4.31「結足」

あらすじ

「やるさ。云ったろ、全部俺が合わせるって!」砂川さん、最後の疾走。30人31脚とか本番で成功すると苦労した当事者たちは発狂して喜ぶんですが、ぶっちゃけ観客はかえって盛り上がりようないんじゃないかと思っちゃう4話31節。

砂川を読む

【秭按】

「位置について――よーーーい!!!」

【銃声】

「DON!!!」

【司会】

「始まりました――って、ああぁあああああ!?!?」

     

【鞠】

「ッ――!!!」

【深幸】

「ヌオオォオオオオオオッッ……!!!」

     

【司会】

「どう見てもカップルに見えない砂川・茅園ペア、いきなり全力疾走です!! 二人三脚で見れる速度では決してありません!!」

【観客】

「「「おぉおおおおおおお……!!!」」」

【白虎】

「「「いっけええぇええええええ!!!」」」

【菅原】

「かっとーばせっ、会長おぉおおおおおお!!!」

【信長】

「気張れよ、深幸いぃいいいいい!!!!」

     
vsmiyuki

【深幸】

「ッ――!!」

 いけてる……走れている!! この時点で奇跡!!

 だが、気付く。この速度は、今まで感じてきたものとはだいぶ異なると。

【鞠】

「…………!」

 ――足のリズムは、一定だ。そして僅かに……速度を抑えている。

 間違いなく、俺を考慮しての……必勝の妥協点。

【深幸】

「(俺が合わせるっつってんのによ――)」

 なら、あとは俺が……砂川に応えなければ、必勝は崩れる。

【深幸】

「ッ――」

 1つ目のハードルが目前に迫ってきた。

 ……さあ、感じろ。どのタイミングで砂川が跳ぶか……肩を組み足を並べる隣の女子の、全てを感じ取れ――

 ……………………。

【深幸】

「ッ!!!」

 今だ!!!

【司会】

「トップを独走する砂川・茅園ペア――ハードルを越えます!!」

【深幸】

「(よし……!)」

 このまま着地して――

【鞠】

「……! ッ――!?」

【深幸】

「何――!?」

 着地がズレて――いや、着地後のスパンがズレた!?

【深幸&鞠】

「「グッ!?」」

     

【司会】

「あっと、砂川・茅園ペア、着地に失敗し盛大に転倒しました! 大丈夫でしょうか……? その後ろから――桃井・細川ペアが抜きました! 朱雀チーム、1位です!!」

     

【深幸】

「やべ……クソッ――」

【鞠】

「焦らない」

 順位を抜かれた焦りを……隣で砂塗れ、出血までしてる砂川が即座に制してきた。

【深幸】

「砂川、悪い大丈夫か――」

【鞠】

「次のハードルでミスしなければ問題無くあの1位候補を抜けます。速度は大したことありませんから」

【深幸】

「……!」

【鞠】

「他は未だに後ろ。案外余裕ですよ。貴方次第ですが」

 …………本当。

 凄えよ、お前……!

【深幸】

「着地後すぐブーストするのな、お前!!」

【鞠】

「譲歩はしません」

【深幸】

「上等ッ!!」

 再度腕を組み直し……最初だけゆっくり合わせ――どんどん加速していく。

     

【司会】

「2位に下がった砂川・茅園ペア、再び全力疾走に入りました! 猛スピードで1位の桃井・細川ペアを追い掛けます!!」

【児玉】

「ふん……この種目で大事なのは速度じゃない! 失敗しない連携力だ!! 仮初めの協力なんぞで、あの紫上学園最強のカップルを倒せはしない!!」

【邊見】

「……だけど、そんな常識を、打ち砕いちゃう人だからね~」

     

【笑星】

「別チームだけど……何か応援したくなるよなー!!」

【四粹】

「会長、頭を打ったように見えますが……大丈夫でしょうか」

【笑星】

「大丈夫、気絶とかするならきっと勝ち抉り取った後だから!!」

【四粹】

「それは大丈夫ではないと思いますが……実際勝ちの執着は、相当強いお2人ですからね」

【瑠奈】

「いけーーにーちゃあぁああああん!!!」

【璃奈】

「おねーちゃあぁあああああん!!! がんばってーーー!!!」

     

【深幸】

「(……聞こえるぜ、瑠奈。璃奈)」

 お前達だって見てる、この舞台で……これ以上カッコ悪い姿、見せれるかよ!!

 2つ目のハードルが迫る。今1位のペアが跳んで……成功した。だがあの速度なら、このハードルで躓かなければすぐに追い越せる! 尚更、今度は絶対、失敗しねえ!!

【深幸】

「(感じろ――)」

 疾走する一方で、心を落ち着けるようにして――隣を。

【鞠】

「――――」

【深幸】

「――――」

 ……ッ――今だ!!!

【深幸&鞠】

「はぁああっ!!」

【司会】

「砂川・茅園ペア、2つ目のハードルを、越えます!! 今度は――」

 失敗――しねええぇえぞおぉおおお!!!

【司会】

「――着地成功!!! そのままの速度で、桃井・細川ペアに急接近します!!!」

     

【観客】

「「「おぉおおおおおおお!!!」」」

【瑠奈】

「よっしゃあ!!!」

【璃奈】

「やったーーー!!」

【児玉】

「ッ――おのれ!!」

【邊見】

「よし……! って、敵なのによしって云っちゃった~……」

【六角】

「やるねえ! 茅園、あの砂川さんに合わせるだなんて!!」

【菅原】

「快哉!! そのまま1位を貪れーー!!!」

【白虎】

「「「うおおぉおおおおおおおおおお!!!」」」

     

 よし――そのまま、

【司会】

「――今、砂川・茅園ペアが、桃井・細川ペアを追い抜きましたーー!!!」

 1位に返り咲く!!

【鞠】

「……何ですかアレは」

 だが、次はまた練習ゼロだとどう動いたものか分からない障害が待っている。

【司会】

「砂川・茅園ペア、ジャングル地帯に到達しました!!」

 ジャングル地帯――杭の道。それだけじゃなく、杭に網が結びつけられ、普通の走行は不可能。匍匐前進か何かで進んでいく地帯だ。なので一旦、停止せざるを得ない

【深幸】

「潜っていくんだよ、20mほど!!」

 足を互いに結んだ状態で匍匐移動……やったことないけど、これは相当イライラするぞ……。

【鞠】

「…………会計、これは移動の仕方に指定はあるんですか?」

【深幸】

「は……? いや……バンドを解かずに下さえ潜れば形式は何でも良い筈だ」

【鞠】

「じゃあ抱き合って転がればすぐ終わるじゃないですか」

【深幸】

「はぁ――!? マジかお前!?」

 ……………………。

 でも確かに超効率的じゃん!! 天才的発想!!

【深幸】

「だが、お前マジでそれやんの……?」

【鞠】

「負けるのに比べたら数倍マシでしょう! それとも、貴方のチームの勝利価値はその程度ですか!」

【深幸】

「ッ――云いやがったな、テメエ……」

 ……上等、その通りだ!!

 こんなとこで渋って、負けるとか巫山戯んなって話だよなぁあ!!

     

【司会】

「な――!? あ、あああれはああぁああ!?」

【汐】

「へええぇえええ!?!?」

【宮坂】

「――はっはっはっはっは!!!」

【笑星】

「ちょ――ちょおおぉおおおおお!?!?」

【四粹】

「考えましたね……これは、非常に強力な発想です」

     

【司会】

「1位の砂川・茅園ペア、何と茅園くんが砂川会長を抱き、そのまま横にローリングぅうううううう!!! これは凄い、凄いです!! タイムロス必須のジャングル地帯を高速で進んでいきます!!」

【信長】

「……来年からアレは規制されそうですね」

【菅原】

「しかし今年はセーフ!! 素晴らしい閃きね……このまま独走しなさい、茅園!!!」

     

【深幸】

「~~~~~……」

 き、気持ち悪い……20m転がり続けるって、結構しんどいぞ……。

【鞠】

「……おえ……」

【深幸】

「それは何が原因だゴラ」

 っと、折角速攻で抜けれたんだ、このままもっと独走しておきたい。

【鞠】

「次の障害は」

【深幸】

「可動式ハードル地帯だ。レバーが足と頭の高さを襲ってくるところでな。可動範囲端に到着したレバーは今度は逆走して前から後ろから連携を崩しにかかる。恐ろしい場所だよ……」

【鞠】

「……あれですか。しかし……アレならそこまで苦労しないでしょ。貴方次第ですが」

【深幸】

「……は――?」

 ……………………。

【深幸】

「なるほど――そういうことか」

【鞠】

「できますか?」

【深幸】

「やるさ。云ったろ、全部俺が合わせるって!」

 肩を組み、再び走り出す。

 そして、加速する――

 どんどん、加速する――!!

【深幸】

「ッ…………!!」

 まだまだ、加速する!!!

【司会】

「な――砂川・茅園ペア、ここにきてラストスパートをかけるのか、最高速です!! しかしまだ、最大の障害物が残っています!!」

 コースを曲がり……最後の100m。

 そこに展開される、50mの連携崩しの魔境。

【司会】

「可動式ハードル地帯! 前から後ろから、幾つものレバーがカップルの頭や足を狙ってきます。それをいちいち回避しながら走り続けるのは至難の業!! 逆転するも、逆転されるもいつもここで起き盛り上がる大一番です!!」

 そう、ここは連携を崩され続け、どんなに独走していたとしても2位以下に逆転される悲劇が過去に何度も起きている。俺たちにとって最大の絶望的な壁。

 前から来る奴は兎も角、後ろから接近してくるレバーをやり過ごすのは至難の業。練習ゼロの俺たちじゃまず太刀打ちできないだろう。

 ……ならさ。

     

【司会】

「ッ!?!?!?」

【児玉】

「な――何ぃぃぃ!!?」

【邊見】

「あっは……最高! 今日もある意味天才だなぁ、先輩!」

     

【司会】

「まさか――砂川・茅園ペア、2人の速度が速すぎて――」

 そんな事態が、絶対起きないようにしちゃえばいい。

【司会】

「後方接近のレバーが、2人に追い付きません――!!!」

     

【六角】

「レバーの速度は、二人三脚の常識的な速度を上回り、かつペアが怪我しないように抑えられている。だが、あの2人の常識外れの全力疾走なら……!!」

【信長】

「レバーの速度は2人に劣る! 特に鬼門とされる後方接近のレバーの処理の必要が、抑も無くなる!」

【菅原】

「ただし、前方レバー、およびいずれ追い越す前方の後方接近レバーを適切に処理し速度を落とさないのが前提だ。茅園……君次第だよ!!」

     

【深幸】

「ッ……!!」

 1つ目、足掬いのレバーを――

【深幸&鞠】

「ハッ!!」

 今までと同じ要領で、飛び越える!!

 その次、すぐに迫る2つ目、胴体~頭を狙うレバーは、可成り難しいんだが、さっきの咄嗟の打ち合わせ通り――

【深幸&鞠】

「ヌゥッ――!!」

 縛られた足を先端にして、スライディング!!

 こっからどう砂川が走行に戻るのか――刹那の時間、全身全霊で、感じ取る――!

【深幸】

「(……こう、か!!)」

 上半身を上げると同時に先端足で強く地面を蹴り込み、ブーストをかける!!

 よし、ミスせずに済んだ! あと、5本!!

     

【菅原】

「……二人三脚は基本的に、速度や運動神経というよりも2人の息が合うかが大事になってくるものだけど……」

【信長】

「…………」

【菅原】

「これまで彼のパートナーをしてきた松井から見て、どう思う? アレは果たして、息が合っていると云えるのか」

【信長】

「良いんじゃないでしょうか。元から、感じるところはありました。あの2人は……もしかしたら、俺と深幸のコンビよりも、強く、煌めく結果を出すことができるのではないか、って」

【菅原】

「そうだね……案外、彼女との姿も、なかなか様になっている。今年度の紫上会も――面白そう」

     

【司会】

「砂川・茅園ペア、もうすぐ可動式ハードル地帯を越えます!!! 過去に類を見ない、圧倒的記録です!!」

 最後の1本……端に到着し、折り返さんとする後方接近レバーが……停止した瞬間!

【深幸&鞠】

「ハッ――!!!」

 スライディングで抜ける!!

 上半身を起こし、先端足で地面を蹴り――疾走をやめない!!!

【司会】

「――越えました!! 砂川・茅園ペア、一度も怯むことなく、可動式ハードル地帯を突破しました、あと30mです!!」

 キツい。胸が破裂しそうだ。本来俺の身体機能じゃ実現しえない時間、この速度を維持しているから。

 だが――絶対、足を止めたくなかった。遅れたくなかった。

 何故ならば。

【鞠】

「ハッ……ハッ……――!」

 ――隣で、走り続ける。

【鞠】

「これ、で――」

【深幸】

「ッどうだあぁああああああ!!!」

 それが、俺が今までずっと求めてきたモノなのだから。

【司会】

「――ゴーーーール!!!」

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