3.05「ギロチン」

あらすじ

「ごきげんよう」砂川さん、3話を飾ります。流血沙汰はありませんのでご安心くださいな3話5節。

砂川を読む

【鞠】

「監視カメラを確認すればいいんですから」

 この一言の瞬間。

 奴ら一帯にだけ、冷気が通った。

【学生】

「は――? か――監視――」

【鞠】

「監視カメラ。まさか知らないなんてことないですよね? この犯罪社会、公共施設には必ずといっていいほど設置されている防犯設備。青峰区にいたっては住宅街50mにつき1台以上の設置の張り切りようです」

 他の大陸は知らないが、ここでは最早常識といっていい存在だ。ならこの学園に設置されてたって、おかしくない筈。

 そんな当たり前のことに……奴らは驚いていた。

 と――

【???】

「― 取りあえず、青塗るぞー ―」

 突然、グラウンドのスピーカーから大音量で、何者かの声が流れ始めた。

【深幸】

「何だ!? これ……放送……」

【四粹】

「――会長、これはまさか……この場の音声データですか?」

【学生】

「「「!?!!?」」」

【鞠】

「……だとすれば」

【???】

「― おい、早くしろ! 先生たちに見つかったら終わりだからな!! ―」

【???】

「― 大丈夫、今頃職員会議やってる筈だから。数十人で見回りもしてるからな、まずバレねえよ ―」

【???】

「― 何て描くよ? 特に指示とかされてねえから、自由でいいんだろうけど…… ―」

【???】

「― 単純に「死ね」とかでいいんじゃねえの。あいつ、単純思考そうだし ―」

【???】

「― はは、確かになぁ ―」

【鞠】

「声の性質が、明らかにここにいる雑務のそれとは違います」

【四粹】

「しかも、複数人の声が聞こえます」

 そして……この謎の人物たちは、次に決定的な言葉を落とす。

【???】

「― へへ……どうよ、完成! 初めてやったけど、俺結構上手じゃね? ちゃんと読めるよな ―」

【???】

「― おいおい、あんまり上手すぎても、寧ろ乱雑な方が堊隹塚っぽく見えるんじゃねーの? ―」

【???】

「― んなこと云われても、もう描いちまったし。んじゃ、呼ぶか。皆に伝えてくれ。堊隹塚は? ―」

【???】

「― 部活回ってるって。予算調整の為だとかいって。これから地獄に堕ちるとも知らずにね! ―」

【???】

「― うっし、んじゃ散らばれー! そんで校舎班、騒げ騒げ! あ、おいスプレー缶はここに捨てておけ ―」

【???】

「― え、何で? ―」

【???】

「― アイツ莫迦そうだし、落ちてるスプレー缶何も考えずに拾うかもだろ? そうなったら……云い逃れはできねえよな。此処には、監視カメラなんて無いんだから――! ―」

 ……突然の放送が、終わる。

【鞠】

「因みに、一般的な放送の回路を使ったから、今のはどこの校舎にも、当然職員室にも流れてます」

【学生】

「「「――――」」」

【鞠】

「さて、音声は見つかったとして……映像はというと――」

 ササッと、アルスを操作する。

 そして――

【信長】

「……!? が!!」

 校舎側に設置された電灯を兼ねた、大きなイベントでしか使われないであろうビジュアルボードが暗幕を広げながら起動し――超巨大なスクリーンを形成する。

 そして――トドメの1発。

【笑星】

「ぁ……ぁぁぁぁあああああああ!?!?

 問題の瞬間が、映し出された。

 捉えていたカメラは一台ではなく複数台。そのうちの数台が、スプレーを持っていた学生2人を。いやそれだけじゃない、グラウンドや校舎周りをグルで歩き回っていた連中全員が、どこかしらの監視カメラによって顔を綺麗に撮影されていた。

【深幸】

全ッッ然!! 笑星じゃねえじゃん!! ていうかこれ、お前らじゃねえか!!?

【信長】

なんと……なんと卑劣な!! 恥を知るのはどちらだ!!

【四粹】

「……動かぬ証拠が、見事に揃っていますね」

 考えてすらなかった、形勢の逆転。

 それが現実化して、身体の動かし方を忘れたっぽい愚者たちに、もう抗う術などあるわけがない。

【学生】

「な……何で、何で監視カメラが――だって村田は――」

【鞠】

「……(←パシャリ)」

【学生】

!?

 シャッター音。

 1人ずつ。1人ずつ。此処に居る奴らの顔を、たまたま紫上会倉庫に残されていたオーバースペックなデジカメで以て撮影していく。

 この連中がやったことは、まあ私としてはどうでもいいのだけど、紫上会雑務に対し濡れ衣を着せて罵声を浴びせ続けた、教育を受けているとは思えない非道徳的な行為が罪に加算される。

 だから、顔を撮る。

【学生】

「や……やめ――」

【鞠】

「……(←パシャリ)」

 お前はもう逃げられない。この私に捕らえられた。お前の敗北し堕ち歪んだ顔は永劫、ギロチンのようにシャッター音の刹那、画像に切り取られ、紫上会の資料に保管されることだろう。

【鞠】

「……(←パシャリ)」

 パシャリ。パシャリ。パシャリ。

 パシャリ。パシャリ。パシャリ。

 無機質な音が響いていく。感情もなく、慈悲の必要なく、敵を切り堕とす音。

【学生】

「ひ――ひいぃいい……!!?」

【深幸】

「――逃げんな屑野郎。怖いかよ? テメエらはそれだけのことをやったんだ。甘んじて受けやがれ」

 パシャリ。パシャリ。パシャリ。

【学生】

「は、はな、離し――」

【信長】

「紫上会の一員として……笑星の先輩、そして友人として。俺は絶対に貴方たちを許さない。ひとり残らず、「責任」をもって、紫上会が処罰を検討します」

 パシャリ。パシャリ。パシャリ。

【学生】

「く、玖珂さん――玖珂さん、助け――」

【四粹】

「……六角元会長ならば、今回の事件をどう考えるでしょうか? 畏れつつも彼の隣で紫上会の在り方を見てきた手前は思います……たとえ現政権に不満があるからといって、この使われた手段は決して許せるものではないと」

 ――パシャリ。

【鞠】

「……他にも共犯の学生が居ますが、まあ映像の画質を考えたら9.9割がた特定できるでしょう。厳重注意という名の長時間説教は教師にでも任せるとして……」

 全員の顔を撮影し終えて……見回す。

 最初勝ち誇った顔で1年生の雑務を囲み罵詈していた連中に、もうそんな威勢は微塵も無かった。

【鞠】

「学園設備の毀損及び不当な方法で紫上会に攻撃を仕掛けるに飽き足らず、紫上会の面子に――というか1人の学生に甚大な心的ダメージを負わせた貴方がたには、少なくとも全恩恵の剥奪、可成りの可能性で停学、私のさじ加減によっては退学処分が待ってるので、まあ明日を楽しみにしておくように。以上」

 ただの敗者のままでいれば、そんなことにならずに済んだのに。

 敗者以下の存在になりさがった者たちに、最早私は人間を見ているという感覚すら抱かなかった。

砂川紙吹雪2

【学生】

「「「――――」」」

【鞠】

「ごきげんよう」

 まあ、私としては本当、良い機会が釣れたといったところだ。

 誓約書の時よりも、遙かに、良質な見せしめ。

 勝者のみちは絶対なのだと――

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