4.17「前夜」

あらすじ

「主役は少なくとも俺じゃないからな、お前ら」砂川さん、頑張りました。深幸くんも頑張りましたのでいよいよ次回から当日な4話17節。

砂川を読む

 1週間というのは長く感じることもあれば、短く感じることもある。まあ1ヶ月だろうが2ヶ月だろうがそれは変わらないけど。要は、その期間内にどれだけの目標が詰められているかなんだと思う。

 では、私はその1週間どう感じたかというと、長かったと思う部分もあれば、短かかったなとも感じる。

 すなわち結論、どうでもいい思考、ということになるだろうか。

     

【秭按】

「阿部くん、この問題を解説してください」

【阿部】

「ここは、取りあえずピタゴラスってですね――」

【秭按】

「その初動が既に違うわ。砂川さんはどう?」

【鞠】

「……? 解説、するとこあるんですか……?」

【秭按】

「間を取りましょう。松井くん」

【信長】

「俺の指名率、異様に高くないですか先生……?」

 いつも通り授業を4限まで受けて。

     

【菅原】

「ん~……? んんんん……(←凝視)」

【鞠】

「何で脚を凝視しているんですか。確か同性相手でもセクハラで訴えられる時代ですけど、どうしましょうか」

【菅原】

「ごめんなさい。思った以上に、準備してきたんだなぁと感心してしまって。ほら、私もしっかり勝ちたいから、皆どれだけ気合いが入っているかも確認しておきたくて(←揉む)」

【鞠】

「蹴りますね」

【深幸】

「あと1週間もねえぞ! ビデオも渡したからしっかり覚えてこい!! 万一どうにも分からない動きがあるなら何でもいいから俺に相談しろ!!」

【学生】

「すいませんリーダー、俺ちょっとここのところが――」

【深幸】

「よし、よく相談してくれた! そうだな……放課後時間取ろう。個別練習の時間、いいか?」

 5限は体育祭実行委員主導で各チームそれぞれの学生が競技練習。

     

【笑星】

「わっしょいわっしょい!!」

【信長】

「わ、わっしょい!」

【深幸】

「待て待て前衛2人、上に人乗ってるから、上下に揺らしちゃダメだろ!!」

【四粹】

「会長、大丈夫ですか……?」

【鞠】

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……」

 放課後になったら紫上会面子は集まって御輿練習。あと私(と勝手に附いてくる副会長)は他企業打ち合わせ。勿論一般学生は引き続いて体育祭練習に仕上げをかけている。

     

【鞠】

「はぁ……はぁ……ッ!!」

【深幸】

「やっぱ化け物だろぉおおおおおお……!!!」

 その後、夕方には走り込み。

     

【鞠】

「シーフードカレー。あとハンバーグとポテトサラダ。お代わりは自由にどうぞ。余った分は明日に持ち越します」

【深幸】

「しじみ入ってるな、このカレー……そして普通に美味え! ハンバーグ作れるなら普通に料理できるってことでいいだろ!」

【鞠】

「本当に料理できる人というのを貴方は知らないんです多分」

 夜に帰ってきて晩ご飯を作り、各々やりたいことをやる。

     

【鞠】

「今朝の主食はおにぎりにしました。余った分は昼食にでもするといいです」

【深幸】

「何だろうな、しじみの入った味噌汁見ると、安心する身体になったな俺……そういえば昨日のカレーは?」

【鞠】

「余った分を使ってカレーうどんにする予定です。」

【深幸】

「最高のコンボだわ。うし、今日も頑張るかー」

 朝早くに起床。朝食。

     

【鞠】

「ふっ……ふっ……」

【深幸】

「ぬおぉおおおおお……!!」

 で、走り込み。

 8時に紫上会室に戻って制服に着替え授業準備。

【鞠】

「……ていうか、何で貴方まで走り込みしてるんですか。クラスリレー以外、走らなかったのでは」

【深幸】

「うっせえ、何かお前に運動で負けたままって癪なんだよ!」

【鞠】

「めんどくさ……」

     

 大体こんなのを繰り返し――

     

Day

5/24

Time

15:30

Stage

4号館 体育館

 ――愈々、リハーサルまで終わってしまった。

 各々まだ練習の暇は作れるが、全体としてできるものは全て終わった。本番を待つだけの段階まで来た。

 だからこの白虎チームの集まりも最後となる。

【信長】

「皆、今日まで俺たちの指示に快く従ってくれて、大変助かりました! ありがとうございました!!」

【学生】

「「「うおおぉおおおおお!!」」」

【信長】

「では、本番を控えて……最後の言葉を、団長、お願いします!」

 もう何度見たか分からない、ステージの上の団長がマイクを受け取る無駄に厳かなプロセスを相変わらず端っこに体育座りで眺める私。

 ……その隣に、端っこに居ていいのかよって奴も居るのはいつも通りじゃない。

【深幸】

「今日は、普通に自宅に帰るんだよな?」

【鞠】

「はい」

 私個人は、「衣装」というものがまだ片付いていない。あと最近運動場にすら顔を出さなかったからか、メイドから恐喝の気配がする着信の嵐が。

 仕方無いから今日はシェフに本物の料理を振る舞ってもらうことになった。

【鞠】

「貴方も帰るのだから、問題は無いでしょう」

【深幸】

「ああ。……何か想定外に、世話になったわ」

【鞠】

「宿泊するならもっと計画性を立てるべきです」

【深幸】

「みたいだな……それに関しては素直に受け取る」

 で、ステージの方は……

【菅原】

「闘いは寧ろこれからですが、一つの区切りで感謝を述べたいと思います。中間試験がありながらも、放課後練習、特に公園練習に附き合ってくださり、本当にありがとうございました。私なりの調査ですが、恐らく今年度最も練習を積んだのは我々白虎チームです。この成果は必ず、明日の本番にて発揮されることでしょう。今日はあまり無理をせず休息をしっかり取って、明日に備えてください。少し短いかもしれませんが、此処での私の言葉は以上とします。冗長なのは好きではありませんし……そういうのは、明日勝った後に酌み交わしましょう!」

【学生】

「「「おぉおおおおおおおお!!!」」」

 だから酒呑みたいのかよ元会計。

【菅原】

「私の言葉は以上ですが……敢えて私から個人に感謝を送るとするならば――砂川会長」

【鞠】

「ん……は、私? 何で?」

 定位置に体育座りしていた私に、大勢が一斉に視線向ける。

【菅原】

「貴方の励みがあってこそ、今日の私たちがいます。本当に、ありがとうございました」

【鞠】

「あの団長絶対私虐めようとしてる……」

【深幸】

「いや、多分弄ってるだけだと思う」

 何にしても、この騒がれ方はよろしくない。

 ……そしてこっから何も進展がない。多分、これは私がステージに立たなければずっとこのままなんだろう。気まずい。

【深幸】

「でもまああの先輩のことだから、何か真剣な理由はあると思うぜ。行ってこいよ」

【鞠】

「……抑も副団長の貴方がどうしてこんな端っこに居るんですか」

【深幸】

「巻き込もうとすんなよ……」

 私、ステージに立たされる。

 一応チャラ男も端っこに居るのをやめて、中央に近付いていった。それを眺めていたらマイクを手渡された。

【鞠】

「いや、何で手渡される」

【菅原】

「コメントを戴こうかと。上に立つ者として、下々の気合いを底上げしてもらおうかと」

【鞠】

「莫迦ですか、士気を上げるための集まりであるのに私指名したら興醒めするに決まってるじゃないですか」

【白虎】

「「「(うん……)」」」

 ほら、皆無言で頷いてるじゃん。

【菅原】

「私は何も間違ったことは云ってません。貴方は紫上会として、体育祭が白熱し、且つ安全であるように沢山の仕事をこなして準備を続けてきた。玖珂から、全て聞いてますよ」

 監視役ッッッ。

【菅原】

「それで、どうでしょう? 会長の貴方から見て、明日の体育祭は開催できますか?」

【鞠】

「できないわけないでしょう。寧ろしなきゃクレームが殺到しますよ。明日どんだけ客来ると思ってんですか」

【白虎】

「「「おぉおお……!」」」

 ……チッ……何かこの人に乗せられてる気がする。

 さっさとマイク返そう。

【鞠】

「……全て、紫上会の仕事だからやったまで。知っての通り、貴方たちのことなど微塵も慮っていません。故に――各々勝手に、やればいいと思います。勝ちたければ、勝てばいいと。明日の主役は紫上会会長などではありません――ですよね?」

 いや、投げよ。

【深幸】

「はぁ!?」

 意図を察したのかどうかは知らないけど、取りあえず私の投げたマイクをチャラ男はキャッチした。

【深幸】

「……危ねえな、ったく」

【菅原】

「なるほど……では、最後にチームの勝ちを望み、最も奔走してくれた茅園副団長、締めの一言を!!」

【深幸】

「……主役は少なくとも俺じゃないからな、お前ら」

 まだそんなことを云う。だけど、それでいいと思う。

 主役なんて、各々勝手に決めればいい。各々勝手になればいい。

【深幸】

「あそこの暴投会長が云ってた通りだ。後は細かいこと考えず、何にも縛られず、全力で楽しめや。ただ、俺から一つ、お前ら全員と共有する事実だけ、ここで云うぞ!!!」

 さあ……運命のお祭りが始まる。

【深幸】

「俺たちが、優勝する――!!!」

【白虎】

「「「うおおぉおおおおおおおおおお――!!!」」」

 それを越え――私は、私の歩む道を進み続ける。

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