4.30「最後の闘い!」

あらすじ

「わ、私がコレに出てやる義理は……」砂川さん、組みます。長かった体育祭編、いよいよ大詰めです。そして4話における砂川さんの災難も大詰めな30節。

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vsmari

【鞠】

「――??」

 ……んんんんんんんん???

【鞠】

「会計」

【深幸】

「……何だ」

【鞠】

「何だじゃないです。何で私の左足、縛られてるんですか」

 それも、お前の右足と。

【菅原】

「うん、似合ってる!! 似合ってるよ、お2人さん!!」

【深幸】

「団長、そういうのいいですから」

 着替え終わってのんびり校舎から出たところで「もそもそしてねえでコッチ来てくれ!!」とコイツに手を引っ張られ、ほぼ全力疾走。

 で……今、私は入場口に居た。それプラス、この足の枷。嫌な予感というかもう予想はついている。

【鞠】

「嫌ですよ? 出ませんよ?」

【菅原】

「そこを何とか(←肩もみ)」

【信長】

「お願いしますッ!!」

 うわー……一体コイツらどんだけ私の事嫌いなんだー……

【鞠】

「大体、出場選手は全員出席している筈ですが」

【信長】

「実は、先の団体対抗リレーに出場した阿部・大場ペアの阿部が足を怪我してしまい、出場が困難になってしまったんです……そうなれば、大場も練習してきた力を存分に発揮するのは難しい」

【菅原】

「だったら、いっそ初心者でも相性が良い人同士で新しくペア組んで代打にした方がまだ勝機があるかもとね」

【鞠】

「次って……」

 カップルリレー……全種目の中でトップクラスの最高点、そして屈指の難関種目。一番疲れるのは間違いなく3000m走だが、それはぶっちゃけ走ってれば勝てる。だけどこれは二人三脚状態な上に、ハードルが置かれてたりする。そして500mも走らされる。

 足が速ければいいってもんじゃない。相当パートナーと意思疎通し、常に連携齟齬の無い状態で走らなければライバルに差をつけることはできない。

 そんな練習必須な種目に……いきなり私に出ろと? これ、私を陥れるつもりじゃね? 私に恥かかせるつもりじゃね?

【鞠】

「わ、私がコレに出てやる義理は……」

【深幸】

「――頼む!!!」

 ッ……!?

 超至近距離で、チャラ男が斜めに私に向かって、頭を下げてきた。ちょっとぶつかりそうになった。

【深幸】

「お前しか居ないんだよ……!!」

【鞠】

「んなわけないでしょ、白虎チームどんだけ居ると思って――」

【深幸】

「こんな絶望的な状況をぶっ飛ばせる奴なんて――砂川しか居ないんだ!!」

【鞠】

「……貴方……」

 どうして私に……頭を下げる。

 貴方はそんな性格じゃないと、思ってたのに。

【深幸】

「お前の走りは……この中じゃ、誰よりも俺が知ってる。お前の速さを……強さの秘訣を、俺が一番感じている。そんな俺が……きっと白虎で一番、お前の速度に合わせられる」

【鞠】

「……合わせるって。これは速度以前の種目でしょう。抑も私と貴方とか、組み合わせ最悪――」

【信長】

「そんなこと、ないですよ。上手く言葉にできませんが……会長と深幸は、今回の体育祭で特に輝いてる2人です。そんな2人の力なら……奇跡かちが起こせる、そんな気がするんです!!」

【深幸】

「お前は全力で走ってくれるだけでいい。俺が全部、それに合わせる。全部砂川に合わせてみせるから!!」

【鞠】

「…………」

 ヤバい……

【菅原】

「それから……砂川さん、ちょっとこっち見てみて」

【鞠】

「は――?」

【白虎集合】

「「「…………」」」

【菅原】

「これほど皆がめちゃ期待してる状態で、断ろうものなら~~――?」

 退路が……無い……ッ。

【鞠】

「……絶対……赦さぬ……チャラ男と団長、赦さぬ……」

【深幸】

「……いや、ホント悪いと思ってるんだが……よろしく頼む」

 溜息をつきながら……本日何度目か分からない諦めを、定める。

【鞠】

「……今後マジで私に関わるのを自重してください、団長」

【菅原】

「随分嫌われてしまったけど……それも、3年最後の体育祭で、六角に勝つ為!! 勝つ為ならば、私の好感度など幾らでも捧げるわ!!!」

【白虎】

「「「うおぉおおおおおおおお……!!!」」」

 もうヤダこのしらふ酒乱。

【司会】

「それでは、お待ちかね!! プログラムナンバー16、紫上学園カップルリレー!! 各チームから男女ペアを2ペアずつ輩出し、長く険しい道を共に走ってもらいます!! 勝利の秘訣は……カップルの如き絆!! 既に男女カップルがそのまま出場してくるのが大半です!! どうか、破局しませんように――!!」

【観客】

「「「うおおぉおおおおおおおおおお!!!」」」

 ホントに練習も無しで、入場していく。

 現時点でちょっと走りにくい……が、初めてにしては随分簡単にジョギングできている。それは……

【深幸】

「…………」

 コイツが本当に、私に合わせているからだろう。

 とはいえ、こんな速度じゃ勝てない。今の得点差から考えて、私たちかもう一つのペアが1位を取らなければ、勝ちは無いだろう。

 1位以外は期待を裏切るに等しい……一番大事な局面で役に立たないと莫迦にされる可能性・大。そして、先輩たちに飛び火……いつものバッドエンドの影がちらつく。

【深幸】

「本当、全力出してくれていいからな」

【鞠】

「今まで附いて来れてないくせに」

【深幸】

「いんや、ギリ附いていけてたね! 絶対、附いて行ってみせる。俺は……そういうのは得意なんだからな」

【鞠】

「……そうですか」

 「懐刀」。

 本来もっと輝ける筈のチャラ男の求める、らしくない自分の生き方。

 ……つまり、一つの祭りに留まらないモノを懸けているのは、私だけじゃないということだ。

【鞠】

「莫迦ですね」

【深幸】

「いいじゃねえか、莫迦。上等だ……本気で、勝ちに行く為なら、白虎が勝つ為なら……俺は何にでもなる」

 ……この、突然現れた最大の危機の中、私は凄くどうでもいいことを思った。

【秭按】

「位置について――よーーーい!!!」

 この人――案外、チャラ男じゃないのかもしれない。

【銃声】

「DON!!!」

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