1.07「地獄の音」

あらすじ

「なあ、砂川! 真理学園のこと、教えろよ!」砂川さん、集中攻撃に遭います。今時こんなヤバい空気あるのかというと、案外あります。それだけ自覚が難しいんですが是非とも気を付けたい1話7節。

砂川を読む

Day

4/3

Time

8:15

Stage

紫上学園 正門

【男子】

「おい……アレじゃね? 真理学園の奴って――」

【男子】

「何か、思ってたのと違うな……大人しそうだけど」

【男子】

「でも、あれだろ……? 彼処の女って、強姦――」

【鞠】

「…………」

Stage

1号館 玄関

【女子】

「アレよね? 真理学園から来た女子……」

【女子】

「根暗そう……でも、ヤられたんだよね?」

【女子】

「ちょ、ウチに訊かないでよそんな最低なこと!」

【鞠】

「…………」

Stage

1号館 階段

【女子】

「ヤバっ真理学園の……」

【男子】

「目合わせないようにしよーぜ……死にたくねーし」

【女子】

「ほんと、花粉とかついてないよね……もうヤダ、何でいんのよー……」

【鞠】

「…………」

Stage

1号館 2D教室

【男子】

「なあ、砂川! 真理学園のこと、教えろよ!」

【男子】

「クマが出るの基本って本当か!? 写真見たことあるけど、彼処って学園というか森だよな! 過ごしにくいっていうか危なくね?」

【女子】

「電気とか通ってたのー?」

【女子】

「ニュースで見たんだけど、すっごい治安悪いしそもそも町政がなってないって本当? どんな感じだったの?」

【女子】

「私が見たニュースでは、評論家の人、抑も彼処は鎖国国家だとか云ってたけど」

【男子】

「いやいや、毘華大陸じゃないんだし国家なんてシステムないから大輪は。比喩的なもんじゃねえの?」

【女子】

「でも、開かれた場所、だったとしても……それはそれで、ねえ……怖いというか」

【男子】

「ひそひそ(ていうか、何でアイツらあんな近付けんの? 正直、怖くね? 大輪でめちゃくちゃ死人出したんだろ? 後遺症もあるって噂なのに……もしアイツにあったらどうすんだよ……!)」

【男子】

「ひそひそ(どう見ても経験無い顔だけどなぁ。普通襲おうとする奴なんて居るのかねぇ)」

【男子】

「ひそひそ(いや、普通じゃないから優海町は毎度毎度……)」

【女子】

「ひそひそ(色気、全然無いんだけど……他の毘華国家とかさ、顔凄かったよね? 全力で蕩けてるっていうか……艶めかしさとか、全然感じないんだけどアイツ)」

【女子】

「ひそひそ(アレじゃない? 更生手術とか何とか聞いたことあるし、更生して、別の町に逃げた子、なんじゃない?)」

【女子】

「ひそひそ(はぁ、なるほど更生ねー……まぁ私なら絶対、そんな怖い町、嫌気差してすぐ逃げるわねー)」

【女子】

「ひそひそ(私もー……ていうか、ぶっちゃけ事後の時点で自殺したいかも)」

【安倍】

「…………」

【鞠】

「…………」

Time

12:30

【秭按】

「本日のスケジュールは以上です。当然皆さんは分かっているでしょうが、全学年統一実力試験は今週の土曜日に控えています。最後まで、気力を尽くして勉強に励むように。……それでは、ごきげんよう」

【鞠】

「…………」

【信長】

「砂川さん、ちょっと待ってくれるか」

 …………帰りたい。

【信長】

「……その、悪かった」

【鞠】

「…………」

【信長】

「今日一日、大変だったろ。元はと云えば、アイツの……紫上会の失態が招いたこと、だからな……」

【鞠】

「……大…変、だった……?」

 何を云っているんだろう、この人は。

 大変――そんな、2文字で片付けられるわけがないほど、色んなモノを聞いたというのに。

【信長】

「俺自身、真理学園の話題は、気にならないといえば嘘になるが……まさかこんなに、学園全体に反響があるとは、予測できなかった……紫上会は来週にも世代交代するが、引き継いででもこの問題は紫上会で――」

【???】

「――本当、ぬるくてつまらないですね、松井は」

 ……誰か、入ってきた。

 お腹が……腸のどこかが、ピリッと震え痺れたような感覚。

 地獄が来たと、予感する。

【冴華】

「やることなすこと、普通過ぎて。貴方が会長になってしまったら、私の生活まで味気なくなってしまうこと間違いない」

【信長】

「ッ……村田、何しに来た」

【冴華】

「特に大した用事は。ただ、ちょっと……気になったので」

 村田とかいう女子が、俯いた私の顔を、わざわざ下から覗いて――

【冴華】

「野蛮なところから来た、可哀想な女の子が、どんな顔をしてるかなぁー、と」

 ――用事を云った。

【信長】

「村田!! 不謹慎が過ぎるぞ、いい加減にしろ! コレは、断じて許されるべきことじゃない!」

【冴華】

「はぁ? 貴方は学力があるのに、理解が悪くないですか? この紫上学園では、一番学力のある人間が、正義でしょうに」

【信長】

「……だからお前のやることは、悪いことじゃない、と? 紫上学園はお前を認めると? それは聞き飽きたし……何度聞いても納得できない。お前のソレは、誰も得をしていない」

【冴華】

「そんなわけがないでしょう? まず、私自身が潤っています。可哀想な人を弄る楽しみ……確かにごく一般と比べて私のやり方は少々露骨ですが、私自身がそれを認め、そして努力している、だから文句を云われても強者として立っている私には痒みすらない」

 可哀想な人。

 それは、もしかしなくても私のことだろう。

 ……私のことだけ、なのだろうか。

【冴華】

「そして、松井も気付いていた通り、今日は話題に退屈しなかった。皆、私と同じように、楽しんでいた筈ですよ? 当然ですよね、こんなに美味しそうなモノが、突然学園に入り込んできたんですから。まあ、怖がってる人も居たようですが……怖~い優海町から、お願いしてもないのに来ちゃった……例えるなら、死神?」

【信長】

「村田ァ!!」

【冴華】

「死神に、誰も近付きたくないですものね。私も正直、近付きたくないとも思ってます、楽しい獲物にはなりますけど、もう充分楽しんで、恐らくピークも越えましたし。だから、もう来なくて結構ですよ? 野蛮で道徳の壊れた、イカれた学園の産物など、紫上に居てほしいとは思いません。当然でしょう?」

【鞠】

「……………………」

【冴華】

「転校の手続きは、いつでも受け付けますよ。とはいっても私も勉強しなければいけないので、来週以降且つできるだけ早く、を望みますが。松井も汚らしい女子をナンパしていないで、家に帰り勉強しなさいな。今週は部活も無いのでしょうから」

 ……女子が、帰って……いくと思ったら、振り返った。

【冴華】

「そうそう……真理学園はまともに勉強もできないしかいないって聞きました」

【鞠】

「――!!」

【冴華】

「貴方のテスト結果で、まだ遊べますね」

 ……今度こそ、去って行った。

【信長】

「何であんなことを平然と云えるんだ……精神を疑う……」

【鞠】

「…………」

【信長】

「ッ――砂川さん! 待っ――」

 ……いい加減、帰る。

 もう誰とも、話したくない。

 何も聞きたくない。誰も見たくない。

 こんな学園じゃなくて――

【鞠】

「――先輩――」

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