7.12「村田家、終焉」

あらすじ

「ねえ、もう酔いも醒めたでしょー? 貴方は、最初っから独り」メイド、お仕事頑張ります。だけどまだまだ7話は続きます。具体的にはあと30節ぐらい続いちゃう12節。

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vsother

Stage

村田優可事務所

【優可】

「……は? 冴華が?」

【教員】

「― はい。一体どうして、あの時間帯あの場所で、彼女が被害に遭ったのか、何もかも分かっていない状況です……彼女の容体も含めて ―」

【優可】

「……そうですか。冴華は……どこの病院に?」

【教員】

「― 霧草総合病院に。恐らくまだ面会は不可能でしょうが…… ―」

【優可】

「ご連絡ありがとうございます。私も時間を見つけて、娘に会いに行きます。では失礼」

【教員】

「― え、ちょ ―」

【優可】

「……………………」

【汐】

「随分落ち着いてますねー。娘さんが大変な目に遭ってるのにー」

【優可】

「ッ――誰ですか!」

 事務所には、誰も居なかった。というか普段からこの場所で働いているのはこの人だけなようだ。

 まあ、予想はしていたけれど。此処こそが、彼女の本懐。他人を長くこの場所に拘束するなんて、怖くてやってられないだろう。

【汐】

「それとも……予想通り?」

【優可】

「誰だと問うてるのです。私はこの場所に、貴方を招いた覚えは一切ありませんが」

【汐】

「まあまあ、いいじゃないですか村田優可さん。どうせ残り僅かな人生なんですから、私と一緒に楽し~いお喋り、してましょ」

【優可】

「……警察に、通報しますよ」

【汐】

「あらら、それは困っちゃいますねー」

 其処にあった、多分招待された依頼客だけが座れるソファに、ドカンと座り込む。

 ……あんまり高級じゃない。噂通り、お金の使い方には厳しいようだ。

【優可】

「そこに座っていいとも、入室することも、私は許可していません。即刻、退出しなさい。でなければ――」

【汐】

「大蛇組でも呼びますか?」

【優可】

「…………何者ですか、貴方は」

【汐】

「自慢の情報網でも使って調べればいいんじゃないですか? まあ、そう簡単には出ないでしょうけどねー。私、足跡残さないの得意ですし。現に貴方は私に気付けなかったようですし」

【優可】

「……ッ――!」

【汐】

「遅い――アウトです」

 手元のコンピューターに触れることも、この事務所から逃げることも、赦さない。

 手元のアルスでポチッとやった瞬間――

【優可】

「――があぁああああ……ッ――!?」

 私的には、軽め、な電流がお手元のコンピューターから放出される。

 崩れ落ちて、私の視界から消えていく。手がデスクに這いつくばろうとして、でも痺れて上手くいかず結局落ちていく光景はちょっと面白かった。

【???】

「もう入っていいかー?」

【汐】

「ええ、いいですよーマスター。多分もう無力化できましたし。好きなだけ調べちゃってください」

【???】

「おう。じゃあ家宅捜索でもさせてもらうとするかのー。拘束もしとけー」

 物騒な方々が、事務所を漁っていく。

【優可】

「ッ……ま、ちな、さい……一体、誰の許可を得てッ――!!」

 拘束具を着けられて引っ張られてきた母親さんが、我々を睨み付ける。

 うんうん、良い眼力。お姉ちゃん風ミートスパゲティを振る舞った時の鞠のリアクション並みに怖い怖い。

【汐】

「さあさ、お喋りの続きをしましょー。そこのソファでも座って座って」

【???】

「儂も少し疲れたから、座らせてもらうとしよう。よいかな、汐?」

【汐】

「いいですよー。もう此処は私のお家みたいなものですから」

【優可】

「な――何、云って――」

 投げられるようにして、対面のソファに着地する母親さん。

 流石の貴方も、僅か1分でこんな状況に陥っては困惑するかぁ。私も困惑するだろうな、想像したら。

【汐】

「許可、でしたっけ? 抑もこのケースの場合、誰の許可を得ればいいんでしょうねー。マスター」

【???】

「このケースというのが果たしてどれを指してるのか分からんが、まあ普通に考えたらこの事務所の所有主には確認した方がいいだろうな」

【汐】

「じゃあ問題ありませんね、だって此処はもう一峰がゲッツしてますから」

【優可】

「ッ――!!? い――一、峰――!?」

【汐】

「……お金も、権力も、全てにおいて優可ちゃんを上回ってるお家ですねー。色んな意味で、お・う・ち」

【???】

「富豪の買い物はワケが分からんな。儂ら普通のサラリーマンには理解できん」

【汐】

「でも、流石に勝手に人ん家乗っ取るような泥棒行為は、一峰あんまりやりたくありません。我らがパパ様の努力は現在進行形です。それに泥を塗ることは、私達もあんまりしたくなーいわけです」

【???】

「となると、泥棒じゃなくなる、何か真っ当な理由が欲しくなるのー」

【汐】

「じゃあ警察に相談だってことになりますよね。でも残念、警察は相談に乗ってくれません。抑も今までこんな悪女がいるんだーって色んな考え無しな被害者さんが押しかけたにも関わらず、警察さんは自動で優可ちゃんを擁護します。このゲームにおいて、警察さんは残念ながら優可ちゃんの所有物。さあ、どうしましょうか?」

【???】

「警察じゃない警察を立てればよかろう」

【汐】

「正解。ということで、この人達を呼んだわけです」

【優可】

「ま…さ、か――」

 勝手に事務所の物を押収していく彼らのユニフォームを見て、やっと気付いたみたいだ。

 彼女でも手に入らなかった組織。

【優可】

「莫…迦な……ッ連中は――民間の事では、動かないッ――喩え、一峰だとしても……!!」

【汐】

「ですねー。幾らお金と権力振りかざしても、最高権力みたいなとこですから動かないですよねー。でも、人脈使うと案外動いてくれたりするんですよー」

【???】

「そんなことやれるの汐ちゃんぐらいだと思うがな!」

【汐】

「因みに無償です。優可ちゃんじゃあ、この人の動かし方、理解できないと思いますけどねー」

【優可】

「――――――――」

【汐】

「ああ因みに、大蛇組さん筆頭の優可ちゃん親衛隊の皆さんは呼んでも来ないと思いますよー。誰も、誰ひとりとして、助けに来ないかと。何でか、分かりますか?」

 ああ、美人な顔がすっかり崩れちゃって。悪い気分になっちゃう。

 でも、続けるー。

【汐】

「それなりのお金とー、私達がこれから貴方たちを優可ちゃんから護ってあげるよーって言葉をあげたら、皆すっかり尻尾振っちゃってー。怯えてたんだねー、怖かったんだね~……可哀想だから、だいぶお金使っちゃったけど、一峰が皆買い取っちゃいました☆」

 全部私の独断だけどね。

 いやー何て楽しいお買い物。兵蕪様は笑って赦してくれそうだけど、鞠には後で怒られそう。

【優可】

「な――な――ッ!!?」

【汐】

「……ねえ、もう酔いも醒めたでしょー? 貴方は、最初っから独り。これまでも、そして……これからも、生涯ずっと独りぼっち」

【優可】

「!!?!?!!?」

【汐】

「負けちゃったねー優可ちゃん? どうする? 法の下で皆に見下されながら裁かれちゃう? それとも法の外で、誰にも知られることもなく惜しまれることもなく捌かれちゃう? 大蛇組の皆さん、張り切ってるけど」

【???】

「彼らの前でそんな会話しないでもらいたいがな。警察に引き渡す準備はもう済ませとるのに」

【汐】

「決めるのは勝者ですかね。私……じゃなくて、鞠ってことにしときましょうか。依頼主ですし」

【優可】

「――――――――」

【汐】

「……さて。皆さんの作業が終わるまで、もうちょっとお話してましょーか。貴方の……愛娘について」

 アッチも、もう終わってる頃かな?

vsother

Stage

村田家

【和佳】

「お姉ちゃん、何処なの!! お父さん!!」

【鑼雄】

「ああ? 知らねえよ、逃げ出したんじゃねえのかお前を置いて!」

【和佳】

「お姉ちゃんは、そんなこと、しない! 靴だってそのままだし!! また何か、お姉ちゃんに何かしたんでしょ!! ねえ!!」

【鑼雄】

「……靴がそのまま、だぁ? ……確かに妙だ。そういや優可、確かアイツの名義で――まさか――」

【和佳】

「ぇ……?」

【鑼雄】

「……ああクソ、悪くねえ生活だったが、潮時か!」

【和佳】

「お父さん……? どういうこと、何を知ってるの……?」

【鑼雄】

「うるせえ、ほんと最後までほぼほぼ役に立たねえガキだったなお前は。……いいこと教えてやるよ、お前の姉ちゃんはな? 裁かれたんだよ」

【和佳】

「……裁かれた?」

【鑼雄】

「切ねえラストだったなぁ、金も稼げず、学校にも行けず、妹を護れず、結局最期までなーーんにも報われずよぅ!」

【和佳】

「ッ――!!」

【鑼雄】

「そうだな……冥土の土産、で届くか分かんねえが……お前を何発か、殴っておくか。きっと、喜ぶぜーアイツも!!」

【和佳】

「……!? い……イヤ――」

【鑼雄】

「おーい逃げんなよ!! お姉ちゃんの為だろー? お前がずっと、ずーーっと抑圧し続けてきた、可哀想なお姉ちゃんに、最期ぐらい詫びでも入れたらどうだよ!!」

【和佳】

「ッこ、来ないで……お姉ちゃんを、語らないで――!!」

【鑼雄】

「……お前は、姉よりも、親不孝だなぁ。まあ当然か、娘じゃねえもんな、妹じゃねえもんなぁ、お前は――!!! アア!!?」

【和佳】

「親、じゃない……オマエなんか、父親じゃない、母親もいないッ――!!」

【鑼雄】

「……ああ?」

【和佳】

「オマエ達なんかッ、要らない!! 親なんて――和佳は、和佳はお姉ちゃんだけ居ればそれでいいもん――!!! オマエ達なんか、消えちゃええぇえええええええ――!!!!」

【鑼雄】

「…………云うじゃねえか……小切手1枚しか持って帰れない無能が、随分痛快に叫ぶじゃねえかよ、いっそ羨ましいぜ……」

【和佳】

「……ぇ……?」

【鑼雄】

「だがな――そういうのは、俺に勝ってから!! ほざけっつってんだよ――ッ!!!」

【和佳】

「ヒッ――!?」

【???】

「……何やってんだか」

【鑼雄&和佳】

「「……!?」」

【玖珂さん】

「よう、村田さん。随分悠長にやってるじゃねえの?」

【鑼雄】

「……人ん家に勝手に上がり込んでくんなや、玖珂さんよぉ」

【玖珂さん】

「折角心配になったんで来てやったっていうのに。それに、もう此処は実質お前さんの家じゃねーよ。逃げたいなら早く逃げな。まっ、逃げても……十中八九、逃げられねえだろうがな」

【鑼雄】

「おいおい……どうなってんだ、クソッ!! 優可は何やってんだ!!」

【玖珂さん】

「ご婦人なら5分前ぐらいに、アジトを攻め込まれて終わった。ご婦人が築き上げてきた軍勢も、一峰が全部取り込んじまったから、あとはお前さん独りかな?」

【鑼雄】

「ッ――一峰、だと……アイツ莫迦か、そんな化けデカいモンに喧嘩売りやがって……ッ!!」

【玖珂さん】

「お前さんも大概莫迦だろ、一峰の令嬢をなかにあげた挙げ句、この可哀想な姉妹たちと密談させる始末。こうなったのも全部、お前さんの失態だと俺は分析するがね」

【鑼雄】

「――砂川――そうか、アイツはあの砂川兵蕪の――」

【玖珂さん】

「で、いつまで此処に居る気だ?」

【鑼雄】

「チッ――」

【玖珂さん】

「……あばよ、夢破れの落ち武者。さて、怪我は無さそうだな」

【和佳】

「…………」

【玖珂さん】

「よかったな。君のお望み通り、お父さんもお母さんも、居なくなっちゃったよ。まあ、お姉ちゃんについては……分からんがな」

【???】

「――村田鑼雄、貴様を拘束する!! ……居ないか?」

【玖珂さん】

「その人ならついさっき走り去って行ったよ。血相変えて」

【???】

「貴方は……?」

【玖珂さん】

「ご近所のおじさん。ヤケに凄い怒鳴り声が聞こえてきたんで、様子見に来たんだ。じゃ、俺は帰ろうかな。元気でやれよー、和佳ちゃん」

【和佳】

「――――」

【玖珂さん】

「……さて……祭り騒ぎと、いきますかね――」

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