1.04「点呼」

あらすじ

「本日はクラス顔合わせ程度のHRのみとなります」砂川さん、自分の教室でクラスメイトとご対面。担任誰なのかは今後1年を大きく左右しますよね、私は大変恵まれました1話4節。

砂川を読む

Time

13:00

Stage

1号館 2D教室

【秭按】

「……24人、全員揃ってるわね。始業式お疲れ様でした。本日はクラス顔合わせ程度のHRのみとなります」

 ……じゃあ要らなかったんじゃ、と思うけど明日私が困るから、有難く思っておくべきだろうか。

【鞠】

「(教室の匂いが、全然違う……)」

 花弁をイメージした校舎の割には、木目の要素が全然見当たらない。全部鉄なのだろうか。そういうのに拘りを持つタイプじゃないから別にいいんだけど、やっぱり全然今まで過ごしてきた学園環境と違うようで、落ち着かない。

【秭按】

「まずは、初めまして。私は今年度から就任……正確には復帰とでも表現すべきだけれど、堊隹塚あとりづか秭按しあんです。教科は数学を担当します。無論、君たちの面倒も見ることになっていますからよろしく」

 ……クールを越えてコールドな雰囲気が怖いなー、と思った。

【女子】

「きれー……」

【女子】

「かっこいー……!」

【男子】

「美人だ」

【男子】

「ああ、美人だ」

 ……が、周りの印象はそれほど悪くないらしい。

【秭按】

「では、点呼を取ります。朝田くん」

【男子】

「はい」

【秭按】

「浅原くん」

【男子】

「はい~」

【秭按】

「足立さん」

【女子】

「はい!」

【秭按】

「安倍さん」

【女子】

「はいっす」

【秭按】

「阿部くん」

【男子】

「うっす」

【秭按】

「阿部くん」

【男子】

「……俺、かな? はい」

【秭按】

「阿部くん」

【男子】

「はい……合ってるのかな」

【秭按】

「阿部さん」

【女子】

「は、はい! ……よかった~呼ばれないかと思ったぁ~……」

【秭按】

「蟻塚くん」

【男子】

「はーい、先生と一文字違い」

【秭按】

「蟻塚さん」

【女子】

「はーい、一文字違いっていうか一文字足りないっていうか」

【秭按】

「阿波栗さん」

【女子】

「はい」

【鞠】

「……………………」

 アが終わらない。

【秭按】

「砂川さん」

 18人目くらいで私がやっと呼ばれた。

【鞠】

「…はい…」

【秭按】

「…………」

 ――?

 今……何かジッと見詰められた気が……気のせいだよね、気のせいに違いない、私何も失敗してない筈だし普通に返事できたし。

【秭按】

「松井くん」

【バンダナ男子】

「はい」

【男子】

「このクラスはマ行で終わりかぁ。随分極端なクラス編成になったもんだなぁ」

【男子】

「信長ー、今年度もよろしくなー!」

【女子】

「私もよろしく松井くんー」

【信長】

「そういう言葉は休み時間に掛けてくれ」

【秭按】

「その通りですね。元気なのは素晴らしいことですが、公私を分けることのできる人間になるようお願いします。尤も、由緒ある紫上学園にて学ぶ君たちに対しては不要な心配でしょうけど」

 あー……ダメだこの人、プレッシャー掛けてくるタイプの人だ。私絶対好きになれない人だ……。

【秭按】

「それに、副会長がいるクラスですから、なおさら教師わたしの出る幕は無いでしょう」

【信長】

「はは……ご期待に添えるよう努力します。副会長では、もうじきなくなりますが」

【男子】

「これからは会長だもんなー」

【信長】

「HRが長引くから応援は後でよろしく」

 ……それにしても、皆は不思議なことに楽しそうだ。私は担任の先生が苦手そうでナイーヴになっているというのに……あれ、まさか本当に私だけ?

 ……まあ、だからといってテンションを上げようとするモチベーションは全く無いのだけれど――

【秭按】

「…………」

【鞠】

「っ……!?」

 ――ってまた見られてる!? うわ気のせいじゃない、めっちゃくちゃ私を見てる……! 何で!?

【秭按】

「それでは、HRを終わります。本日のスケジュールは以上です。明日は8時半には登校を済ませこの教室にて待機していること。それでは、ごきげんよう」

 って、特に何かするわけでもなく颯爽と教室を出て行かれた……何で……。

【鞠】

「……何か、急に、疲れた……」

【信長】

「…………」

 ……帰ろ……。

【???】

「――失礼するわ!」

【鞠】

「――!?」

 先生の出て行った前の扉から出ようと思ったら、突然女子が走って現れた。

 普通にビビる。

【高飛車】

「……? ちょっと、退いてくれます? 私が教室に入れませんので」

【鞠】

「す、すみま――」

 取りあえずの謝りが完了するよりも前に、女子が私を軽く押して無理矢理教室に入った。

 ……担任よりも苦手かもしれないので早々に帰ろ――

【高飛車】

「――! 待ちなさいそこの貴方!」

 帰らせてくれない。最悪。退けって云った癖に。

【鞠】

「……え……?」

【高飛車】

「……見ない顔……つまり、そういうこと、でしょうね。一体どんなお顔なのか、気になっていましたが……」

【鞠】

「な……何……?」

【高飛車】

「とんだ期待外れですね!! というか期待もしてませんでしたけど!!」

【鞠】

「!?!?」

 取りあえず罵倒された。ほんと帰らせて。

【信長】

「村田、失礼なのはどう見てもお前だ。何いきなり因縁づけてるんだ」

【高飛車】

「はぁ? 何云ってるんですか松井。この村田冴華が、こんな野蛮・・な女とわざわざ関係を作るわけがないでしょう」

【信長】

「更に失礼だぞ村田!」

【鞠】

「……」

 帰るゥ!!

【冴華】

「あら?」

【信長】

「……傷付いたんじゃないか? お前も紫上会の一員なら、謝っておけよ」

【冴華】

「何故野蛮種にこの私が謝るのですか? 寧ろ、あちらに謝ってほしいくらいだというのに。この紫上学園に臭かろう足を着けるなど……今年度も紫上会入りして、あわよくば会長となり、その権力であのような“危険”な輩、排斥してしまいましょうか」

【信長】

「紫上会は権力を振りかざす為にあるんじゃない。間違っても、俺はお前には負けないからな、村田」

【冴華】

「ふっ、前年度は惜しくも及びませんでしたが、今年は私が勝ちます。貴方は……どうせ入ってくるんでしょうが、せいぜい書記でもしていてください」

【男子】

「さっすが、相変わらず自信満々だよなー村田はー……いや実際実力者だけども」

【女子】

「そういえば……さっきの女の子、私知らないなぁ。確か……あれ、苗字なんだっけ?」

【女子】

「えっと……あれ、ダメだ、苗字どころか顔すら思い出せない……」

【冴華】

「おや、クラスメイトだというのに酷い方々ですねー。仕方ありません、この私が教えてさし上げましょう」

【男子】

「え……いや、別にいいし……」

【女子】

「ちょっと気になりはしたけど、正直そこまで関心は無いというか……あと村田の性悪テンションに付き合いたくないというか」

【冴華】

「彼女はですねー!(←無視)」

 ……………………。

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