4.33「閉会式」

あらすじ

「第33回紫上最強体育祭、優勝チームは――」砂川さん、発表します。閉会式でのラジオ体操、恐ろしくかったるいですよね。それを見せられる観客の気持ちが計り知れない4話33節。

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16:00

【司会】

「――それでは、閉会式を始めます。閉会の言葉、体育祭実行委員長阿部さん、お願いします」

【阿部】

「第33回紫上最強体育祭の、閉会式を始めます」

 ……祭りの終わり。

 その独特な静けさと、余熱がグラウンドに充満している。

【司会】

「学園長の言葉。宮坂学園長、お願いします」

【宮坂】

「うむ」

 始業式と同じ要領で、学園長が壇上に上がる。綱引きの時に多分、あのダメージだらけの勝負服ビリビリいっちゃってる。見るに堪えない。

【宮坂】

「今年度の始まりに、不安を覚えた学生たちも多かったことだろう。その理由は……ここでは明示しないが、敢えて私は云おう!!」

 ほんと何歳なんだろう。終日その気合いが続くのは、大したものだ。

【宮坂】

「確かにこれまでと違う1年になるかもしれない。だが君たちは――紫上学園は必ず、去年を越えて輝くことができるだろう! それを、この体育祭が、証明したと!!」

【学生】

「「「おぉおおおおおおお――!!!」」」

【司会】

「学園長、ありがとうございました。それでは続いて――紫上会会長の言葉。紫上会会長砂川さん、お願いします」

【鞠】

「……よいしょっと……」

 ああ、思った数倍疲労している……確実にトドメ刺されてる、もっとキビキビ歩きたいのに、私だいぶフラフラしてる。莫迦にされちゃ嫌だから気合い入れよう私。

 壇上に着いて――用意した言葉を、紡ぐ。

【鞠】

「まずは、来場くださったお客様がたに、再度御礼申し上げます」

 深く、お辞儀。

 西に。南に。東に。

【鞠】

「……朝にも云ったことですが、体育祭は多くの方の協力の下、成り立っているものです。貴方がたへ送るべき言葉はきっと学園長が全て送ったことでしょうから、私からは特に何もありません。ただ……」

 一息ついてから……全部云いきる。

【鞠】

「もし今回の、貴方の体育祭に満足できたというなら、その時間を成立させた全ての要素に対し、感謝をするといいでしょう。以上」

 ……話は終わったが、朝と同じように、まだ帰れない。

 朝の時は選手宣誓という、私的にはくだらないイベントだったが……

【司会】

「それでは――結果発表に、移ります!」

 今この時、最も注目されているものを、私は発表する立場にある。

【全員】

「「「うおおぉおおおおおおおおおお!!!」」」

【鞠】

「…………」

 今まで途中結果を知らしめてくれた、校舎壁の得点掲示板にはもう何の数字も入っていない。

 その代わり、私の手元に、本日の体育祭の最終結果が簡潔に記載された二つ折りの紙がある。

 私が云うのだ。もうそんな、盛り上げる力とか微塵も残ってないのに。

【司会】

「それでは――砂川会長、お願いします!!!」

 刹那にして、静寂。

 ただ私の言葉を待つのみだ。

【鞠】

「……………………」

 そして私は――初めて、その二つ折りの紙を、開いた。

 息を呑む音が聞こえた気がした。凄まじい緊張感。

 見る。

【鞠】

「……………………」

 ……ふむ。

 これはー……。

【鞠】

「貴方がたが求めたのは――」

【学生】

「「「!!!」」」

【鞠】

「1位だけ、ですよね。当然。ですから――1位だけを、発表します」

【児玉】

「ッ……」

【六角】

「来い来い来い――」

【四粹】

「…………」

【菅原】

「どっちだ――!」

 張り詰めた緊張感の中――

 全てを知った私が思ったのは。

【鞠】

「第33回紫上最強体育祭、優勝チームは――」

 恐らく、ただ一つ。

     
     
     

【鞠】

「――白虎」

     

 やっと帰れるな、だった。

【白虎】

「「「――おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」

【深幸】

「いよっっっっしゃあぁああああああああああああ……!!!!」

【信長】

「勝ったああぁあああああああああああ――!!!」

 一瞬で会場に喜怒哀楽が咲き乱れる中……静かに、壇上から戻ってきた。

 ……書記と会計のテンションがヤバくて正直戻るのに躊躇した。

【笑星】

「あっちゃー……負けちゃったよー……」

【四粹】

「おめでとうございます、茅園さん、松井さん。それに、会長」

【鞠】

「……あれだけの地獄に晒された分、寧ろ当然と云うべきですが」

【信長】

「会長ッ!! 勝ちました――俺たちの勝ちですよ!! ふふ、うふふふふふふふ――!!」

【深幸】

「勝ったぞオイ!? 勝った、勝ったんだ、勝っちまったよおぉおおおははははははは!!!」

【鞠】

「……………………」

 熱中症かな。

【司会】

「それでは――表彰に移ります。優勝の白虎チーム団長、菅原二葉さん、前へ! 宮坂学園長、お願いします!!」

 ……これ以降、紫上会は特に出る幕無いので、リラックスしながら閉会式を見守る。

【笑星】

「ねーね、会長。最終結果、どんな感じだったの?」

【鞠】

「……あまり騒がないように」

 紙を渡した

【笑星】

「うっっわ、超僅差じゃん!!」

【深幸】

「お、どれどれ――うおぉおおお~~~すっげえ……案の定玄武からの逃げ切り勝ちじゃん……5点差て」

【信長】

「……カップルリレーで会長と深幸が出てなければ、勝ち得なかったということだな」

【鞠】

「はぁぁぁぁ~~~~……」

 来年は……絶対目立たないんだからな……。

     

【宮坂】

「優勝――白虎チーム」

【菅原】

「…………」

【宮坂】

「貴殿らは、第33回紫上最強体育祭において、弛まぬ努力と、勝利への執念で以て、以上の成績を手中に収めたことを評し、ここに表彰する。平保31年5月25日、紫上学園学園長宮坂和雄。……おめでとう!!」

【観客】

「「「おぉおおおおおおおおお!!!」」」

【菅原】

「…………ありがとうございます」

【宮坂】

「……何か、云いたいことがあるかね?」

【菅原】

「それでは、少しばかり」

 ……学園長から、マイクを受け取った団長が、壇上から全ての人を見渡す。

 何だろう……今まで私が見てきたあの人とは、ちょっと雰囲気が違う気がする。

【菅原】

「――まず、個人的な話をさせてもらいます。私は今回、何としても玄武に勝ちたかった。いや……厳密には、六角に勝ちたかった」

【六角】

「ん――? 俺?」

【菅原】

「知っての通り、奴は莫迦の癖に、勝負になると勉学を含めて、最強です。故に……私は一度も奴に勝ったことがなかったんです。何かが、決定的に違う。アイツにあって私に無いものがある……それは、絶望にも近い認識でした」

【四粹】

「…………」

【菅原】

「その後は、勝てないまま、気付けば私は、アイツのもう一つの懐刀になっていました。一言で云えば……負け無しの紫上会の生活。六角のことを知り……私は少なからず、大人に近付いたと思います。あの莫迦には、これでも沢山感謝しているんです」

【六角】

「感謝してんなら取りあえず莫迦って云うの止めろや」

【菅原】

「だけど……矢張り私は、諦めきれずにいたようです。実力試験を経て紫上会を引退し、最初の闘いの場がまた訪れた……六角と再び私は、対峙したのです。一度でいいから、私は六角に勝ちたい。私の今回の体育祭のモチベーションの9割は、ソレでした」

【鞠】

「オイ団長」

 どんだけだよ。

【菅原】

「そして今回……初めて、私は六角に勝ちました。独りで無数の伝説を造り上げる最強の男に! といっても……勝てた理由は当然、私単体には在りません。私は――私たち白虎が、六角率いる玄武よりも一人ひとりが出来ることを全力でやり、隙間を補い合ったから、何とか越えることができたのだと考えています。連携する力の強さは……具体的な例を云えば、どこぞのカップルね」

【鞠】

「喧嘩売ってますね」

【信長】

「お、お静まりを会長……」

【菅原】

「だから改めて、気付きました。私は六角に勝つという嘗ての目的を達成しましたが……それよりもずっと、懐刀として六角に仕え、六角たちと共に栄光を作ってきたという“力”にこそ、価値はあったんだと」

【深幸】

「…………」

【菅原】

「故に――私は、確信しています。白虎!! 我々は今!! 勝利の盃と共に、最高の価値を手に入れた!!!」

【白虎】

「「「おぉおおおお――!!!」」」

【菅原】

「どうか、今日をいつまでも忘れないでほしい!! この勝利を!! 過程を!! 共に闘った、隣の友を!!」

【白虎】

「「「おぉおおおおおおおおお――!!!」」」

【菅原】

「ありがとう――ここに至る、全てにッッッ、ありがとおぉおおおおおおおおおおおおお――!!!!」

【白虎】

「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおお――!!!!」」」

 ……………………やっぱりいつも通りだった。

【鞠】

「頭おかしいでしょあの人」

【四粹】

「……昔からあんな感じですよ。ふふ……」

 先輩。この体育祭にて、私は今、完璧に理解しました。

 貴方ほどではないにしても、私はヤバい学園に来ちゃったんだって。

体育祭戦績11

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