3.20「最初から」

あらすじ

「不幸が重なっただけだったんだ」笑星くん、雑務の鑑。そろそろいい加減まとめに入りたい3話20節。

砂川を読む

vsmari

Day

4/29

Time

15:30

Stage

紫上会室

【笑星】

「――ってことで、俺、漫画部の人達と仲良くなった!! 昨日は茅園先輩と一緒に部室にも遊びにいったんだー」

【鞠】

「…………」

 仲良くなることって成果のうちに入るのかな、とかの議論もまああるといえばあるけど、そんなことよりいつも喧しいチャラ男が今日は逆に沈んで真っ白になってるのが気になった。

【深幸】

「……………………」

【四粹】

「……手前たちが連日出張をしている間に、一体何が……」

【信長】

「俺もよく分かってないんです。というか深幸が教えてくれないんです」

【深幸】

「知らなくていい……知らなくていいことを知るのは、俺一人で充分だ……」

 何かよく分からないけど決死の覚悟みたいなものを感じた。犠牲者と呼ぶに相応しい顔をしている。ならば私もこれ以上気にしないことにした。

【笑星】

「へっへへ……この調子で、もっと皆に認められたいな! よし、今日も見回り、行ってきまーす!!」

【信長】

「……今日も何かやらかしそうだなぁ……俺も同行します」

【深幸】

「俺も、行くか……」

 ……一気に静かになった。

【四粹】

「……ちなみに、手前も笑星さんを通して漫画部に招待されています。男子の意見が欲しいと」

【鞠】

「…………」

 察知した。汀先輩アッチの部類の話だ。

【鞠】

「カップリングとかいうワードが出てきたら即刻脱出することをオススメします」

【四粹】

「は、はい……?」

 一体どうしてそんなことになったのかは分からないけど、それにしても私の嫌な予感は的中して、雑務が随分雑務なりの結果を出し始めているようだった。

 そうなれば、雑務は実力者として一般学生は認識せざるを得なくなる。

 既に先日の事件を通してクーデター組は完全瓦解しているのだろう、不穏な空気はもう感じなくなっている。一応盗聴器は数個持ち歩いているけど、多分カウンターの為に使う……ということはもう無いと思われる。

 今年度の紫上会は……雑務が弱くなくなれば、もう文句のつけどころが無くなるのだから。

【四粹】

「……会長は、どうお考えなのでしょうか?」

【鞠】

「何がですか」

【四粹】

「彼は――この学園の方々に、評価されているのでしょうか」

 ……いや、抑もだ。

 彼は――最初から強者だったろう?

【鞠】

「どうでもいい思考。どうでもいい質問です。くだらない」

【四粹】

「そうですね……手前も、そう思いました」

 そう、どうでもいいことだった。

vsnobunaga

Stage

紫上学園 外

【笑星】

「こんにちはー!! 見回り中ー!!」

【学生】

「んなもん、見てれば分かるっつーの……」

【学生】

「もっと静かにできねーのかよ、堊隹塚ぁー……折角昼寝しようと思ってたのによ」

【笑星】

「あ、ごめん! じゃあ……俺、子守歌唄おうか? 昔、姉ちゃんがよく唄ってくれたから、覚えてるんだ!」

【学生】

「いや、絶対お前の子守歌お前だしうるさい――って、ちょっと待て、お前の姉ちゃんってことは……あの先生か!? あの先生の子守歌!?」

【笑星】

「ん? 多分、その先生で合ってるけど?」

【学生】

「うわ……想像できねえ……優しさが足りない……」

     

【信長】

「……今日も、騒がしいなぁ。まだ暫くは、護衛が必要そうだ」

【深幸】

「なあ、信長。アイツさ……気付いて、ないよな?」

【信長】

「……だな」

     

【笑星】

「こんにちはー!! 見回り中! 困ったこととかあるー?」

【学生】

「実力試験が受けれなかったから滅茶苦茶困ってる。お前が紫上会になっちゃって大変困ってる」

【笑星】

「それはーー……邊見が許してるんだから許して?」

【学生】

「お前がそんな切り返ししてくるとは思わなかったわ……」

【笑星】

「ごめん、来年頑張ってとしか云えないよ俺は。でも、お前の代わりに今年度は、俺が全力で頑張るから! 俺が頼りなくても、先輩たち皆すっっごいから!! だからドシドシ、意見くれよ!!」

【学生】

「…………お前はお前で、結構すげえな……?」

【笑星】

「? そう?」

     

【深幸】

「多分、最初からアイツは皆から認められてたんだ。あんな性格だし、B等部の時から騒がしくて有名だったし、アイツが……本気で紫上会を目指してたっていうのは、周りも感じてたんじゃねえかなって」

【信長】

「不幸が重なっただけだったんだ。無論笑星や俺たちだけじゃなくて、多くの人が学園規模で切磋琢磨し合い……共に実力試験の場で闘うことを望んでいた。だが……集団感染なんてものが起きて……一瞬の間だけ、皆の心に陰りが差しただけだったんだ」

【深幸】

「あと芋女な。アイツがトリガーだったのは間違いねえよ。……ま、それも……過ぎちまったことだ。それをやっと皆感じ始めたんだろうよ。俺らからしたら迷惑な話だぜホント」

【信長】

「……皆の目を覚まさしたのはきっと――」

* * * * * *

【笑星】

「こんなことして、楽しいのかよぉ!!!」

【笑星】

「他人をこんなに傷付けて、それで紫上会に入って!!!」

【笑星】

「それでお前ら幸せなのかよ!! お前ら……笑えるのかよぉ!!?」

【笑星】

「――俺は絶対に、絶ッッッ対に、紫上会を辞めないからな!! こんなことするお前らに、絶対認めさせる!! 認めてもらう!!!」

【笑星】

「俺は、皆に恩返しするために!! 皆を笑顔にするために此処まで来た!!!」

【笑星】

「紫上会、雑務――堊隹塚笑星だぁあああ!!!」

* * * * * *

【信長】

「――他でもなく、お前の力だよ、笑星」

     

【笑星】

「歩く目安箱、堊隹塚笑星のお通りだーー!! さあさ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!」

【学生】

「ダサい!! そのうえ不適切!! 莫迦丸出しじゃねえか堊隹塚!!」

【笑星】

「えっ、どの辺が?」

【学生】

「寄るのはまあいいとしても見るもん無いだろ……何か売ってるのかお前は?」

【笑星】

「…………スマイルとか! 勿論0円!!」

【学生】

「俺、何でコイツに学力で負けたの……?」

【笑星】

「ごめんごめん、でも俺なりに頑張るから、何でも云ってな!! 実現できるかは会長の機嫌次第だけど!!」

【学生】

「じゃあ9割がた実現しねえよ!!」

【笑星】

「そんな時は、俺とか松井先輩がひっそり頑張るから! 今年の紫上会は、多分こんな感じで進みまーす!」

【学生】

「お前どうせ先見の明とか皆無なんだから勝手なこと云わない方が物議回避できるぞー……ったく、俺たちまで何か放っておけねえじゃねえか……」

【学生】

「堊隹塚ー、さっきグラウンド見てきたけど、倉庫の落書きいつ消すんだー?」

【笑星】

「うっわ、そっかまだ消してないのか!? よし、今日のメイン仕事が発生だ!!」

【学生】

「え……? でも、お前犯人じゃないんだろ結局? じゃあ別にお前がやんなくても」

【笑星】

「あの倉庫は学園の大切なものって、犯人の皆が云ってたからね!! じゃ、学園の皆で大切にしないと! ていうか俺もアレ見てるとちょっとイライラしてくるから、早く消したい!!」

【学生】

「……何て云うか、お前らしーなホント……」

【学生】

「ペンキ系の落書き落とすのって結構大変なんだぜ。どうせお前今、水でゴシゴシする、ぐらいのアイデアしかねーだろ」

【笑星】

「……それじゃ、無理?」

【学生】

「案の定頼りねえから、俺も手伝ってやるよ。暇だし」

【学生】

「んじゃ、取りあえず職員室に情報収集しに行くかー。何か良い溶剤とか持ってるかもしれねえし」

【笑星】

「マジか!! サンキュー!!」

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