6.01「全國大会」

あらすじ

「凄い、毎年凄いってのは知ってるけど、今年は凄すぎたよ!?」紫上会、仲良くテレビを観ます。敢えて今回の註釈は註釈欄には入れずそのまま本分にぶち込んでおります。読んでおくと後々理解の助けになるようなならないような、そんな怒濤の6話1節。

砂川を読む

vseboshi

Day

8/9

Time

11:00

Stage

紫上会室

【テレビ】

「― 怒濤の三つ巴決勝戦、優勝は……星望公選手となりましたーー!! ―」

 ……番組は間違いなく佳境を越えたことを担当アナウンサーが伝えた。

【紫上会】

「「「……………………」」」

 それはリビングでソファに座り尽くして、ホームシアターな画面にずっと目を離さないでいた俺たちのこの時間も収量だってそれとなく教えてくれているようだった。

 けど、名残惜しいのか、まだ現実に戻って来れないのか、引き続き俺たちは白熱が沈んでいく大会の様をカメラを通して眺めていた。

【鞠】

「…………」

 因みに珍しく鞠会長も、今日の試合をテレビで観戦してた。

 きっと全國のテレビ持ちの家は、この同じ全國放送を、或いは民営のテレビ局を通じて視聴していただろう。

 「全國大会」――現代でもっとも盛り上がるとされる闘いの祭り。毎年8月上旬に開催されるこれは、A等部に該当する学生が全國の同年代な学生とで競い合う。

 甲子園の時みたいに様々なエリア分けの中、厳しい予選が繰り広げられて、選ばれた60人程度の選手が空塔に集まる。そう、ここ中央大陸でいっつも開催される。だからこの8月はいつも、観光客で賑わうことになる。

 行こうと思えば直接会場に観に行くこともできる……けど観戦するにもお金がかかりそうだから俺は行ったことない。テレビ契約とかしてないから、アルスでニュース記事を見て理解するのが基本だ。ソレを考えたら……また紫上会に入って良かったなって事が一つ判明した。

 ある意味、ここだって特等席みたいなものだったから。おっきな設置型ディスプレイ、大迫力なホームシアタースピーカーどんなに燥いでも大丈夫な完全防音空間。あとエアコン完備ですぐそこに冷蔵庫とキッチン。

 直接観戦を除けば、皆で楽しむのにこんな優れた場所は他に無い。だから俺も全國大会が始まって、会長たちと燥げるのが楽しみで仕方無かった。

 けど――最後の闘いは、燥ぐ余裕も無かった。皆、ずっと沈黙していた。

 ヤバい、試合だった。決勝戦、対戦カードは三つ巴――星望さんと白宮さんと井澤さんで。特に星望さんと井澤さんのガチンコ勝負は、舞台となる巨大仮想世界の中央大陸の景観を巻き込む壮絶な死闘になっていた。

 正直、数十分、何が起こっていたのか分からなかった。元々決勝戦の採用ルールがハチャメチャだったのもあるけど、数多の爆発が舞い、端から端まで、地上空中関係なしに斬撃が疾走して、拳はビルを粉々に砕いた。そんな2人の――加減ゼロの殺し合い、そんな印象が残ってる。

 中継画面は最後まで生きてくれたけど、解説さんも解説できないし、3人の姿を眼で追えるわけでもない、ただただ自分たちの知ってる景観の世界が崩壊していくのを眺めるばかりで……たった2人でそれを為していたのを理解してしまうと、どうしても決勝の人たちは俺と同じ人間なのかな、って疑ってしまう。

 そんな決勝戦の結果は、ライバルを倒すのではなく決勝用のポイントルールで僅差ながら制した星望さんだった。因みに白宮さんはあの崩落してくフィールドにずっと居たにもかかわらずピンピンしていた。

【笑星】

「うわー……うわぁぁぁ……」

 本当に……今年は――

【笑星】

「凄い、毎年凄いってのは知ってるけど、今年は凄すぎたよ!? 頭おかしいレベルで凄かったよ!」

【信長】

「ああ……一振りで町々を薙ぎ払う姿はとても同種とは思えなかったな……」

【笑星】

「松井先輩ですらそんなコメントするなんて、解説の人も云ってたけど、黄金世代なんだね俺たち……!! 茅園先輩とか、目指さないの来年!!」

【深幸】

「何で俺が目指さなきゃいかんっ、あんなの見せつけられて同じ場所に立とうとか思えるほど俺はそんな信長じゃねえし」

【信長】

「変な指標に使われたものだな、俺……」

【笑星】

「変だからいいじゃん! へっへへ……」

【深幸】

「随分、機嫌が良いもんだな笑星」

【笑星】

「そりゃそうだよ、映画館みたいな時間を皆と過ごせたから、俺そういうの始めてだし。鞠会長とも一緒に見れてよかったなぁ――」

 と、今回珍しく一緒に観てくれた会長を見た。

【鞠】

~~~~~ッッッ……

【笑星】

「……会長?」

 ……いつの間にか、ものっそい不機嫌になっていた。

【鞠】

~~~~(←ゴゴゴゴ)

【4人】

「「「「…………」」」」

 ものっっっっっっそい不機嫌に、なっていた!

【鞠】

「…………」

 ソファから立ち上がって、無言のまま仕事エリアの方に引っ込んでしまった。

 ……こっちも、凄い怖かった。

【笑星】

「あ……あれー? 会長……あれー?」

【四粹】

「……何か気に障る映像でもあったのでしょうか」

【深幸】

「さあ……でもアイツにしては、テレビ見てるの自体珍しかったけど。甲子園はあんな文句云ってたのにこっちは見るんだなぁ」

【信長】

「会長は大迫力なアクション映画がお好みなのかもしれん。今度借りてこようか」

【深幸】

「めげないなお前……」

 ……こんな感じで、楽しかった全國大会期間は真っ青な冷気に包まるようにして終わって……。

 この日は鞠会長が仕事をするあと4時間以上も、エアコン要らずの中ここで帰ったら負けだと励まし合ってリビングで過ごしたのだった……。

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