7.34「残滓」

あらすじ

「無論、僕に命令する権利などあるわけがありません」四粹くん、久々に登場。今回の主役なのに出番が少ないので暫く四粹さんのお話な7話34節。

砂川を読む

vsshisui

Stage

水上区

【四粹】

「……やっと……見つけました……」

 あらゆる視線を回避し。

 自分に近付けさせることを赦さず。

 動き回る彼らに、僕から接触することは想像通り、極めて困難だった。

 片脚の自由が利かないのもあったのだけど……兎も角、発見した。

【四粹】

「……鎌仲さん」

【???】

「――見つけられる、とはねぇ」

 恰も追い詰められたように、足を止めたまま。

 だがそうじゃない。彼らならば、負傷している僕を撒くことなど目を瞑っていても安易に為すだろう。

【???】

「それに、一部下の名前をまだ覚えてるとは。相変わらず若頭は記憶の天才だな」

【四粹】

「…………」

【???】

「学習だけじゃない。それを身体に打ち込んで、すぐ実践へと持ち込める。その松葉杖が無きゃ、もっと速くなるんだろ? 俺たちですら、敵わない……数年経って素人になってるかと思えば、寧ろ覚醒している。天賦の才――頭はただ親贔屓してたってわけじゃなかったか」

【四粹】

「……貴方たちが来たのは……僕に、用があるからでしょう。僕は此処に居ます。そして逃げません――此処ならば目立ちませんから」

【???】

「…………」

【四粹】

「用を済ませて、この大陸から身を引いていただきたい」

【???】

「…………ふふっ……今更――」

【四粹】

「…………」

【???】

「――今更何の権利があって俺たちに指図してんだよっ!!!」

 確かに、その通りだろう。

 しかし引くわけにはいかない。

【四粹】

「無論、僕に命令する権利などあるわけがありません。僕は……家族を、殺したのだから」

 最大の戒めを犯した僕は。

 裁かれなければならない。

【???】

「……そんなことを云う為だけに、態々俺たちに接触してきたわけじゃないよな」

【四粹】

「僕の在処を突き止めて、僕を処しに来たのでしょう。ならば、何処にでも連れ、煮るなり焼くなり好きにしてください。僕は抵抗しません。だから……彼らには、手を出さないでいただきたい」

【???】

「…………」

【四粹】

「彼らは、全くの無関係ではないですか。村田冴華さんも、関係ありません。貴方たちまで……こんな僕のように、オメルタを冒さないでほしい」

 頭を下げる。

 せめて……彼らが「家族」の輪から外れてしまわないように。

 僕を殺す為なんかに、無意味なリスクを懸けないように――

【???】

「――くっくくく……!」

【四粹】

「……?」

 だが……それを聴いて、彼は笑い出した。

【???】

「ははははは……!! そうか、そういうことなのか、本当に……足洗ったってかぁ~? ……間抜けだなぁ、若頭!!」

【四粹】

「……どういう、ことですか――?」

【???】

「いいか若頭、よく聴け……俺たちはもう、シナじゃねえ」

【四粹】

「え――」

【???】

「分かんねえか? 分かんねえよなぁ、頭が死んですぐ逃げた不孝者には!! あの人が死んで、すぐシナは壊滅したんだよ!!」

 ――それは。

 すぐには呑み込めない、僕の把握を覆す巨大な、事実だった。

【四粹】

「壊、滅……? な――何故!! あれほどの……組織が……!」

【???】

「俺たちにとっての心臓は、頭だったからに決まってんだろ!! アンタがあの人を殺したんだ……そうしてシナは、最早生きる道を失った……地下三帝に葬られたんだよ!! 生き残ってるのは、もう……俺たちぐらいだ……」

【四粹】

「…………そんな……」

 あの人たちは……

 もう、この世に、居ない――

【???】

「最早、俺たちはただの残滓……シナとして、家族一丸の力で軈て地下三帝の座にまで登り詰める……ただ只管にその道を進んできた俺たちが、今これ以上何ができる? いや……できない、俺たちは、残滓だからだ」

 残滓。

 シナではない。

 じゃあ――じゃあ、この人たちは――

【???】

「なら、生きているならせめて生き霊になり……シナを、ここまで落ちぶれさせたら根本原因にッ――報復するしか、ねえだろ……!!」

【四粹】

「まさか――紫上学園で、彼女を使い見せしめたのは――」

【???】

「無論、報復!! それだけだ!! だが……ただの報復じゃない、若頭、アンタを最高に絶望させてから、殺すッ!! アンタがこの大陸で手に入れたもの全てを、今度は俺たちがッ、ぶっ壊してやるんだよ!!!」

【四粹】

「ま……待って、ください! それは……オメルタに抵触している!! それは全くシナの報復やりかたではない――!!」

【???】

「同じ事を云わせんなや……シナは、もう、死んでるんだよ!!!」

【四粹】

「――――」

 彼らは――

 まだ、僕を殺さない。

【???】

「幾ら若頭が優秀でも……こっちは11人居る。殺しの基本は連携だ。ほら、若頭もッ速く誰かの手を繋げよ……!! ソイツから、俺たちが貫いてやるから!!」

【四粹】

「僕を――僕だけを、殺してください!! 鎌仲さん!!」

【???】

「……駄々こねるとは良い身分だな若頭。それを続けるならそれでもいいぜ、俺たちは、勝手に動く。ソッチが選ばないなら、勝手に選ぶ。そうだな……まずは、砂川鞠だ」

【四粹】

「――!!」

【???】

「アンタも気付いてるだろうが、随分と俺たちのことを探し回ってる。肝の据わったお嬢だぜ。お陰で……風間が、やられちまった。だから、まずは風間の弔い合戦といこうじゃねえか。その次に――六角碧叉! 菅原二葉! 松井信長、茅園深幸、堊隹塚笑星!!」

【四粹】

「ぁ――ぁぁ――」

【???】

「アンタの隣を歩いてきた奴らを、アンタの居場所になった紫上学園を……1人残らず!! 串に刺して、アンタに見せてやるよ!! くくく……くははははああははは――!!!」

【四粹】

「ま――」

【???】

「あばよ、若頭!! 俺たちの断罪を――楽しめや」

 ……追わなければ。止めなければ。

 ――どうやって。

【四粹】

「…………」

 無い。

 僕に、彼らを止める力は……

 資格は無い――

【四粹】

「ッ……ッッッ――」

 雨が、降る。

 風が音を鳴らす。

【四粹】

「――アアァアアアアアアアアアアアアアア――!!!!!」

 闇の空に、叫ぶ。

 でもすぐに掻き消える。

 何も起こらない。

 何もできない。

 僕には。

 何もない――

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