5.13「主賓じゃないのに」

あらすじ

「そういえばまだ会長と茅園、附き合ってないの?」砂川さん、他人ん家の他人の誕生日パーティーで集中攻撃に遭います。こんなアットホームなパーティーに作者も呼ばれたい5話13節。

砂川を読む

 リビングに場所を移した。

【母親】

「お帰りなさい、信長」

【信長】

「……こ、この料理の数々は、母さん……」

 お菓子や軽食が並んでいた。

 ナチュラルに両親も仲間である。

【父親】

「久々に腕によりをかけてみた。さあ、ご賞味を。我が最愛の息子よ」

【母親】

「仕事もそれくらい全力で張り切ってくれたらねー」

 父親さんの職業は料理人とのこと。

 家事は料理も含めて母親さんがやっているが、料理スキルは矢張り本業の父親さんが上なそう。

 ……この人が毘華のアメリアっていう国家に招待されたとのことで、転勤および引っ越しの話になったそうだ。アメリアのことはよく知らないけど、料理人として絶好のチャンス、だから1年早く来てと云われたら1年早く行くしかない。父の料理人としての情熱を理解していたから、息子たる書記も受け入れたということらしい。

【鞠】

「…………」

 チョコレートピザを一切れ戴いた。ピザってスイーツだったっけ。

 そして当然の如く美味。うちのシェフと良い勝負してる。あと、

【鞠】

「(先輩、どうなってんの……)」

 そんなプロの人達と良い勝負してるパティシエ擬きな先輩はやっぱりおかしい。

【璃奈】

「はむはむはむ……へへ、おいひ」

【鞠】

「ん……?」

 ……気付けば、隣にあの女の子が。私と同じピザを頬張っていた。チョコは半熟だから、食べるのにちょっと緊張するけど、女の子は構わず手を汚して、手を舐めて、全部を美味しく戴いていた。

 うん、可愛いと思う。ただ、そんな子の隣に私が居るのは何だかよろしくない気がした。なので、数歩移動して、今度はホクホクしたままのマフィンに手を伸ばした。

【鞠】

「…………」

 中に半熟~固形の板チョコが組み込まれていた。何でマフィン温かいのに包まれたチョコはまだ冷たいんだろう。

 ……あ、コレただ焼き上げた後に掘って冷えたチョコ組み込んだだけだ。切り込みがあった。でも美味しい。

【璃奈】

「はむはむはむ……あ、チョコはいってるー!」

【鞠】

「あれ……?」

 隣にはまたあの女の子が。私と同じ物を食べている。

 ……………………。

【鞠】

「てててててて(←移動)」

【璃奈】

「とてててて(←移動)」

 おっと、これはどういうことかな?

 私、思いっ切り追尾されていた。

【笑星】

「会長、璃奈ちゃんにすっかり懐かれてるねー!」

【鞠】

「グサッ」

 体育祭の悪しき思い出が掘り返されるッ!

 だからこの子は苦手候補なんだけども……!

【瑠奈】

「あっ、リナばっかズルいぞー! ボクもおはなしするー!」

【璃奈】

「おねーちゃん、またあそぼー!」

【鞠】

「またって……遊んだこと、ありましたっけ」

【璃奈】

「いっしょにおどろー!」

【他の人たち】

「「「一緒に踊ったの!?!?」」」

【鞠】

「ガハッ――」

 チョコ吐きそう。

【深幸】

「お前……いつの間に、俺の妹とそんな仲良く……」

 元はといえば全部お前が踊るからなんだけど。

【男子】

「あの冷血無慈悲で罷り通ってる砂川に、そんな一面が……」

【男子】

「子どもには優しいっていうやつかね」

 ああ、野球部の莫迦どもにまた面倒な先入観が……。

【男子】

「……結局、砂川ってどういう奴なんだ? 茅園と松井的にさ」

 おい待て、本人の前でそういう話題するな。あと主賓の話をしろもっと。

【信長】

「強者、だな」

【笑星】

「凄い人!」

 2人とも情報の無い回答を即座に放った。ていうかお前には訊いてない雑務。

【深幸】

「……やると決めたら徹底的にやって実現させる奴だなぁ」

【六角】

「あー、それは端から見ても分かるなぁ。誓約書のやつとか、ホント有言実行してたじゃん。勇気要るぜーああいうの」

【深幸】

「そんなもんじゃないっすよ。紫上会の仕事は全部独りでやるって云い出してよ、今のところ本当に全部やっちまってる……俺たちマジドン引き、やることない……」

【笑星】

「事実上、給料泥棒だよね俺たち」

【男子】

「「酷ぇ……」」

 おっと、このパーティーをコイツらは私を囲んで虐める時間にしたいのかな?

 いい加減主賓に話を戻してほしいのだけど。

【菅原】

「あれ、そういえばまだ会長と茅園、附き合ってないの?」

【鞠&深幸&笑星】

「「「ブッ――!?」」」

 だっかーらっ、私の時間終わらせろって!

 しかも何その異世界的な方向性!!

【深幸】

「い、いきなり何すか菅原先輩!? どんな話題転換!?」

【菅原】

「いや、紫上最強のカップルになったんだから流れとしては寧ろ自然……(←コップを向ける)」

【四粹】

「どうぞ(←注ぐ)」

【菅原】

「んくっんくっ……プハァ! でしょー。似合ってると思いまーすwww!」

【鞠】

「酒入れたんですか」

【四粹】

「ノンアルコールです……」

 やっぱりこの人ヤベえ。

 これ以上人の家でイライラしたくないので、私自ら動く。

【鞠】

「どうしてよりによって私の話題に華咲かせてるんですか。主役はコレでしょ」

 書記の背中に隠れる……ただ後ろに移動しただけだが身長差的に隠れて、主賓を主張する。

【菅原】

「まぁ今日は何も考えずというコンセプトではあるけど、折角野球部の人も居るわけだから、これを機に会長のイメージアップを我々上級生が図ってやろうとだねデュフフフwww」

【鞠】

「嘘だ」

 書記の横から顔を出して元会計の美人を覗く。

 その顔は完全に私で遊ぶ気満々だとすぐ分かる。

【深幸】

「……この人、六角先輩のツッコミ役なんじゃなかったっけ……」

【六角】

「いんや、俺が弾けすぎてる時はツッコミに徹することもあるけど、基本コイツはボケだぞ。こんな感じにゲラゲラ笑いながらいつも書類作成してた」

 あのガバガバな保存記録コイツがやったのか。納得。

 こういうのを見ると、寧ろこの前会長がマシに思えてすらくる――

【六角】

「ああそういえば会長さん、ネットで体育祭って画像検索したらこんなの出たんですけどー!!!」

【鞠】

ガハッッッ!!!

 ――って違う、コイツら単に同類ってだけだ!! 私の苦手な部類2倍になって私を遊んでくる!!

【信長】

「か、会長、いきなり膝を着いてどうしたんですか!?」

【笑星】

「あ、これ、体育祭の写真じゃん!! ネットに上がってるの!?」

【六角】

「ああ。ネットサーフィンしてたら偶然気付いてな。それから今年の体育祭、というより今年の我らが会長がネットでどれだけ評判になってるのか独自に調査してみたんだよ……」

【男子】

「あんた受験生じゃなかったっけ……」

【六角】

「そしたら10割方「美人」「女神降臨」「神々しさが異次元」「体育祭どこいった」といったポジティブな意見だったぜー流石完全無欠の美会長!!」

【四粹】

「4つ目の意見はポジティブなんですか……?」

 私のHP、そろそろ切れそう。

【璃奈】

「おねーちゃん、だいじょーぶ? マフィン、たべる? はい、あーーん!」

【鞠】

「…………」

 そして無下にできない追い打ち。震える口で、ほかほかなマフィンを食べさせてもらう。

 見られてる気まずさと恥ずかしさと悲しさとで甘みがよく分からなかった。

【六角】

「一番人気なのは、やっぱりこの御輿のやつだなー。……って、何か興味津津だな」

【笑星&深幸】

「「…………(←ガチ見)」」

【信長】

「これが……会長……(←ガチ見)」

【四粹】

「担いでいた側なので、晴れ姿を見るのはある意味初めてですね」

 まじまじ見んな。まったく……耳塞いでようかないっそ。

【信長】

「…………」

【鞠】

「私の写真なんて見て何が楽しいのやら(ぼそっ)」

【瑠奈】

「おねーちゃん、すっごいキレーだった!」

【璃奈】

「せかいでいちばん、キレー!」

【信長】

「ああ……綺麗だ――」

 ……………………。

【笑星】

「え?」

【深幸】

「え?」

【男子】

「「「え?」」」

【信長】

「――え? は、あれ? 俺……何か云いました?」

【四粹】

「…………(←会長覗く)」

 ……………………。

 ダメだ、耳塞いでるの見られるのもそれはそれで恥辱だ。手も疲れるし耳も痛くなるし。

【鞠】

「はぁ……」

【菅原】

「ふっふーーーー?? これは、違うところでも茅園と衝突かなー? ふっふーーwwww」

【四粹】

「……先の目的、見失ってませんか菅原さん……」

【信長】

「……??」

【鞠】

「ん……?」

 その後、何か謎めいた空気感が続いていた……。

 いやだから、せめてもうちょっと誕生日パーティーっぽい感じでいようよ……。

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