7.07「復学判定」

あらすじ

「貴方の妹に、感謝するといいです」砂川さん、宿敵のお家にお邪魔します。6話ほど新キャラはそんな出てこない7話の7節。

砂川を読む

Day

8/27

Time

10:00

Stage

村田家

【鞠】

「…………」

 ぴーーんぽーーん……

 がちゃ。

【和佳】

「――!」

【鞠】

「……どうも」

 普通まずインターホンで確認しないのかな。

 まあいいけど。

【鞠】

「約束通りの時間に、参りました。紫上会です」

【和佳】

「ぅ……うん――」

【???】

「オイいつまでドア開けてんだ、虫入るだろーが」

 お……何か、おっさん出てきた。

【男】

「あ――? 誰だお前?」

 いや、実はそれなりに若い? 寝間着で無精髭、どう見ても身だしなみを整える前の状態。もしかしたらソレで外出歩ける種なのかもだが、何にしてもそのオーラで随分老けて見える。

 コレが……この子の父親、なんだろう。ああ怖い、ヤダ怖い。暴力振るわれたらどうしよ。

【鞠】

「紫上学園紫上会、会長砂川と申します。冴華さんの復学判定に参りました」

【鑼雄】

「ああ、お前さんが……コイツが世話になったなぁ」

 娘を指差す。乱暴な指差し方だな、なんて生まれて初めてな感想を持った。

【鑼雄】

「会長さん、早くあの不良品、復学させてくんね? ずっと家に居て、邪魔なんでね」

【和佳】

「ッ……――!」

 一応まだドア開いてるんだけど、これ近所の人が聞いてるかも、とか思わないのだろうか。

 勇敢なことだ。考え無しとも云う。

【鞠】

「それを見極める為に、本日参りました。原則、保護者同伴なのでご両親のうちどちらかは立ち会っていただきたいのですが」

【鑼雄】

「あー? 何だよ面倒くせえな、勝手にやりゃいーだろ。何で俺が不良品の為に時間を割かにゃいかん」

【鞠】

「一言で云えば、決まり事、だからです」

【鑼雄】

「チッ……可愛げのねえ。会長ならもっと柔軟性っての持てや」

 飽きたのか、父親は奥に引っ込んでいく。

【鑼雄】

「寝てねえんだよ、俺は。家にいっから、それで同伴ってことでいーだろ? んじゃ、アイツのこと、頼んだぜー会長さん」

 ……………………。

 あー緊張した……。

【鞠】

「ではお邪魔します」

【和佳】

「は、はい……!」

 ボロボロの子ども部屋に通される。

【冴華】

「…………」

 復学直前の女子の顔とはとても思えない。

 何も知らなければ即行で停学延長してたところだ。

【鞠】

「……父親は、寝ましたか?」

【和佳】

「はい……どこか出掛けてて、朝に帰ってきて、お酒の匂いしてて……」

【鞠】

「無職ということですけど、昼は何やってるんですか?」

【和佳】

「寝てるか、お酒飲んでテレビ見てます……」

 屑だな。

【和佳】

「……嫌い。ホントに、嫌い……お外で酔って、そのまま帰ってこなければいいのに……」

【冴華】

「和佳。あまり他人のことを、貶める言葉を吐いてはダメ。百害あって一利ないのだから」

 え、それ貴方が云うの?

【冴華】

「……私が云っても、説得力はありませんが」

 一応、弁えてはいるのか。

 しかし以前会った時よりも、また生気が失われている。何があったか……なんて、もう知っちゃってるんだけど。

【鞠】

「まず、復学判定の方を済ませましょう。といってももう処理はしちゃってるんですけど」

【冴華】

「……え?」

【鞠】

「2学期から復学しなさい。あと、実力試験も受けなさい」

【冴華】

「ッ――な、何で!?」

 思わず立ち上がりそうになっていた。

 まあ、立てなかったけど。足はまだ治ってないらしい。

【冴華】

「停学処分から復学した者は、年度が変わるまで実力試験は受けられない筈――」

【鞠】

「確かにそうですね。原則そうです。でも、私が云うんだったらその程度簡単にひっくり返る」

 それに、この規定は紫上会メンバーがよくよく注意して漸く気付くってぐらい存在感薄いやつだし。この人が実力試験を受けていたって一般学生は「あ、遂に復学したんだ」ぐらいの印象しか持たないだろう。

【鞠】

「そこの机に実力試験の過去問や問題集が置いてあるのを見る限り、夏休みそれなりに勉強してたんでしょう? 期末試験で恩恵を獲得する為に。ならその成果、是非とも実力試験の方で発揮してください」

【冴華】

「……私が、実力試験で恩恵を獲得できるようにする為に、特例処置を起こすっていうんですか……? 貴方に、一体何のメリットが」

【鞠】

「メリットは無いですが、こうしないと非常に面倒なデメリットが発生するようになったので。貴方の妹に、感謝するといいです」

【和佳】

「……!」

【冴華】

「……そうか、そういうことか……」

 妹が、何をやったのかについてはもう知ってるようだ。

 全く嬉しそうじゃない。どちらかというと、悔しいって感じの露骨な表情だ。

【冴華】

「……和佳が、貴方から借金することに成功したことで、これからもあの男が和佳に、私の代わりに貴方からお金を巻き上げるように命令する……コレを防ぐために」

【和佳】

「ぁ……」

【鞠】

「私に限らず、紫上会に入るような連中は恩恵で皆お金持ちです。色んな人にお願いすればするほど、ヤバい事件になっていきます。当然、妹さんの受けるダメージも計り知れない――」

【冴華】

「ッ――」

 ――頭、下げてきた。これは、土下座だ。

【鞠】

「え」

 正直、唖然とした。思考も一時的に飛ぶ破壊力。

 似合わないにも、程がある姿だった。

【冴華】

「――申し訳ありませんでした。妹が大変なご迷惑をお掛けした上に、かような寛大な処置……詫びても詫びきれません――」

【和佳】

「ッ――も、申し訳、ありませんでした……!」

【鞠】

「あ、いや、いいです、そういうのいいですから……」

 謝罪とかほんと止めてほしい。

【鞠】

「……兎も角、これで復学判定の話は終わりです。頭上げてください、こっから私的には本題なので」

【冴華】

「え――」

 目の前に、じゃらじゃらと、この部屋来る前に回収しておいたものを転がす。

【冴華】

「それは……ッまさか――」

【鞠】

「私自身趣味悪いとは思いますが。貴方ならば、これが何かが理解できますよね」

 実際にコレのお陰で地獄に堕とされたわけだし。

【冴華】

「……何の、目的で」

【鞠】

「顔に痣、増えてますね」

【冴華】

「……ッ……どうやら…私が思ってたよりも早く、理解してくれていたようですね……」

 ……そのリアクション。

 今から私が云おうとしてることを、まるで期待していたかのようだ。

 まあそっちの心情とか関係無しに私は追及しなければいけない。

【鞠】

「貴方ですよね。うちの副会長を脅すような真似をしたのは」

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