7.20「砂川和佳」

あらすじ

「いっぱい、言葉くれた。手を差し伸べてくれた」砂川さん、新たな家族とお喋り。あれ、シナの話どこいった? ってなることしばしばな7話の20節です。

砂川を読む

Time

19:30

Stage

砂川家

 今日もしっかり企業さん達と打ち合わせした。

 加えて周囲への警戒、通知への気配り……いつもよりもずっと、疲れた。

【鞠】

「先輩はコレを毎日やってるんだもんなぁ」

 せめて修学旅行期間ぐらいはしっかり羽休めしてもらいたいものだ。

【鞠】

「ただいま帰りました――」

【和佳】

「……!!」

 玄関開けたら、即少女の為の壁にされた。

【ババ様】

「おお、ビックリしたの」

【鞠】

「……?」

 背中の方で縮こまっている。完全に盾扱い。

 一体この家の何にそんな怯えたのか、現物を確認してみる。

【兵蕪】

「……パパは、パパなのに……何でも云ってほしいだけなのに……!」

【汐】

「はぁ、はぁ、ダメですよぉ兵蕪様ぁ、和佳ちゃんは父親にトラウマあるんですからぁ、はぁはぁ――」

 パパが打ち拉がれていた。

 あとメイドが手をワキワキさせて過呼吸になっていた。

【ババ様】

「主原因はあの2人っぽいの」

【鞠】

「何されたんですか」

【和佳】

「……パパって呼んでって……お姉ちゃんって呼んでって……」

【鞠】

「…………ふむ」

 奴ら阿呆か。

【兵蕪】

「ゲゲッ、ま、鞠ちゃん――!? このタイミングで鞠ちゃん!?」

【汐】

「あぁああ、鞠と和佳ちゃん、2人の妹が並んでるぅぅぅ……」

【鞠】

「……見損ないますね」

【兵蕪】

グッッッッハ――!!?(←倒)

【汐】

お姉ちゃんをそんな眼で見ないでぇ~~~(←喜)」

 取りあえずパパは倒した。

 メイドは相変わらず楽しそうだが、相手にするだけ無駄だ。逃げるが勝ち。

【鞠】

「私の部屋に行きましょう」

【和佳】

「は、はい……!」

 痙攣してる2人を放置して寝室へと向かった。

Stage

砂川家 鞠の寝室

【鞠】

「……まったく、あの2人は」

 パパは兎も角として、メイドは事情をしっかり知ってる中でのあの行為。流石、自己中心的メイド。

【鞠】

「今日は、何か変わったこと、ありましたか」

 鞄を机に置いて、振り返る。

【和佳】

「……えっと……」

 何かあったか。

【鞠】

「何でもいいですよ。話すか話さないか含め、すべて貴方の自由です」

【和佳】

「…………(こくっ)」

 2人で床に座り、私は疲労の波に意識をどんぶらこされながら真昼の警戒態勢を解いていく。

 一方のこの子の緊張は、どうだろ、昨日に比べて溶けただろうか。あの2人のお節介が余計な影響与えてなきゃいいけど。

【和佳】

「……その、和佳……」

【鞠】

「はい」

【和佳】

「砂川…和佳に、なりました……」

【鞠】

「…………そうですか」

 それは随分凄まじい変化だ。

 もうその辺の手続き、終わらせたんだ。流石パパ、気合いを入れた仕事のスピード段違い。

 ということは――

【鞠】

「貴方は砂川和佳で……貴方の姉は、砂川冴華になるんですね」

【和佳】

「ん……(こくっ)」

【鞠】

「…………」

 マジかー……。

 アレが私の家族になるとか……4ヶ月ほど前の私は果たして想像できただろうか。

 思えばあの時私が停学処分下してなければこんな展開にもならなかっただろう。それを考えたら、私の自業自得。先輩は笑ってそう評価しそうだ。

【和佳】

「だ、だから……その、ごめんなさい……」

【鞠】

「別に謝られても……貴方にとっても半分強制された流れでしょうに」

【和佳】

「…………」

 別に彼女はこうなることを期待していたわけじゃない。

 私に連れられて、パパに迎え入れられて。この子の意思は何処かに置き去りされてるまま。

 そしてこの子は……

【和佳】

「……どうしたら、いいんですか」

【鞠】

「何がですか」

【和佳】

「お父さん、居なくなったのに……また、お父さんが現れて……」

【鞠】

「…………」

【和佳】

「要らない……お父さんなんて、欲しくない……けど」

 この子は、家族という括りに相当過敏になっている筈だ。

 この子が必要としているのは、姉だけ。

 それ以外は全員自分たちを助けてくれない「敵」。なら当然、他人でしかない。

【鞠】

「……家族とは結局他人でしかない」

【和佳】

「え?」

【鞠】

「だから他人同様に、仲良くなれることもあれば嫌われることだってある。どう利用し扱うか、利用されることを良しとするか、結局そこに家族と非家族で違いは無いんじゃないかと」

 ……また、変な云い回しになってないだろうか。

 自分の行動指針すら不明確なままに、口は勝手に走り転ける。

【鞠】

「だから、別に居なくていい。要らないなら捨てればいい。……それが中々思い通りにいかない世の中ですけど、今貴方は、貴方の姉はそれが叶う環境に移りました」

【和佳】

「…………」

【鞠】

「もう縛り付けていた怪物たちは居ません。この砂川家に深刻なダメージを齎さない程度に、色々好きにやればいいって、私は思いますよ。アフターケア的な意味で暫く貴方も学園をお休みしてもらいますけど。そんなわけで……今は、何も考えなくていい、ゆっくりすればいいと思います」

 それを云う、私のメリットは果たして何処にあるのだろう。

【和佳】

「…………」

【ババ様】

「お」

 見つからないまま、また現実に眼が戻る。

 暗い顔だった少女は、少しだけ笑みを取り戻していた。

【鞠】

「……どうしました?」

【和佳】

「……誰も、助けてくれなかったの。来てくれなかった。だから……」

【鞠】

「…………」

【和佳】

「いっぱい、言葉くれた。手を差し伸べてくれた。鞠様は、和佳達の味方だって、思えます」

 ……人を救い起こすような、そんな頑丈な言葉を吐いた覚えは無いのだけれど。

 どうも、私はこの子に懐かれてしまっているようだった。

【ババ様】

「鞠」

【鞠】

「何ですか」

【ババ様】

「ワシは今ちょっと汐の気持ちが分かったぞ。コレ可愛い」

【鞠】

「……そうですか」

 取りあえず、この子がお姉ちゃんアレルギーを発症してしまわないようにメイドに気を付けておこう。

 そう結論を着陸させてこの夜を終えるのだった。

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