6.07「これからの砂川」

あらすじ

「君らは……充分、その枠内に居るべき存在だ」先輩、喋り倒す。本編では砂川さんを凌ぐお喋り及び思考量ですがどうぞ本編も宜しくお願いしますな6話7節。

砂川を読む

【謙一】

「で、砂川のことだけど、どうよ?」

 話が戻った。戻ってほしくなかったものである。

【笑星】

「凄い!!!」

 斬り込み自爆員の雑務が矢張り真っ先に回答した。でもそれは果たして回答になってるのだろうか。先輩は堪えてないようだけど。

【謙一】

「どう凄いんだ?」

【笑星】

「えっと、学園中の人達に嫌われまくってても一向に介さなくて、試乗会の決めたことに従わない人達をバッサバッサ切り捨ててたとことか!!」

【謙一】

「…………へー」

 歴史の授業だったら即刻黒歴史人物認定な説明だった。

【謙一】

「他には?」

【深幸】

「……体育祭で長距離走るってなって、すっげえ練習してたっす。マジやばかった」

【謙一】

「……体育祭www」

【鞠】

「おい先輩こら」

 やめて、思い出さないで。私も思い出しちゃうから。吐き気が。

【謙一】

「あとは?」

【信長】

「……甲子園で、ファールボールが顔に激突しても、ずっと俺を応援してくれました。とても……心強かったです」

【謙一】

「え、俺ソレ知らない、お前また怪我してたの??」

 書記また余計なことをッ!

【謙一】

「顔面にボール飛んできたら即刻眼科行けよ、お前ただでさえ――」

【鞠】

「別に異常無かったからいいでしょう! ていうか眼科で散々怒られたんで、もう説教は結構です」

 はぁ……何で私の話題でそんな盛り上がれるかな。てか本人の前でほんとやめて。

 そんな地獄の時間が、まだまだ続く。

【謙一】

「にしても俺、もっと孤立無援な日々過ごしてんのかって心配してたんだけど、話聞く感じだとそんなでもないのかな」

【笑星】

「寧ろ、今や学園の人気者だよ会長は!!」

 莫迦にしてるのかなこの雑務。

【謙一】

「玖珂はどう考えてる?」

【四粹】

「……少なくとも、前会長が非常に会長を気に入っているようで、その影響は他の学生にも少なからずあるかと」

 客観的なコメントが返ってきた。内容量として優秀だろう。

 ただアレに気に入られてるとか最悪な表現なんだけど。別に明確なデメリットは無いにしても……変人に見られるとか、最高に嬉しくない。

【謙一】

「だってよ砂川、ちょっとは周り、信用してみてもいいんじゃねえの?」

【鞠】

「……他人の印章なんてものは少しの切欠でガラリと変わるでしょう。先輩たちも臆面もなく暴れてますし」

【謙一】

「それはスマン」

【鞠】

「不安定なものに身を委ねる勇敢さなんて、私には無いです」

【信長】

「…………」

 信用なんてできない。しない。それは書記の件で改めて決意した。

 私は、今のままでいい。

 私は先輩が今みたいに心配してくれるなら、これからもやっていけるのだから――

vsother

【謙一】

「……さて、と」

 砂川がお手洗いにいってる間、ここにはすっかり会話する仲になった俺と紫上会面子だけとなった。

 アイツにとって何のメリットも感じられない時間が続いている。気持ち早めに戻ろうとはしないだろう。

 ……この時間を待ってた。

【謙一】

「で、気になってるのは俺と砂川の関係、か」

 ……皆少し驚いてる様子だ。

 何かを慮ってか、誰ひとり話題にはしていなかった。が、言葉にせずとも、色んな情報から想いは見え隠れするものだ。4人中3人は、寧ろ露骨だったし。

 アイツはそういうのには気付かないんだろうな。視野狭いし。

【深幸】

「えっと……実際のところ、どうなんすか?」

【謙一】

「その探りを入れる意義はあるのか?」

 一応、問うてみる。

 さっきまでの会話とは違って……この領域は、極めて砂川に近いものだからだ。

 だから興味本位、程度のものでは立ち寄らせてはいけない。そういう空気をしっかり伝えるが……

【深幸】

「……そりゃ、単純に俺の……俺たちの興味なんでしょうけど」

 茅園が先陣を切った。正直な切り出し方だ。

【深幸】

「アイツが……信頼してる人なんて、初めて見たから……」

【謙一】

「…………」

 当然ながら、俺は紫上学園での砂川を、砂川の入った光景を知ることはできない。写真はネットで見たが、静止画では読み取れるものには限界がある。

 此処での言葉もまた非直接的な伝達手段だ。そして、茅園の言葉は茅園の分析でしかない。端的に分けて、彼の主観でしかない。ならば真実として全て信用することはできない。

 だが……

【笑星】

「鞠会長……俺たち全員、敵扱いしてるから……ホントはそうじゃない筈なのに、でもそれはやっぱり、俺たちは鞠会長にとって、信頼できない相手ってことで……」

【信長】

「しかし、明らかに井澤先輩は、違います。勿論、紫上学園と無関係だからっていうのはあるでしょうが……後ろから観察していて、多少は感じました。会長は……貴方には、少なくとも俺たちよりはずっと心を許しているんだ、と」

 主観者がどれだけ本気で云ってるか、ぐらいなら分かるだろう。

 興味本位を超えた感情。これから先、砂川と一緒に紫上会をやっていく為の、価値のある追究。

 勇気のある、模索だ。

【謙一】

「ありがとな」

【信長】

「え?」

【謙一】

「砂川のこと、真剣に考えてくれて。アイツを理解しようとしてくれてさ」

 ……友人ぐらいにはなってやってもいいのに。コイツら、どう見ても良い奴らじゃん。

 って、俺は云い聞かせられる立場にはないんだよな。

 アイツには一般とかけ離れた、とても重大な基準がある。ソレを作ってしまったのは、無論アイツ本人ではあるが、そうさせたのは俺たちだろう。

 結果、紫上学園にも迷惑掛けてしまっている。また罪が増えてしまったな、優海町。

【謙一】

「予想してる通り、元々アイツは友達が少ない。てか曲者揃いのあの学園では、アイツは最早視界に映らない。モブだったしな。だからアイツが転校してったことを知ってるのは……てかアイツの存在をしっかり知ってるのは、片手で指折り数える程度なんだよな」

【笑星】

「えっ、嘘!? あ、あんなに凄すぎるのに……」

【謙一】

「……それは多分、アイツが目立たざるを得ない状況に、そっちで初めて遭ったから。アイツの才能は凄まじい……が、野心とか全く無いからな」

 ……で、砂川と俺の関係、か。

【謙一】

「俺と砂川が関わるようになったのは、まあ大した切欠とか無かったんだけど、アイツの恐ろしい才能に気付いてな、面白くなった俺は悪戯感覚で色々教え込んだんよ。アイツも、暇潰し感覚で俺に附き合って、それで価値があるかも分からない努力をし続けて……アイツの現在の能力の大半はそうやって出来上がった。そういう意味で俺はアイツの師匠。その意味を含めての、先輩」

 まあ、もっと重大な要素は色々あるんだが……現状云えるのは、これぐらいだろう。

【笑星】

「鞠会長の……師匠」

【謙一】

「そんなわけで一緒にいる時間も多かったし、多分アイツが最も信頼してるのが、俺……だと思う。自惚れだったら凄く恥ずかしいけど。俺が居る限り、アイツは独りじゃない。だから……アイツはこれからも今のまま、突っ走れると思うぜ」

 ……これは、果たして良いことなのか?

【紫上会】

「「「…………」」」

 どう受け止めるか、それは各々に任せよう。ただ――

【謙一】

「だけど知り合いは多くていいと思ってもいる。勿論、良い知り合いだ」

 俺としては願う。

【謙一】

「君らは……充分、その枠内に居るべき存在だ」

【紫上会】

「「「……!」」」

【謙一】

「だから、これからもあのクッソ不器用な後輩を、見守っててくれ」

【笑星】

「う、うん……! それは、勿論!」

【深幸】

「いつかギャフンと云わせたい気もするしな」

【信長】

「何とか信頼を、少しでも取り戻さないとな……」

 人生は山あり谷あり。

 俺はちょっと山とか谷とかそんなレベルじゃないものを経験し過ぎてる気もするが……まあ適度な壁にはぶち当たった方がいいと思う。砂川にも、それは云えること。

 寧ろアイツには――俺のこの微かに抱く恐れは天感ではない。だから確定ではないが……どうか、彼らには是非アイツにとって極めて有効な存在であってほしい。

【四粹】

「…………」

 ――お前、とかさ。

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