5.06「通話」

あらすじ

「野球っていいな~、恋愛ごとよりも青春って感じがするんですよ~」砂川さん、自宅でテレビ観ます。作者はテレビよりようつべ派な5話6節。

砂川を読む

vsmari

Time

20:30

Stage

砂川家 リビングフロア

【鞠】

「……んー……」

 夕食後、なーーーんにも考えず、歩き回ってたら私はリビングに入って、ソファに座ってテレビを見ていた。

【コメディアン】

「イッキイッキイッキイッキ――」

 テレビの先では芸人と思われる大人が子どもの運動会で米騒動を起こしていた。いわゆるコントというやつだろう。何だかよく分からないけどコレが現実になっていたら間違いなく狂気そのものだ。

 これを最後まで眺めていられる自信は皆無。よってリモコンでチャンネルを切り替える。

【鞠】

「……ニュースでいいや」

 毘華の北方で不漁が続いている、というニュースをやっていた。

 ……超絶興味無い。チャンネルを切り替える。

【鞠】

「まぁ……観たいものとかないけど」

 思えば私、もしかして……一つの番組を最初から最後まで視聴したことって、生涯一度も無かったりするのか?

 子どもの頃からテレビ番組なんて全然興味無かったし。抑も習い事尽くしだったし。

【鞠】

「……結局私は、一峰の道具ってわけですか」

【汐】

「鞠は大切な、兵蕪様の愛娘さんですよ」

 気付けばソファの後ろにメイドが立っていた。

 私が振り向くよりも早く背に手を置いて、側転ってレベルでソファを跳び越え……そのまま私の隣にどっさりと着地。横から抱きついてくる。

 スタイリッシュにウザい。

【汐】

「そんでもって、私の可愛い妹ですよ~♥」

【鞠】

「私に姉はいません」

 ……よりにもよって私自身変と思う独り言を聞かれてしまった。

【汐】

「どうしてそんな考えに至ってたんですか~?」

【鞠】

「それをわざわざ説明する労苦を持つ義理もありません」

【汐】

「そんな冷たい鞠なんか、お姉ちゃんが温めてあげますよ~」

 説明してやることにした。

【汐】

「なるほど……その辺はまだ私が鞠と出会う前のことですね~。まあ、兵蕪様から耳が鞠色に腐るほど聞かされてますけど」

 気持ち悪い表現使うな。

【鞠】

「理由を知っていると」

【汐】

「酔っ払った兵蕪様のお相手をしてると必ず懺悔してくるんですよ。子どもの頃から鞠のこと、全然構ってあげられなかったことを。そうなることは当時から分かってたから、ならばせめて色んな人と真剣な交流を図って成長してもらおうって考えたそうです」

【鞠】

「……だから、習い事を多く入れてきた、と」

 もう何を学んできたかとか億劫過ぎて数える気にもならないが、運動系を除いて色んなことを学ばされた。

 だけどパパの狙いはその技術の習得というよりは、パパが仕事で忙しい代わりに色んな講師と習い事を通して交流を図ることだったということだ。

 ……その狙いが当たったかは私には分からない。それを評価できるのはパパなのだから。

【汐】

「そういえば、鞠は一峰を継ぐんですよね? そうなったら私、鞠といれる時間が少なくなっちゃうのかなぁ~」

【鞠】

「……なるほど」

 やっぱり継ぐのが吉か。

 と、不本意な会話をしながらテキトウにチャンネルを切り替えまくっていたところ……

【ナレーション】

「今日の野球部は――お待たせしました、稜泉学園野球部!」

 「野球部」というワードが耳に入ってきて、リモコンを持つ手は静止し、私の意識は元々視界に入っていたテレビへと。

【ナレーション】

「甲子園優勝候補といわれる最強の野球部、その秘密にアプローチしました――」

【汐】

「そういえば、もうそろそろ甲子園の時期ですねー。全國大会の時期でもありますけど。鞠って、野球とか興味ありましたっけ?」

【鞠】

「皆無ですが」

 ルール全然知らないし。

【汐】

「この時期になると、甲子園専用のニュース番組が組まれるんですよね。頑張ってる有力な野球部を直接取材して、毎日1校ずつ取り上げたりしてるんですよ。確かー……紫上学園も強豪ですから、取材来たんじゃないかって」

【鞠】

「…………」

 もう来たんだろうか。

 そういうのも多分紫上会に話を通すことになるだろうから、私が知らないのはおかしい。まだ取材に来てないか、取材する予定もないのか、それとも私に通さず取材をしているのか。

 ……三つ目だとまたややこしい処理をしなくてはならない。

【汐】

「野球っていいな~、恋愛ごとよりも青春って感じがするんですよ~逆にプロ野球とか観てて全然盛り上がらないですし――」

 何やらメイドが学生野球を語り出したが、私は矢張り興味が無い。

 球を投げて、打って、走ってるのが一体何が楽しいのだろうか。それを眺めていて何が楽しいのだろうか。

 やるのも観るのも、スポーツ精神に欠けた私である。

【鞠】

「(……先輩なら、どうかな)」

 ……ちょっと、訊いてみようかな。

Stage

砂川家 鞠の寝室

 いつもの姿勢。ベッドにうつ伏せになって、アルスを立ち上げる。

 通話を開始する。

【鞠】

「――もしもし、今、大丈夫ですか?」

【先輩】

「― ああ、定期報告かー。お疲れさん会長 ―」

 最大の癒やし。先輩の声だ。

 懲りずに安堵を覚えながら……たわいのない会話をしようと、思ったんだけど。

【先輩】

「― ……ぶっふ ―」

 電話の向こうで先輩が、何やら噴き出したようだった。

【鞠】

「……先輩?」

【先輩】

「― ああいや、悪い悪い、ちょっと思い出し笑いを……! ―」

 思い出し笑いの内容はたいていエッチいという都市伝説があるけど、先輩一体今何を思い出してるんだろう。

 あれだけの女子が居るんだから、どうせ大変な目に遭ってるんだろうけど……。

【鞠】

「(まぁ、そこに不満を思うのは、身勝手だし――)」

【先輩】

「― ぶふ、そ、そういや、体育祭どうだった……っ? ―」

【鞠】

「え? ああ、はい……」

 そういえば、体育祭のこと全然報告してなかった。

【鞠】

「まあ、最高に面倒でしたが……無事終わりましたよ。何とかなったなと」

【先輩】

「― うふふふ ―」

 先輩、思い出し笑いが止まらない。

 流石にほっぺを膨らましたくなるリアクションである。

【先輩】

「― 無事ッ、無事って……! ―」

【鞠】

「……先輩?」

【先輩】

「― ああいや、悪い何でもなーい ―」

【鞠】

「……まあ、多少、目立っちゃったりもしましたが。長距離とか1位とっちゃいましたし」

【先輩】

「― 俺が勧めたヤツ忠実にやったんだなぁ。流石云われたことはキチンとこなす優等生 ―」

【鞠】

「嫌味ですか。いいですよ、どうせ私は先輩みたいな天才ではないですからー。これ以上目立ちたくないですし」

【先輩】

「― ぶっふ……多分、これからもフフッ目立つんじゃね……? ―」

【鞠】

「……え?」

 え――何その不穏な予言。

 先輩のそういう発言って物凄く的中するから怖い。

【鞠】

「また、直感ですか……?」

【先輩】

「― いんや、事実云っただけ……! お前も分かるんじゃねwww? ―」

【鞠】

「先輩……どういう、ことですか?」

【先輩】

「― 「体育祭」で画像検索してみ? 面白いことになってるからwwwんじゃあーなー!! ―」

【鞠】

「先輩!? ちょ、説明――」

 ……切られた。今日の先輩終始笑ってた。

 全然呑み込めず、思わずベッドの上で正座して固まっている私。

【鞠】

「……画像検索って……」

 アルスでブラウザを開き、画像検索に切り替えて……云われた通り「体育祭」と入力し、

 結果を、表示する。瞬時に1列5枚でネットに投げられた画像たちが沢山並――

みこし頑張る

【鞠】

「――――――――」

 ――いや待って、画像1列目に、恐ろしく見たことある光景が……いや私は絶対見たことないんだけど。

 御輿。

 御輿じゃん……。

 御輿じゃん!?!?

砂川んんん1

【鞠】

んんんんんんんんんんんんんんんんんんん――!?!?!?

 御輿に乗ってる……私じゃああぁああああああああああん!!?!?

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