー。姉ちゃんからのお墨付きなんだよー」

【鞠】

「朝食抜いてる人の墨なんて信用ならないので勉強してて」

【笑星】

「えー……それはちょっと姉ちゃんが可哀想……」

 ということでお皿を片す。

【ババ様】

「……さて、鞠」

 ……独りになったところでババ様が口を開く。

【ババ様】

「楽しかったのー朝餉タイム!!」

【鞠】

「は?」

【ババ様】

「めっっっっっっちゃ団らんしてたの」

【鞠】

「…………――は!?」

 いや、は!?

 何やってるの私!?

【鞠】

「と、あっぶな……いやアウトか……」

 思わず持ってた皿シンクに落として割りそうになったけど……ちょっと、ショックが禁じ得ない……。

 普通に会話しちゃってた……私……。

【ババ様】

「まあ関わらざるを得ない相手ならば、会話することもまたやむなし。人間に生まれたのじゃ、食事は囲み楽しまねば他の生物に失礼というものよの」

【鞠】

「何で私……普通に……」

【ババ様】

「良いではないか別に」

【鞠】

「良くないです」

 楽しんで……は、ないよねまさか。

 流石私、矢張り油断ならないというか。

【鞠】

「一応確認ですけど……何も仕掛けてないですよね?」

【ババ様】

「それやったら眼帯するじゃろ鞠」

【鞠】

「しますね」

 気を引き締めろ、何が大切かを意識しろ。道を踏み外すな。

 ……ある程度の会話は仕方無いにしても。

【鞠】

「……私は、必要十分でいいんだ」

 それ以上を求める私を、私は赦すな。

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