2.07「眼が変わる」

あらすじ

「書記。もう来なくていいです。他の人にも、伝えればいいと思います」信長くん、変化を見ます。顔写真の差分なんかは作者の限界の関係上用意しておりません2話7節。

砂川を読む

vsnobunaga

Day

4/12

Time

8:30

Stage

1号館 2D

【秭按】

「ごきげんよう。それでは、HRを――砂川さんは、来ていないのね」

【信長】

「…………」

 いつもギリギリに登校してくる砂川さんだったが……。

 遂に今日は、HRの時間になっても……授業が始まっても、姿を現さなかった。

Time

13:30

Stage

紫上学園 外

 それは、たちまち拡がる。

 彼らにとっては、それが喜ばしいことだからだ。

【学生】

「おい、砂川登校してないんだってよ……昨日の不信任の嵐が効いたんだろうな」

【学生】

「よし……このままもっとやれば、追い出せるかもしれねえ……そうすれば会長不在、前例がなくたって新しい措置をしなきゃいけなくなるだろ」

【信長】

「…………」

 ……未だかつて、この学園でこれほどに歯がゆい思いに遭ったことがない。

 何て……酷い空気なんだ。

【信長】

「俺たちが、砂川さんを擁護したところで……肝心の砂川さんが主張しなければ。砂川が登校しなければ、話にならない」

 あれほどの存在否定を大勢から受ければ、登校拒否にだって繋がりうる。

 それこそ、村田たちの思惑通り……すなわち、クーデターにまで。

 紫上学園の骨が、砕けるほどの事件が……現実味を帯びている。

Time

15:15

Stage

7号館 学園長室

 ……それを、学園はどれだけ意識しているのだろう。

【信長】

「本来、これらも我々紫上会が中心となり解消に尽力するものですが……事態が事態です」

【宮坂】

「ふふ、そのようだね」

 直接、学園長を訪問した。

 そこで返ってきたリアクションに、俺は唖然とした。

【宮坂】

「……ん? どうしたのかな、松井くん」

【信長】

「……その、何と云うか。随分と余裕があるな、と。下手すれば、学園の未来が大きく変わるというのに」

【宮坂】

「そうだね。君の分析は間違っていないと思う。これは学力の素養を大切にし真剣に物事を学んでいくことを望む我々としては、由々しき事態だ」

【信長】

「な、ならば……!」

【宮坂】

「しかしね、松井くん。人の上に立つ者というのは常に余裕をもっていなければならない。苦しいときは、いっそ笑え。今の君には……それはあるかな?」

【信長】

「…………」

【宮坂】

「何も、紫上会は君だけじゃないだろう。そして君は……誰よりも理解している筈だ。君は勝者であるが、敗者なのだと」

【信長】

「――!」

【宮坂】

「云ったろう? 私はね……運命を感じていると」

 この人が、何を云っているのかはよく分からない。

【宮坂】

「だから、今のこの状況だって、運命の内」

 だが……誰を、信じているのかは分かる。

【宮坂】

「きっと、面白くて、大変なことが起こるよ。今よりも……ずっとね」

【信長】

「……その、根拠は」

【宮坂】

「それを探すのだって、君たちの活動の内だろう? しかし、そうだな……試しに、上に行ってみるといい」

【信長】

「え――?」

【宮坂】

「ただまあ、あの目を見る限り……君たちにとっては、あまり良い光景とは思えないかもしれないが」

Stage

紫上会室

【信長】

「…………」

 エレベーターから降り、認証を通って広い空間に出る。

 ……まさか、居るのか?

【信長】

「…………」

 歩く。

 歩く。

 回るように……何かに吸い寄せられるように。不自然な汗を一滴、頬を伝うのを感じながら……

 歩いて、止まって、仕切りのカーテンを静かにめくった先に――

【信長】

「え――?」

 ――光景を、見た。

【鞠】

「――――――――」

 女子を見つけるより先に、様々な物が目に入った。といっても全て同種で……

 資料の山――いや、置き方に整理が施されているから、寧ろ資料の柱。

 会議室に幾十の、資料の柱が立っており……それに囲まれて彼女は、居た。

【鞠】

「――――――――」

 会長の椅子には座らず、ソファに座り、テーブルに一資料を広げて……その周りに数台のアルスを展開している。どうやら資料を読んでいるようだが……ことあるごとに特定のアルスを操作している。メモのようなものかと最初は思った。だけど、それならグラフや文書を制作する必要はない。

 ……今、この女子が一体何をやっているのか、至近距離に居るというのに俺は全然分からなかった。ただ分かったのは、これらの資料は全て、一つ下のフロアに保管されている過去の紫上会の作成資料ということだけだった。

【信長】

「ぁ……あの……会長――」

【鞠】

「――……」

 この時俺はどうすればいいか分からなかった。声を掛けるべきか。去るべきか。どっちつかずのまま、勝手に声が漏れた……そんなところだ。

 それに、砂川さんは反応した。

 振り返った。

【信長】

――!!

 その時、俺は彼女の眼を見た。

【鞠】

「……えっと……確か……書記、ですか」

 よく、眼が変わった、なんて表現を見かけるが……そんなの分かるのだろうか、と俺は思っていた。

 ……分かるんだ、と知った。

 彼女は、変わっていた。顔も変わらない。髪型も変わらない。制服も変わらない。ただ、何だか眼が違った。それだけで俺は……震えるほど、感じた――

 昨日とは、別人だと。

【信長】

「は、はい。松井で――」

【鞠】

「書記。もう来なくていいです。他の人にも、伝えればいいと思います」

【信長】

「……え――?」

砂川着手

【鞠】

「紫上会とやらの仕事は……私が全部・・、やります」

 コレが――本当の彼女なのだと。

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