4.24「今度は俺の番」

あらすじ

「えへへ、ごめんなさい、まー。にー」砂川さん、追い打ち喰らいます。こっからは皆の兄貴・深幸くんがメインで頑張るターンとなります4話24節。

砂川を読む

vsmari

Time

11:30

【鞠】

「はぁ……はぁ……」

 ……気合いでまだ走れはするだろうけど、体力はもうゼロだろう。いつまで経っても息が整わない。周りの奴らもう既に涼しげでムカつく。

【司会】

「1位は――E組。玄武チームでした!!」

 団長的には一番負けたくない玄武チームに負けてしまった。まあ、予想を考えたら2位を取れたのは奇跡として喜んでおいた方がいいだろう。

 そして喜べ私。点数に関係するもので、出場する種目がこれで終わった。あとはのんびり、来場してきた企業関係者を挨拶げいげきしつつ行く末を眺めていればいい。

【安倍】

「……会長さん、ナイスファイト」

【鞠】

「……ん?」

 ……前に居た人が話しかけてきた。クラスメイトだろう。

 ……………………。

 んんん??

【鞠】

「はぁ……?」

【安倍】

「な、何……? 松井と会長さんが頑張ったから、2位になったんだし……それ評価しちゃダメ?」

【鞠】

「別に……ダメでは、ないでしょうけど」

【安倍】

「……でしょー」

 ……んんん……?

【鞠】

「(何のつもりだぁぁ……?)」

 何で忌み嫌う私に、そんな言葉をかけてきた……? 意図が読めない。何だろう、怖い。

【鞠】

「…………」

【司会】

「それでは、退場してください」

 南西の退場口に列を乱さず走りながら……腕をさする。

 新手の嫌がらせ、だろうか……。

【鞠】

「……兎に角、休も……」

Time

13:00

【鞠】

「……………………」

 やっと……戻って、これた……。

【笑星】

「あっ、鞠会長! 何処行ってたんだよー! 会長不在だから折角挨拶しに来てくれた人達困ってたよー!!」

【鞠】

「……その人達はほぼ既に処理しましたから、問題ありません……」

 クラス対抗リレー退場が大体11時半。なのに今13時。1時間半も自分の席に戻らず何をしていたかというと、退場するな否や待ち受けていた目的ありきの方々と挨拶せんとう開始。

 やっと処理しきったな、と思って数歩進んだらまた複数人来る。

 それを繰り返していたらこんな時間になった。私の頑張りを褒め称えて好感度を上げておこうという魂胆なんだろうけど、それならまず少しは私がドチャクソ疲れてる可能性を考えてほしい。

【鞠】

「……あーーー……」

 椅子、最高。

【笑星】

「取りあえず、プカリだよ。どうぞ」

【鞠】

「…………」

 雑務からペットボトルを貰った。

 もう考えるの面倒臭いから普通に受け取ってしまった。まぁいっか……

【笑星】

「……あ――(俺のと間違えた……)」

【鞠】

「……?(ごくごくごく)」

【笑星】

「う、ううん、何でもない! 何でもないよ……ははは……!(←赤面)」

 何でもない顔してないんだけど。

 まさか――毒でも入ってる? そういやこのペットボトル開封済みだったし――

【鞠】

「……………………(←睨)」

【笑星】

「なな何でもないってばーーー!!」

 なら何故逃げる。

【鞠】

「……まぁ、そんな策士なこと奴がやれるわけないか……」

【四粹】

「――? 笑星さんはどちらに?」

【鞠】

「知りません」

【信長】

「会長、お疲れ様でした。会長のお陰で、白虎の勝利に現実味がだいぶ増しました」

【深幸】

「信長もナイスファイト。長距離でだいぶ稼げたな。」

【四粹】

「……青龍は調子が悪そうですね」

【信長】

「……調子が悪いというなら、それ以降の白虎もですが」

 私が不本意ながら社会人たちと会話しているうちに、随分状況は変わってしまっている。今現在部外者綱引き。それに至るまでに、玉入れ、玉転がし、B等部クラス対抗リレーが終わった。

 で……結果、こうなった。

体育祭戦績5

 一時期トップだった白虎は今では朱雀と玄武に負けている。特に恐れていた事態……玄武に差を付けられるという展開だ。玉入れと玉転がしで惨敗しているのが大きい。クラスリレーでも得点率が伸びず、青龍にも追い付かれ始めている。

 部外者綱引きも現状、白虎が大敗している。別にいいのだけど、私の作った優勢は既に跡形も無く死んでいた。流石に悲しい。

 まあ……これ以上闘いにおいて一個人が目立つのはやめておいた方がマジでいいし、こっからはチーム全体で頑張って足掻けばいい。私は寛いでやるから――

【???】

「にー!!」

【鞠】

「ん……?」

 と、気持ち面で本格的に寛ごうとしていたところに、またお客さんが快適空間に入ってきた。

 溜息を隠して立ち上がり後ろへ向く……と、

【璃奈】

「きたよー、にー!!」

【瑠奈】

「にーちゃん、はしってたー!」

 私の想定を遙かに下回るお客さんだった。ちっちゃい。

【深幸】

「わざわざ此処に来なくてもいいのに。でも、来てくれてサンキューな!! 璃奈、瑠奈!!」

【子ども】

「おれもきたー!」

【子ども】

「みゆきにーちゃん、えへへー!!」

【子ども】

「おどってー!!」

【深幸】

「後でなー」

 ……児育園児、か。多分この学園のだ。つまり以前紫上会が見学しに行ったところの。

 今度は逆に、この体育祭に観客としてやって来た、ということか。自分が運動するわけでもないのに、何が楽しいの本当。

【母】

「ごめんなさいね、忙しいところにこんな団体で来ちゃって」

【深幸】

「おお、お袋もお疲れさん」

【笑星】

「え……!? お袋――お母さん!? 茅園先輩の!?」

 まさかのチャラ男の母親、来る。

【母】

「松井くん、お疲れ様。長距離、凄かったわねー」

【信長】

「御無沙汰しています。ご評価感謝しますが、所詮は2位です」

【母】

「本当、勝ち負けにはストイックねぇ。それと……あ」

【鞠】

「…………」

 ……コッチ見た。

【母】

「会長さん、すみませんこんな大勢で……紫上学園児育園のうめ組です」

【鞠】

「……どうも」

 うめ組……渋くない? あとチャラ男の母親、園の職員だった。

【璃奈】

「あ、おねーちゃんだー!! えへへー!!」

【鞠】

「……!?」

 何か一人の女の子が私にくっついてきた。太ももに抱きついてきた。

 ――ってこの子、確か運動会で私にトラウマ植え付けた子じゃん!

【深幸】

「はぁ!? 何でお前、璃奈と知り合いなんだよ!? 取りあえず離れろって!」

【母】

「こらこら、璃奈ー? 会長さん困ってるでしょー?」

【璃奈】

「えへへ、ごめんなさい、まー。にー」

【鞠】

「…………まー? にー?」

 …………まさか。

 まー? ……にー

【鞠】

!?!?!?

【深幸】

「オイ……何だその目は、どういう意味だゴラ……」

 特に意味を載せた覚えは無いけど、取りあえず私は頭痛がしてきた。また熱中症かな。

【笑星】

「へぇ、君、茅園先輩の妹さんなのかー! 歳離れてるんだねー」

【深幸】

「こっちが璃奈。そっちが瑠奈。双子の兄妹なんだぜ。どうだ可愛いだろー!」

【鞠】

「……………………」

【深幸】

「オイ何だその沈黙は」

 座ろうかな、と思ったけど、その前に子どもたちに囲まれる。

 人の運動を見て盛り上がれるっぽいこの子たちはしっかり私の走りも見ちゃってたのだった。

【子ども】

「おねーちゃん、すごいよなー!! すっげえはやかったー!!」

【子ども】

「かいちょーさん、かっこいー!!」

【子ども】

「おれも、はやくはしりたーい!!」

【鞠】

「……………………」

【笑星】

「おお……!! 見る見るうちに鞠会長のHPが抉られていく!! 凄いなー皆!!」

【信長】

「感心している場合なのだろうか……」

【深幸】

「あっという間に人気者だなぁ。その人気がA等部でもあればよかったのになー」

 テキトウなコメントしてないで事態の収拾をしろチャラ男。

【子ども】

「かいちょーって、すごい、えらいひとなのー?」

【鞠】

「べ……別に凄い人じゃないですよ。全然全然。なのであんまり注目しないでくださ――」

【来賓】

「失礼、ちょっといいですかな」

 こんなタイミングでまた来賓ズッ!!!

【鞠】

「本日は来場くださり感謝の限りです」

【来賓】

「いえいえ、来た甲斐ありましたよ、あんな凄い走りを見れるだなんて。一体どんなトレーニングをしたらあの全力疾走を維持できるんですか?」

【鞠】

「特に工夫とかはなく、ただひたすらに走ることに慣れること、でしょうか」

【来賓】

「そのひたすらという4文字に深みを感じますなぁ!」

【来賓】

「会長様はもしやオリンピアに出れるのではないですか?」

【鞠】

「予定も意思も無いのが正直なところです」

【来賓】

「勿体なく感じますが、一峰のことを考えれば断念せざるを得ないところではありますなぁ」

【四粹】

「(……一峰……?)」

 ……色々沢山、聞き飽きた褒めを戴く。

 それは慣れれば何てことないのだが、今問題なのはその処理を後ろで子ども達に見られていることだった。

【鞠】

「どうぞ最後までお付き合いください。……ふぅ――」

 迎撃終わり。

 振り返る。

【子ども達】

「「「…………!!!」」」

 うーん、ヒーローを見てるような眼差しだなぁ。

 案の定、凄いのが確定したこの私をまた囲んでくる。

【子ども】

「すっげーほめられてた! すんごくすっごい、かいちょーさん!!」

【子ども】

「わたし、かいちょーさんみたいになりたーい!!」

【璃奈】

「えへへー、おねーちゃん、いいかおりー!(すりすり)」

【鞠】

「……………………」

【笑星】

「おっと、あの顔は多分もうHP100分の3くらいしか残ってない顔だよ!! はいはい、会長さん疲れてるから、座らせてあげよー!!」

【子ども】

「「「はーーい!!」」」

【深幸】

「そんでもってお前たち、お待たせしたな、ダンスの時間が始まるぜ!!」

 ……凄くどうでもよくなってるけど、綱引き終わったっぽい。確か次は……

【信長】

「ダンス応援、だな。深幸、頼むぞ!! 白虎の勝利の為に!!」

【笑星】

「へヘッ、俺も準備しないとなー。見ててね鞠会長!! 玖珂先輩!!」

【四粹】

「楽しみにしています」

 つまり今度は、チャラ男のターンということだ。

【鞠】

「…………」

【深幸】

「ちゃんと見とけよ。芋なお前には出来ねえモノを、見せてやる!」

【鞠】

「……聞き飽きました。さっさと行けばいいと思います、代表者」

【深幸】

「云われずとも! じゃあ瑠奈たちも、頼むぜー!!」

【瑠奈】

「まっかせろー!」

【四粹】

「……?」

 チャラ男、出陣。あと雑務もどっか行った。恐らくはダンスメンバーなんだろう。

 ……で、それはいいんだけど……。

【子ども】

「へへ、たのしみだなー、なにおどるんだろ!」

【子ども】

「きっとブリキュアだよ!!」

【子ども】

「とうぶけいさつ、かも!!」

【瑠奈】

「にーちゃん、すっごいはりきってたなー」

【璃奈】

「へへー……おねーちゃ~ん……♥(すりすり)」

【鞠】

「…………」

 君ら、ここで観るんですか――?

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