6.37「彼らを救って」

あらすじ

「一緒に帰る。3日過ぎても、ずっと待つ」砂川さん達、消息不明。一転、かつてない緊急事態に生徒会面子が不安に駆られまくる6話37節。

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vsother

Time

16:00

Stage

ミマ町村部 役所

 中央公園で待機できる天気ではとてもなかった。

 いち早く顧問は役所に戻り、町の人々と連携を取り、生徒たちの回収に着手した。

 歯がゆいが、ミマ島の地理を把握できていない我々では効率が悪い。捜索は有志にお任せし、自分たちの生徒会が帰ってくることを祈る……。

 数十分、地獄のような時間をそれぞれやり過ごしたことだろう。

 その結果、ほぼ全ての生徒会は捜索隊と共に帰還して、役所に戻ってきていた。

 ……しかし、ほぼ全て。すなわち、一部の生徒がまだ、帰ってきていない。その中に……紫上会が含まれていた。

【大人】

「自然公園部の主要ルート、その周辺は全部見て回った。声掛けも全力で行ったが……痕跡すら見つからねえ」

【町長】

「分かりました。引き続き、捜索を続けてください。タイムリミットは遅くとも、20時。但し天気の回復が一向に訪れない場合、もっと早期に切り上げます」

【堀江】

「そ……そんなッ、まだ英さん、見つかってないのに……!!」

【杏子】

「落ち着け。まだ4時間もある。しかし、仮にそれでも見つからなかったなら、日没に加え悪天候、島のベテランといえども危険だ。二次被害を出してはならない」

【秭按】

「砂川さん……玖珂くん……一体、どこに……」

 笑星たちの話では、あの2人は一緒に行動するとしていたらしい。

 つまり、井澤さんや英さんに比べて、今も一緒に何処かにいる、と考えられる。勿論そうじゃない可能性もあるが、そのケースはあまり考えたくない。

【大人】

「――町長!」

 次々とずぶ濡れな捜索隊が入っては出ていく慌ただしい役所。

 ある意味変わり映えのしない光景……しかし1人の報告員が、異質に声を荒げて私達の前に現れた。

【町長】

「どうしました、何か発見しましたか」

【大人】

「実は――」

【町長】

「…………――何ですと!?」

【秭按&杏子】

「「……!」」

 何かの報告を聞いた町長は驚きを隠せていない。何か、あったのだろう。

【町長】

「なるほど……先の地響きはソレですか。誰も入らないとは思いますが、ただちに自然公園部を封鎖し、捜索隊の切り上げを周知してください」

【大人】

「了解……!」

 彼がまた外に出たところで、私達は詰め寄る。

【秭按】

「どうかされたんですか?」

【町長】

「……先生」

【杏子】

「捜索に関する、あらゆる情報の共有を望む。我々は彼女らの顧問だ、現状の全てを把握する義務がある」

【堀江】

「わ、私も……!」

【町長】

「……はい。もとより隠すつもりなどありません。が……非常に、云いづらいことでは、あります」

 ……………………。

     

【笑星】

「……! 姉ちゃん!!」

【石山】

「先生! どうなった!」

【苺花】

「あ、亜弥ちゃんは?!」

 ホールに戻ると、皆が駆けつけてくる。

 ……他の学校が何かを悟るよりも前に、まずは――

【秭按】

「貴方たちにも、知る権利はあるわね。こっちに来て」

【藍澤】

「え――?」

【杏子】

「あまり、動揺を拡げたくはないからな。取りあえずは、お前たちにだけは教えておくってことだ」

 他の学生の集まるこのホールから、別室へと移動する。

 それをしたからといって……伝えにくいことには、変わりない。

 それでもしっかり現状を、伝えなくてはならない。

【深幸】

「……で、どうなったんすか。捜索の状況は」

【琴竪】

「手掛かりは何か、あったんですか?」

【堀江】

「……あの子たちについての手掛かりは、何も見つかってないらしいの。ミマ島の地理に詳しい有志の人達が、漏れなく捜索してるんだけど……」

【信長】

「ッ……」

【笑星】

「お、俺たちも――俺たちも会長たちを!」

【秭按】

「それは許さないわ。余計に捜索隊の皆さんの負担を増やすだけ。ミマ島の完全初心者である私達ではどうしても無力だわ」

【笑星】

「でもッ!!」

【秭按】

「――土砂崩れ」

 ……会議室が沈黙した。

【杏子】

「……南西部の方で、土砂崩れが発生したそうだ。自然公園部の一部が含まれている。元々この島では豪雨など滅多に観測されない。それも、土砂災害を引き起こすほどの強力な雨天は、島の人間も初心者だ」

【堀江】

「だから……日没を待たずに、もう、捜索隊を引きあげるって町長さんは決めたわ……こっから先は、闇雲に動いたら「犠牲者」が増えていくだけ」

【井伊】

「ぎ、犠牲者って! まだそうと決まったわけじゃないでしょ!! なのに――」

【石山】

「ココア、しゃーねえよ」

【井伊】

「ッ――!」

【藍澤】

「石…山……? 何を云ってるんだ君は――」

【石山】

「島の上級者さんたちが、これ以上はもうダメだ、って云ってるんだ。ただでさえ無理云ってんだ、死にに行ってくれ、なんて云えねえよ」

【信長】

「石山……」

【琴竪】

「珍しくこれは正論です。ユラ書記」

【藍澤】

「ッ……だが――! それで大人しく納得していろとはならないだろう、英くんの危機だッ」

【井伊】

「そうですよ、何とか、タマ先輩を助けないと――」

【石山】

「こっからどうするんすか、俺たちは」

【秭按】

「……町長からの勧告に、従うつもりでいます。この島で大きな土砂災害が起きたのは未知的で、ここからどうなるか分からない。島の船を全部出すから、一刻も早くこの島から脱出すべきだと」

【深幸】

「脱出……!? つっても、波も荒れてるだろこんな風強けりゃ!!」

【杏子】

「それが、どうやらそうでもないみたいでな。そこが本当に不可解なんだが……兎も角、無事な奴はさっさと帰らせる。島民はミマキの結びと共に居る、と云ってるがな」

【石山】

「まあ、そうした方がいいっすね。俺らは帰らないけど」

【杏子】

「は?」

【秭按】

「何を云ってるの……?」

【石山】

「だって、先に帰ったら絶対英に怒られるし」

【藍澤&琴竪&井伊】

「「「……!!」」」

【堀江】

「……石山くん……」

【石山】

「俺たちは、この島に、この合宿に、レクリエーションに、団体戦で臨んでるんだ。だったら終わるときも一緒だ。一緒に帰る。3日過ぎても、ずっと待つ」

【藍澤】

「…………まったく、たまーにこういうところがあるから、会長は失脚せずに済むんでしょうね」

【井伊】

「あと、タマ先輩が余計に張り切っちゃうんだと思います。カッコ良いこと云ってるけど、全部このバ会長の所為ですよね」

【琴竪】

「同意なり。反省するがいい、バカヒロ」

【石山】

「どゆこと?? あと海賊王、俺一応先輩だかんな」

【堀江】

「え……? こ、この雰囲気、もしかして本当にそんな感じの予定でいくの……!?」

【藍澤】

「どのみち、この島の船ってことは、行きの船みたいに大きなものではないのでしょう? となるとこの大人数を小分けにして送ることになる……人数の揃っている他の生徒会を優先していくということでいいのでは?」

【涙慧】

「じゃあ……私達も、それで」

【杏子】

「……正直予想はしていたが、お前らもか」

【苺花】

「お、お願いします! だって、亜弥ちゃんを置いて先に行くなんて……亜弥ちゃんが良くても、私達は絶対嫌です……」

【涙慧】

「というか、お兄さんに何て云われるか……」

【杏子】

「あー……お前らより私の方が危機だな、そういう意味では……

【深幸】

「俺らもラストでいいっす」

【信長】

「だな。2人も居なくなってることだし」

【秭按】

「2人も欠けている状態だからこそ、これ以上失う事態を避ける為に脱出して」

【笑星】

「……姉ちゃんに、俺たちを止める力は、無いと思う」

【秭按】

「――!」

【笑星】

「だって、俺たち紫上会だし」

 …………こんな時に。

 そういうところを見せるのだから。

【秭按】

「……確かにね。私は貴方たちの教員。教員として、貴方たちを何としても護りたい――」

【笑星】

「――だけど、その教員の上に、俺たち紫上会がいる。だから……ごめん、姉ちゃん。俺たちは、残る」

 とても危険な我が儘だというのに。

 それを云う弟は、随分大人に見えた。本当、こんな時に……

【秭按】

「……はぁ……真理学園の、特性なのかしら」

【苺花】

「え?」

【秭按】

「なら――逃げても逃げられないかも、しれませんね」

 去年の12月にもこんな気持ちになった。

 もう、祈るしかない、という境地。

【秭按】

度会わたらいでも居たら、砂に埋もれさせてでも探させるんだけど」

【笑星】

「え? 誰それ」

【秭按】

「何でもないわ」

 どうか、ミマキ様。

 笑星たちと、彼女の縁が、切れないように守ってください――

     
     
     

【ババ様】

「……………………」

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