6.12「グレイシャ島嶼群」

あらすじ

「ミマ島……グローバリズムの点では、島嶼群で最も発展している島ですね」紫上会、舞台に上陸します。4大陸すら説明が不足してるのに5つ目来ちゃった感じの6話12節。

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Time

12:00

Stage

ミマ島 埠頭

 船にぷかぷか浮くこと4時間強。

 目的の島に到着してしまった。いや、転覆されるよりはずっとマシだけども。

【信長】

「おお……ここが、第五の大陸……のひとつ」

【深幸】

「島って初めてなんだよな俺」

【信長】

「俺も、あまり中央大陸から出たことないしな。具体的に説明できないが、新感覚だ」

【深幸】

「写メろう、皆で撮ろう。時限式で」

【四粹】

「自撮り棒、一応持ってきましたよ」

【秭按】

「用意周到ね、玖珂くん」

【四粹】

「去年では非常に需要があったのを思い出したので……」

 島だ、新大陸だ、などと騒がれてはいるものの……そんな燥ぐ理由になるだろうか。私にとっては中央大陸も新大陸みたいなものだったけど、景色違うなって感想しか浮かばなかった記憶が。

 ミマ島と聞いて、私が抱いた先入観はただただ「島」だったのもあって、埠頭に立って思ったのは想像通りの景観だなぁ、という感じで……いやまだ早すぎるとは思うけど。

 若干ここからでも町並みが見える。そこそこの人工物……そしてそれを取り囲む海と緑と山、膨大な自然。流石に中央大陸とは雰囲気は大いに異なる。寧ろ優海町に近い。

 ……あと、視界に映り込んでくるのは、私たちと同時にこの未開の領域に降り立った人間たち。

【秭按】

「流石に、学生服を着てくる気合いの入った人達はいないわね」

 私は最初それで来ようかと思ったけど、「服装自由」って云われたらまあまず制服は着てこないよなって予想した時、それじゃ私だけ浮いちゃう恐れもあったので私服編成で来た。正解だったようだ。

 そして埠頭に立ち私たち同様に海や緑を見回す人々は皆、私たちと目的は同じだろう。これも予想通りのこと。ならば当然ここから何処に歩いていけばいいのかも同様。

 100人近い大集団……正確には小集団の集合体は、ぬるりと流れるように港から島へと歩き出した。私たちもそれに流されていくべき、なんだけど。

【秭按】

「……笑星、大丈夫?」

【笑星】

「ごめん皆、ちょっと、休ませてー……」

【深幸】

「笑星は乗り物ダメだったんだなぁ……何か既に楽しみまくった俺、ちょっと気まずい」

【信長】

「船が苦手な人は少なくない。気にすることはないさ、笑星」

 ということで紫上学園、雑務が体調不良お陰で見事にスタートダッシュに失敗。まあ、集合時刻にはまだ余裕あるし、地図も貰ってるから問題は無いだろう。4大陸で使われてる一般電波が何故か使えないとのことで、私たちが普段使ってる通信手段アルスが使えないので迷子になると相当面倒ではあるけど。

【信長】

「それにしても……未開の領域と聞いてはいたが、何か、そんな感じはしないな」

【四粹】

「ミマ島……グローバリズムの点では、島嶼群で最も発展している島ですね」

【深幸】

「去年は何処で集まってたんすか?」

【四粹】

「普通に中央大陸でした。一昨年は大輪で……恐らく全國中の生徒会が集まるということもあって、開催場所は彩解以外の大陸でローテーションしているのかと」

【深幸】

「今年は思い切ったんだなぁ。笑星にとっては災難だったが」

【笑星】

「全然、いいよー……俺、島とか好きだからー……」

 グレイシャ島嶼群。北海に浮かぶ14の島々。

 面積とかは中心に浮かぶグレイシャ本島が特に巨大で、そこではリゾート都市開発なんかをパパは計画してるっぽい。しかし一方無人島に近い全くの未開領域の方が多い。そこにも手を着けようとしているらしいけど……島嶼群の海域には何かデッドプールとか呟かれてる毒性の強すぎる沼が存在してるっぽくて、それに囲まれ浸っている5島は生態系が未知数、開発は困難とされていて、住民の存在は分からないし当然観光客もいない。だから我々も当然そのプールに浸る島嶼群南部の島は目指さない。

 到着したのは、北部……毒性海域から遠い安全な有人島。その一つである、ミマ島だった。

 独立した島嶼群にはそれぞれの文化や排他的性格が根付いていそうだが、この島は何だかグローバリズムというか、とても外的存在にフランクだったそうで、グレイシャ本島及び新大陸開発の話に一番早く協力してくれた有難い島なのだ。

 ただ、態々そんな島に来た目的だが、開発とかそんなたいそうなものでは全くなく、純粋に観光するわけでもなく、矢張り私にとっては仕事で……しかも中途半端な仕事で。

 しかも上陸してから云うのは無価値過ぎるんだけど、何で態々色んな生徒会を集める必要があるんだろうなっていう疑問が未だ絶えない。

 夏休みの3日間、紫上会は紫上学園の生徒会として「全國A等部学校生徒会懇親合宿」とかいう面倒臭いものに参加することになっている。この……長いから普通に「合宿」って略すけど、合宿はまあ名前からある程度推測できる通り、大輪、毘華、中央の先進大陸からA等部の張り切った学校の生徒会組織が一堂に会してコミュニケーションを取る年一回のイベント。

 まだまだ数年の歴史しかないものの、参加学校が少しずつ増えてきて、より深い信頼関係を築こうと3日間の合宿にまで余計な進化しちゃった。多分これからも大きなハプニングさえなければ発展していくんだろう。

【笑星】

「そろそろ、いこっか……」

【信長】

「大丈夫か……?」

【深幸】

「ゆっくりいこうぜ。滅多に見れない光景しっかり眺めながらよ」

【秭按】

「目的地は、町村部の中央公園ね。私が先導します」

 休めと云ってるのに張り切る先生を先頭に、紫上学園、ようやく出発。

 ……で、この合宿、コミュニケーションとはいうけど実際何をするのかといえば、まぁ「懇親会」。すなわち学校の代表同士で親交を作りながら、お互いの学校や生徒会活動の情報を共有して、各々の学校作りに役立てよう、というしっかりした目的がある。

 ただ……ぶっちゃけそういうのは、教師達でやればいいじゃんとか思ったりもするんだけど。だって基本的に生徒会というのは1年で世代交代するんだから。

 つまり生徒会学生にとっては、仕事というよりはただ楽しい交流会、ちょっとした修学旅行みたいな認識になる。書記や副会長の経験を聞くに、そういう雰囲気なんだと私は理解した。

 以上のことから私にとっての結論を導くなら、この合宿の存在自体が私を大変イライラさせるものではあるものの、この合宿の中で私はそこまで緊張しなくていいんじゃないか、というぐらいの面倒だが困難ではないイベントということになる。微妙。

【鞠】

「(どうせなら寝てたかった……)」

 海の音と香り。揺れる未開の緑。

 全くノーサンキューな刺激に囲まれながら、私はただただ溜息を零す。

 もう逃げられない――地獄の合宿の、始まりだ。

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