4.15「チャラ男、泊まる」

あらすじ

「いいだろ? 俺だって……勝者なんだからよ」深幸くん、砂川さんに攻撃を仕掛けます。状況だけ見たらちょっと憧れちゃう4話15節。

砂川を読む

Stage

紫上会室

 兎も角、紫上会室に到着した。

 認証し、扉が開かれて、無人の空気が私を囲む――

【鞠】

「――?」

 ――と思ったけど、音がする。

 靴の音。歩いているような定間隔のものではなく、時に激しく、時に滑り、時に鎮まり……

 日常必要とされない、運動の気配を感じる。となると、誰がいるのかはまあ、予想はついてくる……

【鞠】

「……今何時か知らないんですか」

 音のする方向は、リビングエリアとは反対側。

 仕方無く私はそっちへと歩いていく。

     

【深幸】

「――よう」

 私の姿を認識した予想通りの男子は、ダンスを止めてステージから私を段差分見下ろす。

 ここって、演説リハをやる為のものじゃなかったっけ。ダンスに使ってるよこいつ。

【鞠】

「もう既に、下校がしづらい時間帯なんですけど」

【深幸】

「ああ、分かってるよ」

 汗が蒸発したような、熱気を感じる。その受けた感覚だと、相当の時間ここで練習をしていたんだろう。

【深幸】

「心配いらねえよ……俺、体育祭までここに泊まるから」

【鞠】

「……はぁ?」

【深幸】

「お前だって好き放題宿泊してんだから問題ねえだろ? 俺は、紫上会面子だからな」

 最悪だ。もう一回云う。最悪だ。

 なんでダンスしか練習することないのに連日宿泊する必要があるんだろう。一体コイツはあと何年分私にストレスをプレゼントすれば気が済んでくれるのだろう。

【深幸】

「いいだろ? 俺だって……勝者なんだからよ」

【鞠】

「…………」

 マジ読めねえ。何考えてるんだろ。

【鞠】

「……私の仕事効率を下げないようにお願いします。具体的には、五月蠅くし過ぎないように」

【深幸】

「ああ」

 どうやら音源はイヤホンで聴いてるみたいだし、ステップの音ぐらいなら私もそこまで邪魔されないだろう。

 コイツを退かす安全な理由が見つからない以上、私も我が儘は云えない。

【鞠】

「はぁ……」

【深幸】

「…………」

 まあ男女一緒の屋根の下に、なんて道徳的問題もあるといえばあるが、コイツは抑も私をほぼ女性として扱っていないので問題無いだろう。それを心配したら逆に私が辱めを受ける羽目になりそうだ。

 つまり、お互い無視していい存在。なら1人で此処に居るのと大差無い。

 私も予定通り、仕事に着手しよう。

 ……。

 …………。

 ……………………。

Time

1:45

【鞠】

「ふむ」

 ……遅れは完全に取り戻せたとみていいかな。

 近隣への体育祭周知は済ませたし、観客も保護者などを対象とした事前調査でだいぶ確保できそう。それに企業提携も……

【鞠】

「思った以上に、スムーズに進んだ」

 色んな企業に顔を出してみて分かったけど、どうやら紫上学園の学生は、学業に真摯に取り組む威勢が中央大陸では結構評価されているらしかった。

 偏差値も上昇傾向にあるようだし、学園の雰囲気も――今年度は考えないことにして――決して悪くない。

 だから、進学を検討している学生たちも含めて、スカウト意思を示し目を付けておく企業が多いのだ。それに関しては勿論別の学園でも起こっている現象だが、そういう背景もあって保護者たちだけじゃなく多くの外部者が行事の際には駆けつける見込みがある。

 学園にとって学園行事での集客数はとても有難いもの。加えて体育祭、それからずっと後に控えている文化祭とかでは飲食物提供を快く引き受けてくれる企業も多く、本当こちらの計画がスムーズに進んだ。

【鞠】

「……まあ、私目当て、も多かったけど」

 さて、もう2時だ。焦ってやる作業も無いことだし切り上げるとする。

 ……衣装問題のこともあるし、当日前には一度帰った方がよさそうだ。あまりメイドとか号泣父親とかに会いたくはないのだけど。

【鞠】

「シャワーでも……いや待て」

 自意識過剰かもだが、一応アイツに警告しておいた方がいいのでは。いや、流石にシャワー音で気付くとは思うけれども、一応ね。

 ということでステージを覗く。

【深幸】

「ぐぅ」

 ……チャラ男、倒れていた。

【鞠】

「…………」

 ステージに昇って、確認。

【鞠】

「寝てる」

 この感じからして、疲れて、一旦休憩とかいって寝転んで……そのまま寝てしまった感じだ。ダサい。

 てか風邪引くでしょコレ。

【鞠】

「まあ私には関係な――」

 ……………………。

【鞠】

「…………」

 ……………………。

【鞠】

「……~~~……」

 ……リビングエリアに行き、屋上で干して、夕方入れ込んでおいた掛け布団もとい毛布を回収。

 で、戻ってくる。

【深幸】

「ぐぅ」

【鞠】

「……寝てる時は、静かじゃん」

 上から毛布、かける。

 即刻立ち去る。

【鞠】

「何か、羽織るもの他にあったかな……」

 自分の持ち物を思い出しながら……学生的には遅い時間帯のシャワーを浴びに、私はしっっかり着替えを持って脱衣所に向かった……。

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