6.02「男!?」

あらすじ

「制服、似合ってるじゃん。砂川」砂川さん、思わぬ再会。メンズが大いに混乱する6話2節。

砂川を読む

vsmari

Stage

紫上学園 外

 ……本日の作業を終えて、外に出た。

【鞠】

「……思ったより、進んだような、そうでもないような」

 別に厳格に設定しているわけではないが、仕事に着手する前にまず私がやることは、本日はどこまで作業を終わらせようかをイメージすることで、この時夏休み気分な私は基本的に終日感覚で仕事量を決定する。

 ただ、今日みたいに全國大会なんていう大掛かりな番組を見ようとすれば当然、現実の使用可能な時間が仕事量を減らさないまま減っていく。そんなわけで、最初の予定に比べるとあんまり進めることができなかった。

 が、見るべき箇所を見終わってからは(不機嫌だったお陰かな)、凄く集中できたので作業効率は未だかつてないフィーバー状態だった。それを考えると、良い進捗度と評価することもできるだろう。

 ただまあ、その効率を常に発揮できればいいんだけど……そんな自信はないので、やっぱり此処では無駄なことはしないようにしよう。

【鞠】

「はぁ……」

 にしても、随分不機嫌だ。流石に理由は、分かっている。取りあえず死ね星望、っていう感情だ。

 ……まさか、あの人に対抗できる人間がこの世に居るだなんて。世界の広さを思い知った気分だ。私的には不要と思いたいが、知っておくべきことのようにも思える。だからといって、譱軀に注目する気にはとてもなれないのだけど。

 ていうかあの人も、少し見なかった間に随分凶暴になっていた。映像を見てても何が起こってるのか素人目には全然分からなかった……けど、ただ一つだけ捉え続けることが出来たのは、「斬撃」。

 あの人の斬撃は、極めて異質。根本から異なる莫大で鋭利なエネルギー。極めつけにあの時のソレは、解放された、本当の暴力……。

【鞠】

「…………」

 ある意味、あの人は相変わらずだった。

 ……あの時と同じ力を、使い続けることを選んだんだ。それは……私が心配することではないのだろうけど、事実私は不安だった。

 また――あの時のようになってしまったら……と。

【鞠】

「……先輩」

【???】

「ああ、何だ?」

【鞠】

「…………」

 ……………………。

 ん?

【鞠】

「ええ?」

 記憶に向けていた視線を、眼を開き外へと戻し、前を向く。

 夏の夕闇が、空を多色的に塗り始める中。

 帰路に着き始めていた私の足のまず向かう先、学園の正門に……

【鞠】

「ぇ……え――?」

 その人は、立っていた

【鞠】

「――先――輩――?」

【先輩】

「制服、似合ってるじゃん。砂川」

vseboshi

【深幸】

「相変わらず独りで先んじて直帰してったなぁ。追い掛ける暇もねえ」

【笑星】

「うーん、でも今日は追い掛ける気にもなれなかったねー……」

【信長】

「俺の所為だったりするか……? 最近、会長のこと怒らせてばっかりだったから……」

 確かにそうかもだけど、今日のは違った気がする。

 突然不機嫌になったタイミングは、全國大会の試合が終わった頃だったし……それ関係じゃないかと。

 唐沢さんが優勝っていうのに不服なのかもしれない。譱軀のことを嫌っている人は結構多いし。

【四粹】

「…………」

【深幸】

「しかし、全國大会も終わったなぁ」

【信長】

「まだ閉会式が残ってるがな。この8月上旬恒例の発狂したくなる観光客の多さも明日は解消されていくだろうさ」

【深幸】

「じゃあ、祭りムードも今日が最後だろうから、何か買い食いでもしてくか? 櫻前の限定出店とか色々あるんだろ? 俺あんまり見たことないけど」

【信長】

「俺もだな」

【笑星】

「俺もだけど、個人的にあんまり無駄遣いしたくないんだよね。せめて安めでよろしく!」

【深幸】

「財布の紐はしっかりしてんなぁ笑星」

 と、あんまり現場で浸ることのなかった祭りの余熱を少しでも浴びておこうか、と盛り上がってるうちに、正門まで来た。

【四粹】

「……ん? あれは……会長ですね」

【笑星】

「え?」

 云われて、確かに視界に入る。

 ここから少し離れた場所で、先に帰っていた筈の会長の後ろ姿。

 その隣に――

【四粹】

「男性、ですね……」

【笑星&深幸&信長】

「「「!?!?!?!?!?」」」

 咄嗟の判断だった。

 呑気に眺めるどころかそのまま普通に正門を出ようとしていた玖珂先輩を3人で引っ張って、校門塀へと移動、そっと顔を出して様子を観察する……!

【四粹】

「え……な、何故隠れるのですか……?」

【笑星】

「ちょっと静かに先輩! こ、これは一体……」

【深幸】

「あれ……砂川、だよな……? あの後ろ姿、本当に間違いないよな……?」

【信長】

「ああ会長だ……それに……男、だな……見た目的に」

 ……うん、男だ。170cmは確実にある男の人だ。

 鍔付き帽子を深く被っててどんな顔なのかはこの距離じゃ今イチ分からないけど……男だ。

【笑星】

「こ、こここれって……まさか、ナンパ……?」

【四粹】

「え……?」

【深幸】

「マジか……会長がナンパされるとか、世も末だな……」

【信長】

「相変わらず会長に対しては、棘を感じるな深幸」

【深幸】

「別にそういうつもりはねえけど、ほら、やっぱりあの平常の三つ編みツインテスカート膝下姿は、何と云うか、何もしてなかったから確実に空気じゃん……」

【笑星】

「えー、そう? 俺、あの着飾らない鞠会長、格好良くて好きだなー……」

【深幸】

「……まあ、それは分からなくも、ねえけどよ」

【信長】

「え、分からなくもないのか……? 結局どっちなんだ?」

【深幸】

「俺のことはいいんだよ! それより問題はあの会長が、男に云い寄られてるってところだよ!!」

【四粹】

「……云い寄られて、るんですか、アレは……?」

【信長】

「実際そうなのかはまだ分かりませんが……正直、あの会長が、若い男にいきなり附いて行くという光景は、どうも信じがたいな……」

【深幸】

「まあ、無謀だわなぁ。附いて行くわけねえよアイツが」

【笑星】

「うんうん、俺たちでさえこんな有り様なのにね――」

 と、頼れる先輩たちと意見が合致して安心したところで、再度会長の様子を覗き見た。

     

【先輩】

「んじゃ、テキトウに歩いてみるかー」

【鞠】

「は、はい」

     

 2人は並んで歩き出していた。

【こんな有り様の人達】

「「「!?!?!?!?」」」

 えぇええええええええええちょっとおぉおおおおおどういうことおぉおおおおおおおおお!?!?

【四粹】

「どうやら、共に行動されるようですね……」

【笑星】

「そんなッッッ!? ぽっと出の男なんかに附いて行かないでよ会長!? 幾ら何でもその仕打ちは酷いよ!!」

【深幸】

「ホントだよ芋女のくせに! そんな遊びに乗る柔軟性あるならもっと俺らに優しくしろよ!?」

【信長】

「……何だ、この、えげつない敗北感は……ッ」

【四粹】

「……えっと、抑もまだナンパと決まったわけでは――」

【笑星】

「俺には分かるんだよ先輩!! 鞠会長は、そんな易々と男を近付けるようなビッチさんじゃないんだよ!!」

【四粹】

「は、はあ……」

【信長】

「しかし……実際にこんな信じられない現実が起きている。あの男は、気になるな……何者なんだろうか」

【深幸】

「まあ、只者ではないわな。あの会長がホイホイ付いて行っちまったんだから……」

【笑星】

「……よし、やろう」

 買い食いでもしようかって流れだったけど、当然中止だ。お祭り気分になんか浸っていられない。

 これはきっと、多分、紫上学園の危機だ!!

【笑星】

「紫上会の名に懸けて――今から俺、会長たちを尾行する!!!」

【四粹】

「…………紫上会の名を、懸けてまですることなのでしょうか……?」

【笑星】

「会長を魔の手から救わないと……俺たちの鞠会長なんだ、俺が取り返すんだ……!!」

【深幸】

「……今イチ頼りねえからな、笑星は」

【信長】

「だな」

【笑星】

「茅園先輩? 松井先輩?」

 2人が、俺の肩を叩いた。

【深幸】

「例の如く、サポートしてやんよ。紫上会会計――茅園深幸、今から俺は本気を出すぜ……!!」

【信長】

「このまま、負けたままで家に帰るなどできるわけがないな。紫上会書記、松井信長――押して参ろう!」

【笑星】

「先輩……!! ありがとう!!」

 いつも通り、心強い。

 俺だけじゃ全然ダメでも、先輩たちが一緒に闘ってくれるなら……!

【笑星】

「紫上会雑務、堊隹塚笑星!! 誰よりも、頑張っちゃうし!!」

【四粹】

「……………………」

【笑星】

「よーし……行っくぞーー!!」

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