2.04「地獄の挨拶回り」

あらすじ

「そもそも、この紫上学園にあんな野蛮なところから来た奴が転入してきていることが、あってはならないことじゃないのか!!」砂川さん、挨拶回り地獄。1人の女の子にトラウマ植え付けるには充分な最早事件の2話4節。

砂川を読む

【笑星】

「んで、自己紹介は終わったけど、これから何やればいいんだろ」

 帰りましょうよ。

【四粹】

「発足時には例年、挨拶回りをしていますね」

 帰れなさそう。

【深幸】

「挨拶回り?」

【信長】

「これから俺たちは色んな学園内組織と密接に関わり合っていくことになるからな。そのご挨拶をしていこうという感じだ。メンバーはもう知れ渡っているだろうが、この顔ぶれなんだというのを視覚的に周知していくんだ。あと、部活とか学生の組織は漏れなく紫上会に従う決まりだから、その「誓約書」を作って渡してくれるよう頼んだりする」

【笑星】

「お、結構楽しそう」

 どこが?

【信長】

「……同時に、今年度の紫上会に対する学生の反応を肌で感じるという目的もあるが」

【深幸】

「なるほどな……(←睨)」

【鞠】

「…………」

 ろくでもない時間になりそうだった。

Stage

7号館 職員室

【先生】

玖珂くん――!! 本当、よろしく頼むよ……!!

【四粹】

「は、はい……皆様のお声に応えられるよう邁進いたします」

【先生】

松井!! この1年は、お前に懸かってるからな……!! しっかりな!!

【信長】

「ど、どうも」

 はい、ろくでもない時間確定ー。

 遠回しに今年度の会長信用できませんコメントが集まっていく。まあ揉めたって時点でこれは予想できるのだけど。

【深幸】

「ちっとは俺にも応援の言葉とかくれたらいいのによ――」

【秭按】

「砂川さん、その……心中複雑でしょうが、これも貴重な社会経験。応援しているわ」

【鞠】

「えー……」

【深幸】

うっそ!? コイツより応援されないの俺!?

【秭按】

「……貴方も、会長たちに迷惑をかけないように、しっかり指示を仰ぎなさいね」

【笑星】

「うっす! 分かってる!」

【秭按】

「頭ではわかっていても身体が動くのだから困るわ……」

 後々分かるのだが、これはまだ全然マシな方。つまり、こっから本番。

 まあ色んなことがあった気がするが……ありすぎていちいち覚えていないのでダイジェスト。

     

Stage

鉄研部室

   ~ 鉄道研究部 ~

【学生】

「え……あー、うん……分かりました……」

【学生】

「誓約書、コレでどうでしょう? 今受け取ってもらえるんですか?」

【信長】

「あー、有難いんだが、今日はまだ受け取れる段階まで作業が進んでないんだ。例の如く、紫上会から報告を出すから、そこに書いておく」

【学生】

「了解でーす」

 職員たちから信頼されてる2人の人望というやつで、何とか穏便なまま終わり、誓約書の話題も滞りなく終わる。

 これだけ見ると良好に感じるだろうけど、此処にはちゃんと会長たる私も立っている。だけど全然介さず全部が終わる。これは私がコミュニケーションに消極的とかいう問題じゃない。

 単刀直入な表現でいくならば。

 私は避けられている。もっとズバッといくならば――

     

Stage

体育館

   ~ バスケ部 ~

【学生】

「誓約書は……書かない」

 ――私は拒まれている。

【信長】

「……はい?」

【学生】

「誓約書は書かないって云ったんだ。いや……書けるわけがない、と云うべきだ」

【笑星】

「え、何で!? どうしてさ!」

【学生】

「どうして!? どの口がソレを云ってる!!?」

【笑星】

「?????」

【学生】

「信用できるのは松井と玖珂先輩のみ!! そんな状態で六角会長の意思を継いでいけるわけがないだろ!!」

【深幸】

「え、いやいやいや待てよ!? そんなこと云われても仕方ねえだろ!? 百歩譲って会長コイツの不満ぐらいだろ!!」

【学生】

「兎に角、男子バスケ部は誓約書を渡さない!! これは俺たちの意思だ!!」

     

Stage

空き教室

  ~ 軽音楽部 ~

【学生】

「俺たち、今回の紫上会信用してねえんだよね」

【笑星】

「んー……つまり?」

【学生】

「誓約書は作んない」

【深幸】

「またかよ!」

【学生】

「自由奇天烈がウリの俺たちの、いわばスポンサーってことになるよな紫上会は? その会長が、なぁ……全然イケてねえ!!」

【学生】

「おかしいだろ、紫上会のメンバー考え直せよ! って学園に伝えろよ。これ絶対、軽音だけじゃないからな、学生側の大多数の意見だから」

【学生】

「それとも、何か文句反論あんのかよ、会長さんよ」

     

Stage

文芸部室

   ~ 文芸部 ~

【学生】

「政治家というのは人々の代表として、人々の想いを代行していく存在の筈です。ならば、その立場に置かれる人は、人々から認められなければいけません」

【学生】

「確かに紫上学園は学力を尊重している……それ故に実力試験が設けられ、学力による恩恵が数多く設けられ実際多くの学生がコレに助けられてきた、それは事実です。ですが、ただ学力一つのみで、人々の上に立つ者とするのは間違っていると云わざるを得ない!!」

【四粹】

「で、ですが……」

【学生】

「前例が無いから、覆せない? なら、今作ればいいじゃないですか!! どうして玖珂さんの特別措置を検討する努力はするのに、新しい歴史を作ることを紫上会は、紫上学園はしないのですか!!」

【深幸】

「……いや、そんな不満だからってコロコロ変えていいのが定着したら本末転倒だろうが……」

【信長】

「紫上会は非常に責任の大きい仕事場です。故に、その座に着くのには凄まじい倍率を争う。確かに不満を集めるような例外はあるかもしれない、だがこの制度が生み出してきた幾つもの紫上会は皆輝かしかった! エスカレート生なら、俺の云っていることが分かる筈です!!」

【学生】

「その輝きの歴史を、台無しにしかねない非常に大きな例外があるから、無思考でいては危険だと云っているのです!!」

【笑星】

「……無思考ではないでしょ。だから邊見の代わりに玖珂先輩が就いたんだから」

【学生】

「運だけの奴は黙ってろ!!!」

【笑星】

「運だけの奴!?」

【鞠】

「……?」

【信長】

「紫上会への無意味な暴言は控えてもらいましょうか!!」

【四粹】

「これは……誓約書を貰える雰囲気では全くありませんね」

     

Stage

新聞部室

   ~ 新聞部 ~

【四粹】

「…………」

【信長】

「…………」

【笑星】

「うっわー……」

【深幸】

「……「今年度紫上会への反発集う 8割超」……お前なんつー新聞作ってんだよ……」

【冴華】

「ちなみにもう配ってます」

【深幸】

掲示するんじゃなくてばらまいてんのかよ!! 相変わらずやることが汚え!!

【信長】

「どういうつもりだ、村田……!!」

【四粹】

「そんな集計を、一体いつ……」

【深幸】

「どうせそんな調査してないんすよ! 間違いなく、俺たちへの嫌がらせ!!」

【冴華】

「人聞きの悪いですね。私はただ、事実を連ねただけです。そしてマスコミュニケーション組織というのはただ人々に事実を伝えるのみの質素でつまらない集団ではありません。持っている情報を駆使して、人々を突き動かし、世界の情勢を自分たちの思想のもと操り導く政治の場なのですよ」

【深幸】

ぜっっっっっったい違うだろ!!??

【信長】

「……どこもかしこも、誓約書を書かないなんていう思い切った反発をしてきたから不思議に思ってたが、お前たちが扇動したのか……!」

【学生】

「ぶっちぎって過激なのは村田だけだが、紫上会への不信という点では同じだ」

【学生】

「へっへ……上手くいけば、実力試験じゃない形で選抜し直されたりしてな……そんな大事件に立ち会えるとあれば……」

【笑星】

「すっげー陰謀渦巻いてるー!! いきなり紫上会荒らすのやめてくれよー……」

【学生】

「おいおい……お前がそれ云うのかよ? 早速、いい身分だな! 本来お前は、紫上会に入れるわけのなかった奴だろうが!」

【笑星】

「ッ……」

【鞠】

「…………」

【冴華】

「……野蛮人が……絶対、こんなこと許しませんからね……本当の強者は――私、なのですから……!」

     

Stage

グラウンド

   ~ 野球部 ~

【信長】

「――何故ですか!? 児玉キャプテン、俺はそんな話、全く聞いていません!!」

【児玉】

「お前は絶対反対すると分かっていたからな。ややこしくなる。だから云わなかった。お前は勿論俺たちの大事な仲間だ……だが、それでも、紫上学園の誉れと評価されてきたこの野球部は、絶対落ちぶれてはいけない!!」

【学生】

「な、松井頼むよ、紫上会からの提案だったら学園は絶対無視できないだろ? ていうか、松井はずっと、会長になりたかったんだろ? だったら、まだチャンスは――」

【信長】

「――会長はここにいる、砂川さんです!! これは玖珂先輩の再登用という例外措置を経た、決定事項なんです!! どの年度だって最初は殆ど信頼の無い状態から始まります!! 一体どこに、不公平があるというのですか!!」

【学生】

「……不公平なら、無くもなかったとは思うけどな。主に……1年とか色々」

【笑星】

「…………」

【児玉】

「そもそも、この紫上学園にあんな野蛮なところから来た奴が転入してきていることが、あってはならないことじゃないのか!! いや、そのままじっと過ごして学園に危害を加えないならまだいい……だが、こうして最も学園に影響を与える存在になっているじゃないか!! 」

【信長】

「どうして、あってはならないことなのですか!? 今噂になっている真理学園は、被害者の立場にあるでしょう!! 一体どういう流れで彼女が此処へ転入してきたのかは俺も知りません、ですが彼女は何も我々に危害を加える行為を全くしていないし、何より今は紫上学園生です! ならば紫上学園らしく、ずば抜けた学力を証明した強者を、評価すべきです!!」

【児玉】

「ならばどうして、カンニング疑惑が湧いている!!」

【信長】

「な……何ですか、それは……」

【鞠】

「……はぁ……」

【深幸】

「ッ……村田か……」

【児玉】

「無論嫌いでは無かったが……ッあんな恐ろしいところから転入を許すなど、六角は一体何を考えていたんだ!! 莫迦じゃないのか!! 松井、玖珂、この件についてはお前たちもだぞ!!」

【四粹】

「……恐れながら事実を申し上げますが、昨年度紫上会は1件とて転入処理をしていません」

【学生】

「……は? じゃあ、何でコイツが入ってきてんだよ!? 転入転校の処理作業だって紫上会がやってるんだろ?!」

【四粹】

「その通りです。が……事実、昨年度の転校生も転入生も居ませんでした。そして、新年度に合わせた転校転入も同様と……我々は認識していたのです」

【深幸】

「つまり……学園おとな側で何かやり取りがあったってことか」

【学生】

「おいおいおいおい……!! 学園すらもう信じられねえってんのかよ!! このこと、説明要求した方がいいだろ絶対よぉ!!」

【深幸】

「んなことしたらもっと村田の願い通りだろうがクソッ……」

【信長】

「ッ……転入生を一人受け入れることに、そこまで敏感になることはないでしょう……!?」

【学生】

「その転入生が今カンニング疑惑浮上したまま会長になってるから大事なんだろうが!!」

【学生】

「下手したら、学園側の誰かがあの学園と繋がってて、それで送り込んできた奴が会長になって、俺たちの学園をどんどん好きな色に塗り替えるって計画かもしれねえだろ!!」

【学生】

「不正の検挙は基本、職員が担当してるからな。買収されてるって考えれば、カンニングだって簡単にできるだろうよ。ていうか点数とか嘘つけばいいしな!」

【信長】

「……な……そん…な……」

【児玉】

「……松井、紫上学園の王座に就くべきは、紫上学園生だ!! そしてそれは……お前なんだ、松井!!」

【学生】

「怖じ気づくことねえよ松井! 大丈夫、俺たちがついてる! だから、紫上学園らしい紫上会を、作ろうぜ……!! 皆、それを本当望んでるんだからさ!!」

【深幸】

「……なんじゃこの空気……マジでクーデター起きそうなんだけど……」

【笑星】

「せ、先輩どうしよ――あれ? 先輩は?」

【四粹】

「え……?」

【深幸】

「あっれ、芋女いない!? いつの間に!?」

【学生】

「帰ったんじゃねえのか? 俺たちに化けの皮剥がされそうだから怖くなったんじゃねーの」

【学生】

「真理学園なっさけねえな、あんな最低な奴が会長なくらいなら俺転校するし」

【学生】

「転校とか何でしなきゃいけねーんだよ……絶対、アッチが出てってもらう」

【信長】

「こんな……こんな、ことが――」

【深幸】

「……俺もビックリするほど、アウェイだなアイツ……」

【笑星】

「……先輩……」

【四粹】

「…………」

     

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