7.28「新しい父親」

あらすじ

「いきなりそんなことを云い出す人を……私は、信じていいのでしょうか」パパ様、奇行が目立ち始めます。作者の父親は作者的には世界屈指といっていいほど強い人な7話28節。

砂川を読む

Stage

霧草総合病院 冴華の病室

【和佳】

「お姉ちゃん!!」

【冴華】

「早いですね、和佳。朝ご飯、しっかり食べてきたんですか?」

【和佳】

「うん! 和佳、早起きしたんだ。お姉ちゃんに早く会いたくて」

【汐】

「…………私も鞠にあんなこと云われたい」

【鞠】

「永劫無いので諦めてください」

 こんな朝早くにこの大勢で押しかけちゃって大丈夫なんだろうか。

 傷に影響したら流石にいたたまれないんだけど。

【行】

「……裁きに遭った割には、生還した……そんな例は、聞いたことがありませんね」

 楽しげな姉妹から距離を取って、仕事人は興味深げに姉を見ていた。

【鞠】

「その時の写真は見たことありますか?」

【行】

「ファーストクライアントから拝見しています。いまや伝説と云われていますが、その通りの見事な捌き。しかし……殺してないなんてミスは有り得ません」

 まあ、それは私も甚だ同感だ。

 彼女が生きているというのは、本当におかしい点なのである。

【鞠】

「殺し屋があんな完璧に必殺決め込んでるのに殺し損ねるって凡ミスは逆に現実的じゃない」

【汐】

「それに、幾ら何でもあんな即刻気付かれて救急車呼ばれるような場所をどうして選んだのかが不思議です」

【行】

「どう思いますか、お嬢」

【鞠】

「……矢張り、彼女本人を裁くというものより、別の重大な意味があると考えるべきです」

【行】

「私も、そう考えています」

 プロが同意した。何この心強さ。

【冴華】

「その……鞠、さんっ」

 と、話し込んでたところ、姉の方が私を呼んで――

 鞠さん!?!?

【鞠】

「え――」

【冴華】

「い、いやだって、砂川~だとややこしいじゃないですか」

【和佳】

「和佳は、鞠様って云ってるよ」

【冴華】

「そういう、わけなので……名前呼びをせざるを得ないので」

【鞠】

「…………何ですか……」

 これが現実。受け入れて先に進もう……。

【冴華】

「大した、ことではないのだけど……早朝に、貴方の……今は私達にとってもですが、父親が私を訪れまして」

【鞠】

「え――」

【汐】

「あら、パパ様が」

 更に早朝に押しかけてる人が居たのか。

 だから私達が来ても普通に迎え入れられたのかもしれない……いやパパ、最早不審者と誤認されかねないから気を付けて!

【汐】

「何の話をされたんですか? あの人」

【冴華】

「……昨夜、和佳をフラッシュバックで苦しませたことを詫びてきました」

【和佳】

「え……? ふら――?」

【鞠&汐】

「「…………」」

 うーん行動が読めない……。

 メイドも苦笑するレベルだ。

【冴華】

「……正直、多少警戒はしていたんですが……何と云うか、あの方が何を考えているのか、今まで私が接触してきた人とは違い過ぎて、動揺しました」

【鞠】

「まあ、あの人は私もよく分かりません」

【冴華】

「父親じゃないんですか?」

【鞠】

「父親ですが、たいして知ろうとも思ってこなかったので。ただ……貴方や貴方の嘗ての両親みたいに、他人を傷付けて楽しんでる姿は一度も見たことないです」

【汐】

「寧ろ子どもやメイドに土下座してるところは多く見れます」

 それは云わなくていいことだと思う。

【冴華】

「……彼は、少なくともあの2人よりは親として私達に認められるよう振る舞いたい、家族としてあれるよう頑張る、と云いました」

【和佳】

「…………」

【冴華】

「……全くの他人だった私達に、兇悪なレッテルを持つ私達に、いきなりそんなことを云い出す人を……私は、信じていいのでしょうか」

【鞠】

「そんなの私に云われても」

【冴華】

「貴方に従います。貴方の云う事ならば」

 流石。

 勝者のロジックの使い方が本当上手。

【鞠】

「……態々、露骨に嫌悪して空気を悪くする必要が、貴方たちには無いでしょう? まだ本格的に共同生活してるわけでもないし、その時になってから考えればいいと思いますが」

【冴華】

「……何と云うか、第三者みたいな回答ですね」

【鞠】

「主観で語られるよりは便利な意見でしょう」

 陳腐にもなるけど。

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