1.18「勝ち取ったもの」

あらすじ

「……明日、お前8時に登校してこい。正門で合流だ。いいな?」砂川さん、チャラ男に襲われます。挿絵は余力があったらってことでどうか宜しくお願いしますな1話18節。

砂川を読む

Time

15:15

Stage

紫上学園 外

【鞠】

「…………」

 案の定5限も私は注目されてしまった。

 何で1日に5回も自己紹介しなきゃいけないんだ。

【鞠】

「帰ろ」

 ただ疲れに来ただけみたいな1日は無事終わったので、アルスを取り出しメイドにコールする。

【汐】

「― もしもし、お姉ちゃんで~す ―」

【鞠】

「間違えました」

【汐】

「― 待ってごめん、出来心だったんです、たまにはフランクな通話に洒落込んでみたいなって思っただけなんです切らないで!! ―」

 いつもフランクに仕掛けてくる癖に何を云ってるんだこのメイドは。

【汐】

「― お車ですね。丁度白井坂での用事が片付いたところなので、そのまま霧草に直行いたします。いつもの場所でいいですね? ―」

 どうせプライベートなショッピングだろう、と思いながら通話を切――

【深幸】

何やってくれてんだテメエはあぁああああああああ――!!??」

 ――ろうと思ったらいつの間にか接近していたチャラ男に胸ぐらを掴まれ眼前で叫ばれる。

 これ、本日2回目。ここにきて今日は無事に終わってくれなさそうだった。

【汐】

「― え……!? 今の声なんですか鞠!? 男の声でしたよね!? 男ですか!? 転入早々痴情のもつれですか鞠!? お姉ちゃんは絶対、赦しませんよ!! 百歩譲ってそういうのはまずお姉ちゃんに話を通すのが筋―― ―」

 取りあえず五月蠅いので通話を切った。さて、目の前の問題だ。

【鞠】

「また不正疑惑ですか」

【深幸】

「……そっちじゃねえ! まあ確かにその疑いもあるが! 実力試験の不正検挙力は村田が滅茶苦茶力を注いでたし、実際凄えからお前は不正してねえ……俺はそう結論付けてる」

 はあ。

 ……なら、何でこんなことされてるの私。

【深幸】

「だがな!! お前、自分が何やったのか分かってんのか!!?」

 五月蠅い。距離感をちゃんと考えて声を出してほしい。というかそれ以前にこの距離を何とかしてほしい。

【鞠】

「テストで点を取った。それだけ」

 あの女を黙らせた事実。紫上学園において、最大の武器。それは、実力試験に力を注いできた者なら、誰もが理解をしている筈。

 確か、この人もあの女に対抗意識を燃やしていたところからみると、試験には真面目に挑んだ側の人だろう。人は見かけによらないというか。

 ――なのに。

【深幸】

「……何だ……その、回答は……」

 この人は黙らない。

【深幸】

「巫山戯てんのか……!! あの試験に、どんだけの学生が心血注いで! どんだけの学生がこの1年を期待して!! なのに……お前は、お前は――!!」

 この人が何を云っているのか、分からない。

 しかも厄介なことに、あの女とは違って、この人は会話を成立させる気で私に接触してきている。少なくとも一定の論理のもと、叫んでいるようなのだ。

 だけど、私が試験で点を取ったことに……どうして彼は、ここまで憤っている?

【鞠】

「……………………」

【深幸】

「――待て……もしかして……コイツ――」

 熱のある眼で私をずっと睨み付けていたが、突然、それが変わる。熱が散漫したような感じ……同時に、襟を掴んでいた手の握力が緩んだので、すぐさま手を払う。

 軽く宙に浮きかけてた身体が解放される……が、少し安心したところで手に持ってたアルスがバイブを鳴らしているのに気付いた。

【鞠】

「…………」

 「着信履歴:8件」

 ……メイドが凄い速度で運転しながら片手で通話仕掛けてきてる様子が想像できた。事故る。

【深幸】

「……おい、芋女……お前、そもそも「実力試験」が何なのか、知ってんのか……?」

【鞠】

「……は?」

 何をいきなり。

【深幸】

「質問に答えろ。じゃなきゃ帰さねえ」

 コイツそろそろ教職員に暴力で通報してやろうか。でもそれも何だか面倒だし、本当に帰りたいので答えておく。

【鞠】

「奨学金とか、進学とか就職とか……そういうのを判断するためのテスト」

【深幸】

「…………それだけか?」

【鞠】

「あとは、あの人を地獄に堕とす手段」

 まあそれは私専用の用途だけど。

 ……その簡潔な答えを聞いたチャラ男は……何故か、頭を抱えた。

【深幸】

「そうか……そういう、ことか……確かに、こんな事態想定できなきゃ知らされてなくても無理もねえ……ッ。ああくそ、ちゃんと説明しとけよな職員……!!」

 そして何か荒れ始めた。もうヤダ、流石にめっさ注目されてるから無理矢理にでも帰ろうかな。走ろうかな。

 と、思っていたところでまた落ち着いて……

【深幸】

「……明日、お前8時に登校してこい。正門で合流だ。いいな?」

【鞠】

「は? 何をいきなり――」

【深幸】

「嫌でも分かるからよ……お前がやらかしたことが」

 チャラ男は、頭を搔きながら何だか疲れた様子で去って行った。

 ……また着信入った。取りあえず……アルスを操作する。

【汐】

「― 鞠ーーーーー!!! お姉ちゃんが……お姉ちゃんが今行きますからねえぇええええええ!!(ドリフト音) ―」

【鞠】

「…………」

 私がやらかしたこと――?

 それは、一体……。

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