6.31「レクリエーション」

あらすじ

「「「(で……デートじゃん、それ……)」」」生徒会、突発レクに臨みます。筆者はレクといったらドロケイとキャンプファイアーを連想します。皆さんはどうでしょうかな6話31節。

砂川を読む

Time

14:30

Stage

ミマ町村部 中央公園

【町長】

「これからー、生徒会対抗、縁結びブラックジャックを始めますー!」

【生徒会】

「「「うおぉおおおおおおおおおおお!!!」」」

 何か始まった。

 いやもう、早くババ様のところに戻りたいんだけど。のんびりしてたいなー……。

【鞠】

「(……ちょっと、媚薬薄まってきた……かな)」

 ババ様の目測では明日まで媚薬の効果は続くってことだったけど、朝のような思考の溶け方は今無かった。ただ単に波の満ち引きなだけかもしれないけど、どうか効果が切れかけてるんだと信じたい。

 合宿のノルマは達成したようなものだし、このままひっそり、時間をやり過ごしたいんだけど、ここにきてレクリエーションなる行事が開催されることになった。主催側のサプライズってことらしい。余計な事を。

【笑星】

「ブラックジャックって……確かトランプゲームのやつだよね。ぴったり21を目指せっていう」

【町長】

「ミマ島には、縁結びを司る島ヌシ、ミマキ様がいらっしゃいます。折角皆さん、遠いこの島に参られたのです、ミマキ様のお力に、あやかりたいとは思いませんか?」

 町長、ふっふっふと怪しく笑いながら壇上から私たちを見渡す。相当ノリノリだった。

【町長】

「これより、島の自然公園部の中に、我々が散りばめた……こんな感じの49枚のカードを制限時間1時間の間に、皆さんに集めてもらおうと思います」

 掲げられたのは、トランプより一回り大きめで、でっかく♥と数字が書かれただけのカード。

【町長】

「集めたカードを各生徒会で集計し、ぴったり21を目指してください。なお、一度手にしたカードは手放してはなりません。他人の手に入れたカードを奪うこともしてはいけません。それを審判する者はいませんがー……皆さんの動きは全て、ミマキ様が見ておられますー。皆さんの良心に則ったプレイを期待していますー」

 なるほど、不足することもあれば、オーバーすることだってある。

 ミマの自然公園部は町村部と比べて遙かに広い……あんなカードを探しながら探索するとなれば、制限時間は寧ろ短い……それなりの採取効率の工夫が求められる。

 いやまあ、抑も本気でやるつもりは無いんだけど――

【町長】

「そして見事ピタリ賞の生徒会には、豪華賞品――ミマ島公式の恋愛成就護符を人数分プレゼント☆」

【思春期】

「「「――!!」」」

 何か皆の空気が変わった気がした。

【町長】

「このミマキ様の祈りに染まった護符を身に着ければ、たちまち皆さんの恋愛発見・恋愛成就間違いなし! 因みにこの護符を身に着けた観光客の8割以上が何らかの恋愛を成就させ幸せになったとお手紙戴いております!! 通常販売価格、定価16万円のところ、タダで手に入るチャンス!! 今なら専用ポーチもついてきまーす」

 うわあ、凄い値段とそれに見合う実績……あと売り込み方が未開だった場所とは思えない。ていうか――

【鞠】

「え……ババ様?」

 何であの専用ポーチ、女の子のイラストが刻まれてるの? そしてあの顔かたち、ババ様じゃね?

 あれか……島のアイドル、的な。あんだけ動き回る女の子とノリの良すぎる大人たちだ。得体の知れないコラボをしてても納得できないわけじゃない。

【杏子】

「ふっ……くだらないな。こんなのに誘惑されおって、全くこれだから盛りのついた若者共は――」

【町長】

「因みに顧問の方にもプレゼント☆」

【杏子】

「井澤、爬闇、宍戸。良いな、これも真剣勝負だ。あの兄の名に恥じぬよう本気で潰しに行け」

【涙慧】

「らじゃ……」

【亜弥】

「刃を持て、ということですね……」

【苺花】

「ぇぇぇぇぇ……」

 何か顧問の方々の目まで変わった。特にあそこのアラフォーがヤバい。

【男子】

「あ、あの護符が……」

【女子】

「あれがあれば、もしかしたら――」

【男子】

「「「ちょっと砂川さんと近付ける……?」」」

【女子】

「「「四粹様を奪い返せる――!」」」

【堀江】

「英さん……お願いね!」

【英】

「は、はい……全力を、尽くします……(あの護符があったら……も、もしかしたら、会長に、振り向いていただけるかも――!)」

【石山】

「ふーん……まあ、そこそこ気張ってやってみますかね。いっちゃえばこれだって信長くんとの勝負なわけだし」

【涙慧】

「お兄さんとの距離、グッと、縮まる……!」

【亜弥】

「兄さんとK点超えできる……!!」

【苺花】

「また末明ちゃん、変な言葉教えたなー……」

 うーん最悪の展開……。

 堊隹塚先生の目論見はこのイベントの存在ですっかりガバガバになってしまったわけだ。

【鞠】

「でも、まあ……これは負けてもいいんじゃ」

 もしどっかの生徒会がブラックジャックピタリして副会長が奪われたとしても、抑も副会長は私のものではないので、私個人には何のダメージも無いんじゃないだろうか。私たちの「偽造」がバレることが問題なのだから。

 男子たちまで一斉に気合い入ったのがちょっと気にもなるけど、私はこの一時間はゆっくりできそうだ。

【鞠】

「ていうか別に参加しなくたって――」

【笑星】

「何云ってるの会長……!! まだ合宿は、終わってないんだよ……!!」

【深幸】

「勝負には、全力で臨まなきゃなぁ。だろ、信長……?」

【信長】

「ああ……去年のレクでは負けてしまった、からなぁ……!!」

【鞠】

「えぇえええ……」

 うちの面子までヤル気じゃん。先生は涼しい顔してるけど。

【笑星】

「(あの、護符があれば……鞠会長と、すんごく仲良くなれるかも……!!)」

【深幸】

「(この嫌われまくってる状況を何とかするには、もう神頼みだろ……ッ!)」

【信長】

「(そう……これも、勝負、みたいなものだよな)」

【四粹】

「…………」

【鞠】

「貴方は、ヤル気は無さそうですね」

【四粹】

「あ、いえ、決してそんなことは……」

【鞠】

「別に、無理して参加する必要は、無いですよ。あの先生の作戦は、最初からガバガバでしたし……取りあえず偽造さえ、バレなければ……」

【四粹】

「会長は……護符は、欲しくはないのですか?」

【鞠】

「……別に」

 この島のただならぬ空気を知ってからは……正直恋愛成就というのに、興味が無いわけじゃなくなった。アレは、確かに効果があるんだろうなって。

 だけど……もし仮に私がそんなものを所持して、それで先輩に対して成就させてしまったら……それは先輩のことを過剰に縛ることを意味しないだろうか。

 それは……嫌だった。

 だから要らない。必要充分。

【???】

「――本当に?」

【鞠】

「え――?」

 …………今、何か、囁かれた気がした。

 辺りを見渡すが、誰も近付いた気配は無い。一番近いのがこの副会長だが……違う気しかしなかった。

 媚薬の効果か影響か……色んなものに、過剰になりすぎてるのかもしれない。

【四粹】

「しかし……偽造がバレないようにするというなら、矢張り多少は本気でゲームに挑んだ方がいいですね」

【鞠】

「それは、同感です」

 副会長の提案に対応する。これは嘘じゃない。

 カップルを引き離すという逆転技でも願掛けするらしいあの肉食な連中に対して何もしないのであれば、8割以上成就の実績がある護符を前にしても余裕の態度を取っているという解釈もできるといえばできるが……実はどうでもいいんじゃ、という疑問を持たせることにも繋がる。

 だから一応、ゲームには積極的に参加してるよっていうのを目撃者にアピールしておく必要はある。

【信長】

「自然公園部って……結構広いよな。これを1時間かけてだと、あんまりのんびりしてられない。周りは、分担制でいくつもりだな」

【深幸】

「だが、集めすぎてオーバーしちゃいけない。電波が届いてないからアルスも使えねえし……チーム分けするにしても、定期的に集まった方がいい」

【鞠】

「というか、私と副会長は、実質参加しませんよ……」

【笑星】

「えっ、何で!?」

 単純に面倒臭いってのもあるし、走れるほど体力残ってないってのもあるし……。

【鞠】

「カップル偽造に念を入れて、一緒にその辺を歩いてます」

【笑星&深幸&信長】

「「「(……デートじゃん……)」」」

 顔を見る限り不服そうだ。まあヤル気入ってるのに別の面子がサボりそうだとイライラするか。

【鞠】

「それに……このゲームはチーム一人ひとりが本気を出してしまうほどに、オーバーの余地があります……さきほど村長は49枚と云ってましたが……白熱させるには、あまりにカードが少なすぎる」

【四粹】

「つまり……1枚の数字の大きさは、我々の思っているよりも――」

【深幸】

「なるほど……他の面子がどれだけ集めているかによっては、見つけたカードをスルーする判断も必ず必要になってくる」

【鞠】

「だから、貴方たち3人で初めから21ポイントを分担して、個人が採取とスルーの判断をしていった方が、オーバーするなんて残念な醜態は晒さずに、済みます……」

 5人でやるのと3人でやるの、効率とリスクはそんな変わらない。寧ろ3人でやった方がリスクが軽減できる。

 この動ける面子の場合、リスクを減らした方が効果的だろう。

【四粹】

「まず、40分ぐらい3人でできるだけ目標ポイントを稼いで、その後どこかで集合して不足してるポイントを3人行動で探した方が、運に頼らない良勝負ができる、ということです」

【信長】

「流石、会長です……」

【笑星】

「要は、俺たちで7ポイントずつゲットすればいいんだよね。よし……頑張るぞ!」

【深幸】

「確か自然公園部にも……中央公園、あったよな。そこそこ遠いが……そこを合流地点にしよう」

 話は整った。

 まあ……勝とうが負けようが、勝手にしてればいいと思う。

【町長】

「ゲームぅ……スタートーーー!!!」

【3人】

「「「!!!」」」

 町長の張った声で、レクが開始された。そして3人はいきなり全力疾走していく。

【女子】

「「「ッ!!!」」」

【石山】

「いきなりかよ……飛ばすなぁ信長ー」

 これから1時間ずっと運動するってペースでは決してない。

 だけど、寧ろ必勝法といえる出だしだろう。何故なら、先陣を切るほど採取率は上がるから。

 ……一方、私はのんびり、歩いているとしよう。惚れ薬を刺激しないように……。

vsother

【堀江】

「石山くんも、お願いねー……!! 私にも護符をー……!!」

【杏子】

「あの護符さえあれば、私にも……ふふ、ふふふふふ」

【秭按】

「…………」

 先生たちに背中を押されながら、学生たちはそれぞれ張り切りながら散らばっていった。

 自然公園部は、ミマ島の中でも島民たちによってある程度管理されている森林地帯。川もあるし、山もある。危険じゃないとはとても云えない、都市とは違った剥き出しの迷宮感。

 怪我の恐れを私は心配するけれど、それぐらいアドベンチャラーな方が若者らしいのかもしれない。

【堀江】

「ふっふふー……♪」

【秭按】

「堀江先生には、どなたかお慕いの相手が?」

【堀江】

「勿論、四粹くん♪」

【秭按】

「……そうですか」

 彼も大変だ。

 まあ、更に大変な目に遭わせているのは実質、私なのだけど。

【杏子】

「……堊隹塚先生、一ついいか」

【秭按】

「? はい、何でしょうか」

【杏子】

「どうして、あんな嘘をついたのか、と思ってな」

【秭按】

「……嘘、とは?」

【杏子】

「私相手にしらばっくれられてもな。砂川と玖珂の件だ。附き合っている、というのは嘘だろ」

【秭按】

「…………」

【堀江】

「え……えぇええええ!? そそそうなんですか!? 四粹くん、まだオンリーなんですか!?」

【杏子】

「玖珂が実際どうかは知らんが、砂川は……彼氏を作るタイプじゃない」

【秭按】

「……それは、彼女に失礼では?」

【杏子】

「事実だ。というか……アイツにはもう――」

【秭按】

「相手がいたのね……それは、申し訳ないことをしたわ」

【杏子】

「いや、そういう話でもないん、だろうが……難しいな、私も完全に把握しているわけじゃない。兎も角、そういう確信があったからな……私がそんなことを云ってたとかは内緒に頼む」

【秭按】

「分かりました。黙っておきます」

【杏子】

「……で、何でそんな嘘をついた? 君もこのレクがある以上、仮初めのカップル偽造なんてしたところで、高確率で無意味になるのは予想できたろうに」

【秭按】

「……まあ、そうですね」

 玖珂くんには、本当に申し訳ないんだけど、ね。

【秭按】

「……それでも、弟には高確率で意味があると思ったから、でしょうか」

【杏子】

「は?」

【秭按】

「さて……できれば私の分まで、ミマキの加護を戴きたいものね」

 そういうわけだから。

 頑張りなさい、笑星。

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